07
「みなさん旭さんに呼ばれてるんですか?」
「ええ、3時に…」
「私も」
「警部さん、何か事件でもあったんですか?」
それぞれが不思議そうにわたしたちを見てくる。警察に探偵、何かあったのではないかと考えるのは至って普通の反応だ。そのことについて目暮警部が話そうとすると、奈々さんが「3時になっちゃうよ!」と言ったので、とりあえずモノレールに乗ることにした。海の上にあるアクアクリスタルはこのモノレールで行くしかないようだ。なんか特別感があってかっこいいなぁ。キラキラと光る海はとても綺麗で、何だか日常から切り離されたような気分になる。……ダメだ、もしかしたら、ここにいる人たちは狙われている可能性もあるんだ。あんまり浮き足立たないようにしないと。安室さんにもまた怒られちゃうし………。
ちらり、と彼を見る。腕を組みながらモノレールの扉部分に寄りかかり、外を見ていた。その綺麗な横顔に見とれそうになるけれど、わたしは先ほどのケンカを思い出し、また暗い気持ちになる。心配、してくれたんだよね……。あの時は置いてかれたとムキになってしまったけれど、実際考えたらわたしがしていることはすごい危ないことだと分かった。安室さんや毛利先生、それに蘭ちゃんみたいに自分を守る術も持ち合わせていないわたしがこんな所来ても何もできないなんて分かってたはずなのに……。それでも置いてかれるのが寂しくて、わたしは無理矢理ついていったんだ。彼にとってどれだけ迷惑なんだろう。考えたら自分がダメだったことしか思い浮かばなくて、思わず涙が出そうになった。やだなぁ。足引っ張ってるならわたし、本当にただのお荷物じゃん。
(あぁーー、暗い気持ち、吹っ飛べ吹っ飛べ!)
そうやって1人で落ち込んでいたから、蘭ちゃんと安室さんの会話は、わたしに全く聞こえなかったんだ。
「安室さん……」
「? はい?」
「名前さんとケンカしたんですか?」
「………まぁ、そうなるんですかね」
「…ごめんなさい、私が許しちゃったから。安室さんが名前さんを連れて来ようとしなかったのって、危ないからですよね?」
「それはまぁそうですけど……でも、何となく彼女が来ることは分かってましたから」
「それなら仲直りしてあげてください。すごい落ち込んでいるので…」
「頑固ですからねぇ。彼女も僕も」
「そんな……」
「……どうも囲み込むだけじゃダメみたいですね。どうしてもするりと抜けていってしまう」
「……安室さんと一緒にいたいからじゃないんですか?」
「…あんな呑気なおてんば娘、僕ぐらいしか手綱引けないですしね」
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「うわぁ、水族館みたーい!」
無事アクアクリスタルに着くと、内部は壁一面が水槽になっていてまるで水族館のような景色が広がっていた。待ち合わせになっていた海中レストランに入ると、そこには新品のフェラーリが置いてあるようで、奈々さんがどうやって持ってきたの? と興奮していた。まだオープンしていないのでそこはとても綺麗で埃一つ落ちていない。綺麗なところだなぁと感心する。
「旭さんが見当たらないようですが」
安室さんの言葉にハッとする。そういえば。
「妙ですな。客を招待しておいて……」
「まさか、もう村上に?!」
その言葉に反応したのは、宍戸さんだった。そりゃあそうだ。あの言い方だったら自分たちが何者かに狙われている……そう考えても仕方ない。どういう意味だと目暮警部に詰め寄ると、警部は説明するために全員を椅子に腰掛けるように伝えた。その間に白鳥刑事と毛利先生、安室さん、そして何故かコナンくんが周囲を確認しにレストランから出ていった。重い空気が辺りに漂う。
「そうだったんですか……」
今回の事件の概要を伝えると、みんな難しそうな顔をしていた。それもそのはずだ。村上って人との面識はないのに、狙われるなんて訳が分からないよね。全員何とも言えない表情をしていた。ちょうどその時辺りを調べ終わった4人が帰ってくる。どうやら、特に異常なところはなかったようだ。
その後、コナンくんたちによってここにいる人全てが数字に関わっていることが知らされた。
沢木公平さんは「八」、小山内奈々さんは「七」、宍戸さんは「六」、フォードさんは英語で4の意味から「四」、そして仁科さんが「二」。
残りの数字は毛利先生の「五」と白鳥刑事の「三」、そして工藤新一くんの「一」ではないだろうかと推測された。
(全員揃っちゃったんだ……)
いよいよ犯人がここで何かしら仕掛けてくる可能性は高まった。だってこんな数字が名前に入った人が集まることなんてないもん。旭さんも含めたら、未だに被害が出ていない9から1まで全ての人がここに集結していることになる。……犯人も、この建物の中にいるのかな。安室さんにあんな事を言った手前、怖いと思うのは躊躇われた。怖くない、わたしも、彼らを守るんだ! そう決心をしてわたしは辺りをキョロキョロする。犯人、どこだ! 想像もつかない犯人を必死で探そうとしていた。
まさかこの後、自分がとんでもない目に遭うだなんて、露ほども考えずに。
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