スタンリーにもう一回仕掛けてみる話。ヒロインが割とわがままな子で、先輩千空が原作よりも甘々の甘ちゃんです。温かい目でご覧下さい。
長くなったので二話に分けました。
続編リクありがとうございました!!
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彼は先程の「できるよ」を現実にしたようだった。まるで散歩にでも行って帰ってきたかのような顔をして再びこの部屋に現れた時は、さすがにこの私でも瞬きを忘れてしまったくらい。
千空が撃たれた。
Dr. 大樹が嘘だということは、おそらくとっくにバレている。つまり私たちの本物の科学のリーダーは、今しがた彼に撃たれてしまったということだ。
簡単な話。スタンリーはDr. ゼノの命令を受け、出発し、そして帰ってきた。つまり任務は遂行された。
彼らもそれが分かっているからこそ、何も言わないし何も聞かない。淡々と、先程ここに届いた石化装置についての話を始めてしまった。
いくらなんでも酷い話。スタンリーは本当に千空を撃った(殺した)つもりで帰ってきた様子だ。
でも、千空のことだから・・・一度は司さんに殺された経験のある千空のことだから、何か手は打っているはず。だから彼が本当に、生物学的に死んでしまうなんてことは絶対にありえない。希望的観測だとか、そんなことはどうでもいい。千空は死んでいない。今の私が考えていいことはそれだけ。
まあ、この後彼とはあっけなく再会することになるのだけれど。とはいえ千空が死んでいても死んでいなくても、どちらにせよ・・・スタンリーは私の中で『大切な先輩に物理的に穴を開けた残酷な人』というレッテルが貼られた。
それが彼の本職だと言われたらそこまでだが。だとしても、さっき私たち子供相手に容赦なくマシンガンをぶち込まれた身としては、彼こそそういう種類の人間なのかもと思わずにはいられない。
(だからこそ彼に銃を習いたいけれど)
(それにしてもまつ毛なが)
呑気すぎる心の中の呟きは、突然背後から両耳を覆われた衝撃でどこかへ行ってしまった。
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「ナマエ、あとゲン。二人とも無事だな。ま〜あ心配は無かったがよ。潜入おつかれ」
「いやいやいや!あのねえ!千空ちゃん何言ってんの!?」
「そうです、無事だったかはこっちの台詞です!ていうか千空さん、どうして生きてるんですか?」
「あ゛ー、片栗粉」
司さんたちの突撃訪問によって敵のボスを捕らえた私たち。彼は・・・先日スタンリーに撃ち殺されたはずの千空は、包帯で体をぐるぐる巻きにしてしれっとそこに登場した。
こちとら何日も心配して過ごしていたというのに。たった一言片栗粉を使った、だなんて・・・分かる人にしか分からない説明をする千空。彼が久しぶりに再会した懐かしの恩師と話を始めてしまう前に、取り急ぎ伝えたいことを伝える。
「千空さん、あの」
「どした。手短に頼む」
「私はペルセウスに戻ろうと思います」
「あ゛!?テメ・・・」
私の突飛な発言に、千空はめちゃくちゃガン飛ばしてくる。そりゃそうだ。ペルセウスは今敵が占領しているのだから。そんなところにわざわざ戻るなんて、馬鹿でしかない。
そうです、私は馬鹿なのです。馬鹿だからこんな時でもこんな馬鹿みたいな発言をしてしまう。しかし千空はしばらく私の目を見て、呆気なく了承してくれた。
「・・・分かった、そういうことならまかせる。死ぬんじゃねぇぞ」
「え、いいんですか?」
「いや良くねぇよ。無謀過ぎだ。それに俺のためにわざわざやるこっじゃねぇ」
「・・・!千空さん、私の考えていることが分かるんですか?」
「俺が撃たれたからだろ?昔っから、やり返すの好きだもんな・・・テメーは」
なるほど、彼には私の頭の中が丸見えらしい。それに、思い当たる節はいくつもある。
私がこうしてやり返すことを生業にしているのは、小学校の頃の出来事があったから。河川敷で千空や大樹が上級生たちにボコられているのを、たまたま目撃したことがきっかけだ。私はすぐにその上級生をボコり返した。一つ年上の千空たちと仲良くしているのは、それがあったからである。
それ以降、私は文字通り『やり返す』ことが好きになった。だから、渡米してまで『やり返すための力』を身につけたのだ。馬鹿でしょう?
「俺が司に殺られた時も派手にやり返しやがって」
「あは、そんなこともありましたっけ」
「テメーの『やる気』つーか、やり返したがり?テコでも動かねぇし、揺るがねんだ。非力な俺にゃどうもできねーよ」
千空は私の眉間にトンと指を置いた。
「『虎視眈々』が、狙い時だ」
・・・意味深な言葉。私はその意味をはっきりと理解できないまま、しかし千空にはきちんと感謝をしながらペルセウスに戻った。
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私はすぐに『虎視眈々』を見つけた。
川の上流から下りてくる千空たちの船。彼らは城に戻って敵の小型船を奪取し、まさに今ペルセウスと衝突しようとしているところ。小型船の舳先には、もう電池の付かなくなった石化装置がくくり付けられていて、そして
スタンリーが虎視眈々とそれに狙いを定めている。
今この時、スタンリーが石化装置を狙って銃を構えている今この時こそ、彼が最も無防備な瞬間じゃないか!千空が言っていた通り、今がまさに狙い時だ!なぜなら、杠たちの演技によってあれを本物だと思わされた軍人たちは、皆一斉に川に飛び込んでしまったから。
スタンリーの背後にはたった一人、私がたった一人で銃を持って立っていた。たとえ自分が石化してでも、先頭切って前に出た彼とは違う。私はあれが作動しないことを知っている。だから、少し心に余裕がある。油断はもちろんできないが。
千空はこのことを言っていたのだ。ああスッキリした。彼は、こういう状況になることをあらかじめ予想して、私に教えてくれていたのだ。
千空、彼にしては優しいじゃないか。何よりも私がやりたいことを尊重してくれるだなんて。たとえ私がどんな危険に冒されようと、私がやりたいことを尊重してくれるだなんて。その上助言までしてくれるなんて。
「千空さん、後輩には甘いよね」
あとでお礼をしなきゃ。千空が私にしてくれたことに対してだって、『お返し』を忘れてはいけない。そんなことを考えながら、そこにある頭に回し蹴りを仕掛けた。