05


「え、犯人が村上丈か分からない?」

次の日ポアロに行き、カフェオレを飲もうとしたら、安室さんはハムサンドを持って事務所に行こうとしていた。その後をついていく。毛利先生は昨日の張り込みからまだ帰ってきていないようだったので、蘭ちゃんたちと一緒にサンドイッチを頬張る。紅茶を入れながら、蘭ちゃんはキョトンと安室さんを見た。

「えぇ。彼を犯人にするなら少々不可解なことが出てくるんです」
「不可解なこと?」
「例えば何故わざわざ自分が犯人だという痕跡を残したのか……。まぁそこには毛利先生への挑発なども考えられますが、復讐のためだけならそのような痕跡を残す必要はあるのでしょうか」
「確かに……」
「それにその村上って人、服役してたんだよね? どうやっておじさんの知り合いを調べ上げたんだろう…」
「あぁ、それもだね。友人関係だけでなくチョコレートの銘柄まで調べてるとなると、そんな簡単には行かないだろうしね…」
「村上以外に特に容疑者がいないのも事実だけどね…」

コナンくんと安室さんがうーんと考え込む。安室さんは置いといて、相変わらずコナンくんは頭がいいなぁ。感心して「さすがコナンくんだね!」と言うといきなりうろたえ出す。「えっ、でも僕、子どもだからわかんなーい!」え、逆にどうしたの?

「フッ……。君は相変わらずすごい知識を持っているんだね」

そんなコナンくんを見て、安室さんも笑った。安室さんから褒められるなんて! すごいよコナンくん! 素直に伝えると、コナンくんも安室さんも苦い顔でハハハ……と笑った。

「でも十和子さんは狙われなかったらしいわ…」

ふと蘭ちゃんがそう言う。そうだったんだ。よかった、と安心した。毛利先生や刑事さんたちの張り込みのお陰なのかな。怪我人は、出さないのが一番だ。「本当に10は彼女だったのでしょうか」けれど安室さんの表情は硬いままだ。

「? 違うの?」
「いや……それは分からないが」
「!!!そうか!」
「?!」

事務所内をうろちょろしていたコナンくんがいきなりそう叫び、探偵事務所を飛び出してしまった。蘭ちゃんが慌てて追いかけていく。いきなりどうしたの……?! コナンくんが先ほどまでいた場所には一枚の写真が飾られてあった。グラブを持っているから、プロのゴルファーさんかな? それを見た安室さんは何かに気がついたらしく「なるほどな……」と呟いた。けれど彼らを追いかけることはなく、「名前、帰ろうか」そう言ってお皿を持ち、事務所を後にする。

「え? 安室さん、何か分かったんだよね? わたしたちは行かなくていいの?」

その背中に問いかける。安室さんの口元は少しだけ笑みを浮かべている。

「大丈夫さ。後で毛利先生には連絡をしておくから。それに彼がいるならきっと平気だよ」

彼? 毛利先生のこと?
頭に疑問符を浮かべながらも、ポアロへと帰っていく安室さんの後を追いかけるのだった。





「不時着……?!」

そしてその日の夜。蘭ちゃんから連絡が来ていた。どうやら毛利先生の知り合いでプロゴルファー……昼間写真で見た男の人がまた狙われたらしい。彼は名字が「辻」というらしく、その中に「十」が入っていることにコナンくんが気がついたらしい。なるほど、いきなり飛び出したのはそんな理由が合ったんだ……。そうしてコナンくんたちが止めに入ったらしいけれど辻さんはフライトを辞めず先生たちを乗せて飛んだらしい。そして目に異常を訴え、帝丹小学校の校庭にヘリコプターを不時着させた……。さすがに驚いて開いた口が塞がらなかった。

「でも何で目が変になったの?」
『どうやら目薬がすり替えられていたらしくて……瞳孔が開きっぱなしになってしまったらしいです』
「そんな……」

明らかに殺意を持った犯行、それも一歩間違えたら大惨事は免れなかっただろう。恐ろしい犯行だ。犯人……村上さんの動機は何なんだろう? 本当に毛利先生への復讐なの?

「てなると次狙われるのは九がつく人…?」
『それなんですけれど、どうやら今度オープンされる海上レストランのオーナーの名前に九が入っているらしくて……』

蘭ちゃんによるとそこには「八」がつく人も行くらしい。なるほど、それは怪しい。「蘭ちゃんも行くの?」と聞くと、『父も行くらしいので…』と沈んだ声で言った。まだどうしても先生をよく思っていないらしい。難しいよね。でも安室さんは分かるって言ってたなぁ……。あれはどういうことを指しているんだろう。悶々と考えていると、『あ、そういえば』蘭ちゃんが思いついたように言う。

『安室さんもついて行くって言ってましたよ?』
「え……?」

『え? 名前さん聞いてないんですか?』と不思議そうに蘭ちゃんが言う。な、何だと……! 安室さん、わたしに黙ってついて行こうとしていたんだ! 一応彼女兼助手(自称)だと思っていたから、何も言われなかったというのはグサッと来る。よし、安室さんが何も言わないのなら……!

「蘭ちゃん」
『はい?』
「わたしも連れてってほしいなー……なんちゃって」
『……』

困惑している蘭ちゃんに心の中で謝る。危ないのは分かってる。安室さんもきっとそう判断してくれたんだろう。でも、知ってる人がたくさん襲われてるのに何もしないまま待ってるなんて……! その思いが通じたのか『分かりました。安室さん大丈夫かな……』と諦めたような蘭ちゃんの声が聞こえた。何か、ごめんなさい……。



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