THE STONE WORLD


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どうせあいつなら何やってでも抜け出すだろうし。まだ建物内にいるのなら全然許容範囲だと思っていたが。
「いや反応なくなるとかざっけんなし」
「ナマエかい?」
「役立たずばっか。もう部下みんな殺っていい?」
「それは好きにすればいい。僕の関知するところじゃあない」



夜の会食の時間までに結構余裕があるということで、ゼノが全く関係ない別の仕事を持ってきやがった。目的のビルはホテルから6マイル(10キロ)離れたところ。
・・・そこがターゲットのいる位置。俺らはさらに離れた山奥のガードレール沿いに車を止めた。
別に、仕事に文句を言っているのではない。いや文句は言っているが。あっという間に仕事は終えた。ここ最近の仕事で一番簡単だったし、むしろつまらなくもあった。逐一発信機の確認も怠らずにいたのにな。
「てか、ナマエもここに連れてくりゃ良かったんじゃん」
「それは君のポリシーに反するんじゃないのかい?仕事現場をナマエを見せないっていう、君のよく分からないそれに」
「・・・ったく」
車をかっとばして猛スピードでホテルに戻っているが、どうせナマエはもうそこにはいないだろう。
部下を使って周辺をくまなく探させているはずなのに、未だに連絡は来ない。役立たずとは言っても俺の部下だ。奴らを撒くとは相手も只者じゃあねぇな。

「ゼノ、まだかよ?」
「ああスタン、お待ちかね。ホテルの監視カメラのハッキング映像だ。見やすいようにレイアウトしてみたよ」
「あんたそれで時間かかってたの?」
そういうところがゼノらしいが。今は時間が惜しいってのに、有難いが不要な気遣いだ。
「・・・おお!なんということだ」
「今度はなんだ」
ゼノに示され画面を覗き込むと、そこにはバーで知らねぇ奴と仲良くおしゃべりしているナマエの姿があった。
いや、見つけんのはや。デカいホテルなだけあって膨大な数の監視カメラがあるはずだが。さすがゼノとしか言いようがない。
「で、何に驚いてんよ」
「見ろ。この男の顔を」
男?・・・男か。一瞬女かと思った。それほど華奢で細身の体型、そしてナマエにも負けない小さい顔。髪を二色に割った頭が特徴的なそいつ。が、なんだって言うんだ。
隣を見て続きを促すと、ゼノは今月一の笑顔を見せた。
「千空の連れだ」
そう言ってめちゃくちゃ愉しそうに笑うゼノの顔を見ると、案外こういうのも良いのかもしれない。いや良くねぇよナマエがパクられたんだよ。

「他にも数人いるな。千空の仲間が」
監視カメラの映像を次々に切り替えながら、仕事の早いゼノはあっという間に奴らの居場所を突き止めていく。
ちなみに、これはライブではなく過去の映像。奴らはとっくにこのホテルを出ている。
「こいつらなんでいんの?ナマエには言ってねぇがディナーはまた別のホテルだろ」
「別のホテルと言っても、そう距離は変わらないじゃないか」
「まあよ」
「そう、たとえば!たまたま僕らが別の用事でホテルを出ていたように、彼らもまた別の用事であのホテルを訪れていたのかもしれない」
全然有り得る。だいたい、周辺の建物くらい調べておくのが普通だ。
「んで、奴らどこ向かったの」
「バーを出たあとは建物の下に向かったようだが、やはり監視カメラには映ってないな。仕込みは忘れていない」
「普通に考えたら駐車場だな。車でどこ行きやがった?・・・ていうか、あいつら今夜どうすんの?来んの?」
もとはと言えば、千空から誘われた会食だ。それなのにナマエをさらって別の場所に逃げて、奴らは何を考えてんよ。
「来ないらしい」
ゼノはやけに知ったふうに言う。それもそのはず・・・監視カメラとはまた別のモニターに、何やら複雑な暗号文が表示されていた。たった今届いたらしい。
「・・・なんて?」
頑張れば俺でも解けなくはないが、俺なんかよりも頭の出来が違う幼なじみがここにいる。思った通り、ゼノは頭の中だけでさっさと解読した。
「『テメーらのお嬢、返して欲しくば頑張って追っかけてくるんだな。何日かかっても待ってやる』・・・と」
「へぇ」
ナメた真似してくんじゃん。
どうやって嬲ってやろうかね。

俺はそこにある何かを炙るかのように、ライターに火をつけた。足を組んでゼノの肩に腕をまわし、咥えていた煙草が折れない程度に歯を立てる。
「スタン」
「なーにゼノ先生」
「そろそろお腹が減りそうだ。糖が足りない」
「なんも食ってねぇの?なんで?」
「何故って、千空との食事が」
「あいつらドタキャンするっぺーけど」
「・・・・・・そうか」
ゼノは途端にしゅんとして黙り込んだ。
やっぱりあいつらぶっ殺す。



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