※誕生日設定注意。
「ちなみに千空、私の誕生日は5月11日ですけど。千空がいない間に二回くらい過ぎ去りましたけど」
441が私の誕生日だと聞いて、私はますます訳が分からなくなった。これなら21の二乗で終わっていた方が、まだスッキリしていた気がする。そもそも441って4月41日か?どんな異次元に生まれてきたんだ、私は。
「もちろん忘れてねーよ。テメーの誕生日の二回とも、日付け変わった瞬間真っ先に電話したろ」
「そうだっけ?」
「テメーこそ忘れてんじゃねえよオイ」
もちろん覚えてます。ただちょっと素直になれなくて。
「単純な話だ。4月1日から、その日を含めて41日後はいつだ?」
「・・・4月って何日まである?」
「30日まで」
「じゃあ、残り11日で・・・あ、本当にこじつけだね」
4月41日。
分解すると、4月30プラス11日。
つまり、5月11日。
・・・なんだこれ。千空にしてはあまりにも幼稚な考え方な気がする。まあ普段スーパーコンピューター並の高度な計算をしている脳味噌だから、たまにはこういうのもいいのかもしれない。私が一人で納得していると、千空は席を立って引き出しをまさぐった。
「つーわけで、俺からテメーに二年分の誕プレやるよ」
そして、鍵を渡された。デジャヴ。
「・・・これはなんの鍵?」
「合鍵」
「どこの?」
「ここの」
「・・・ど、どうして合鍵?さっき元鍵返したところなのに」
「家出たいんだろ?」
たしかにそう言ったけど・・・。それがどうしてここの合鍵に繋がるの?私が思い切り首を傾げると、千空は親指を床に差し向けた。
「テメーは運がいい。ちょうどここに空き部屋があるぞ」
突然何を言っているんだ。
「空き部屋・・・なの?」
「親父は今空飛んでるしな、しばらくは帰って来ねえ。テメーの戸建てより狭い家だが、その辺のアパートよりは広いんじゃねえか?」
「えーっと、つまり、・・・私にここに住めってこと?」
「ああ。そういうことだ」
なんと、曲がりなりにも大型マンションのひと部屋を、私なんかに貸してくれるというのか!なんて唆られる話なのだ。千空がこんなに良い人だなんて思わなかった。まあ当然、家賃や生活費の諸々は徴収されると思うけど。
しかし、気になることが一つ。
「でも・・・千空さっき、これからはずっと日本にいるって言ってたよね?」
「確かに言ったな」
「えっ、もしかして地方とか行っちゃうの・・・?」
「いーや、普通に東京だ。明日から大学行くしな」
「なんだ・・・。え?でも、だったら千空はどこに住むの?」
私の質問に、千空はこれまた当たり前のように言い放った。
「決まってんだろ。俺もここに住む」
ど、・・・同棲をしようという話だった。
「正確に言やあ、どの部屋も物だらけでとても快適とは言えねえな。だが元々親父と二人で暮らしてたんだ、ちょい整理すりゃイケんだろ」
ありがたいことにつゆまで全て胃の中に収めた千空は、パタパタと紙の広告で顔面を扇いでいた。悠長な声で「暑いなこの部屋」と呟いている。
「・・・」
「どうした名前、魂抜けてんぞ」
何言ってるの。いきなりそんな提案をされたら、魂だって抜けたくもなる。
「千空、ホントに一緒に住むの?」
「ああ」
「こ、ここで?・・・二人で?」
「ああ。嫌か?」
「嫌じゃない、嫌じゃないけど・・・」
「ならいいじゃねえか。こっちの方が駅に近くて便利だぞ」
「あ、それは思う」
単純な思考が勝ってしまった。
「別に俺は強要はしない。ただ、親御さんの意見もあるからな。最終的にはそっちで判断しやがれ」
「・・・」
私はスマホを取り出して、今二人揃ってお出かけしている両親に電話をかけた。しかし二人とも忙しそうで、すぐに通話が終わってしまった。
「・・・なんて?」
「『あら!千空くん、もう帰ってきてるの?え?同棲する?良いじゃない大歓迎よ!』『石神くん、彼なら安心だ。せっかくだからお世話になりなさい』」
「ククク、我ながら信用に厚くておありがてえ。両親共々お許しが出たってことだな」
「まあ予想してた通りっていうか・・・私の両親、石神家リスペクトだから」
「テメーはどうなんだ?」
「私?うん、もちろん凄いと思うよ。二度目の再挑戦で本当に宇宙飛行士になっちゃうんだもん。夢を叶えるって凄いよね。私も見習いたいな」
わざとらしい発言に、千空は何か思案するように「ふ〜ん?」と相槌を打った。もしかして、自分が褒められるとでもお思いだったのかな。もちろん千空も凄い人だよ。この歳で国際的な科学のなんちゃらに単身で呼ばれてしまうんだもん。石神宇宙飛行士の息子だからじゃない。その頭脳を世界に買われているんだよ。
だから。
「千空は、言うまでもないでしょ?」
私が真正面からそう言うと、千空は控えめに笑った。
「テメー・・・そういうところだわ」