THE STONE WORLD


美味しいものに嘘はつかない


食事は各自、一定の時間内に好きなタイミングでとることになっている。早く夕飯を食べたいと言い出したのは私なので、今晩の料理担当に事情を伝えて、私自身も準備を手伝って、私たち三人は先行して夕食を食べ始めた。

「何から話そうか。そうだな、まずは近況から報告していこう」

そうして、さっそく色々な話を始めるゼノ。内容は思った通り次に取り掛かる改良型飛行機についてだったり、コーン畑や工場の進捗だったりと基地の設備についてが大半を占めていた。
私は科学のことはほとんど分からないけれど、武器の方には興味があった。こんな世界だし、自分が食べる肉は自分で狩るべきだと思ったからだ。石化するまで銃には触ったことがなかったので、都合よくそこにいたプロのスナイパーに指南を受けて、私でもある程度は扱えるようになった。
もっとも最初スタンリーは危ないからと言って、銃どころかただのサバイバルナイフですら触れさせてくれなかったけれど。私がその頭を無理やり両手で引っ掴んで「教えてくれないのならスタンを焼いて食べちゃうよ」と脅したら、優しい彼は仕方なく頷いてくれた。彼も甘い。

「・・・というわけで、君たちの協力が必要不可欠なんだ。暇があれば僕のところに来て欲しい。もちろんそれぞれ役割をこなしたうえでの話だ」
「私はスタンやみんなより暇だから、いつでも平気」
「あんたの指示ならなんだって聞くさ。全て意味のあることなんだろ?」
「二人ならそう言うだろうと思った。助かるよ」

ゆっくり時間をかけて美味しいごはんを完食したところで、ゼノは話を終えた。改まって相談とか言うから一体どんな無理難題を提示してくるのかと思っていたが、これといって普段の仕事となんの遜色もない、ただの簡単な頼み事だ。
完食・・・はしたけれど、なんとなくまだ食べ足りなくて、私はスープだけおかわりをすることにした。

「で、スタン。君は最近first nameの部屋で寝泊まりしているようだが」
「ん?ああ」
「自分の部屋はもう使わないのかい?是非ともあぶれた科学道具の物置に使わせて欲しい」
「え、なにそれ?」

暖かいスープを抱えて席に戻ると、なにやらおかしな話が耳に飛び込んできたので思わず声を上げた。スタンリーの隣に腰掛けながら、ゼノに注目する。

「なにそれ、とはなんだ。君の部屋だろう」
「私、最近はずっと一人で寝てるよ。ゼノの見間違いじゃないの?」
「僕がスタンのことを見間違うはずがないさ!」
「くく、気づかねえのも無理ねえな」
「どういうこと?」
「first nameが寝た頃に部屋に忍び込んで、first nameが起きる前に抜け出してる」
「なにやってんの?」

ここのところ毎日スタンの帰りが遅いから、私は寂しい思いをしながら眠りについていたというのに。なんて馬鹿なことをしているんだろう。外に出ることの多い彼は張り込みで数日帰ってこないこともあるから、これまで我慢できていたとはいえ。・・・たしかに夜と朝で若干物の配置が変わっているような感じがした日もあったが、ただ自分が寝ぼけているだけかと思っていた。
スタンは悪びれもなく「眠り姫を夢から覚ます悪党にはなりたくないんでね」とほざいている。今度は帰ってくるまで寝ないでやる。

「スタン、君はまるで昔のfirst nameのようなことをしているな」
「ん?ああ、あれね」
「なに?私、そんな変なことしてた?」
「変とは思わないが、確かな事実だ。ハイスクールに通っていた時、スタンとこんな会話をしたことがある」

そういうなり、ゼノは愉快そうに話し始めた。

「やあスタン、そんなに見つめて・・・余程ガールフレンドに夢中みたいだね」
「ゼノ。欲しがったってあんたにもやれねえよ」
「何を言う、そもそもfirst nameが君の元から離れないだろうさ。・・・そういえば、彼女の方こそよく君のことをジロジロと見ているよな」
「そっちこそ何言ってんよ。first name、全然俺と目合わそうとしないかんね」
「ああスタン、彼女は君にバレないように影に隠れて熱い視線を向けているんだよ。愛くるしいだろう?」

「その時のスタンの表情を君にも見せてやりたいね」
「ねえゼノ、いつの間にそんなことスタンに話したの!なにするの、恥ずかしいよ」

思わず立ち上がって抗議すると、隣に座るスタンがまあまあ落ち着けと私の腕を引いて座らせる。

「恥ずかしがったって可愛いだけだ。それに、今のfirst nameはちゃんと俺の目を見てくれるじゃんよ」
「それは・・・」
「たしかにそうだ。学生時代は通じあっていながらあんなに関わりが薄かったのにだ。まあそれもこれも全て、スタンが積極的に距離を縮めたお陰なのだろうけれど」
「頑張ったかんね、俺」
「それで、first nameの方も積極的になったというわけかい?」

二人から視線を向けられ、ただただ反応に困る。私は少し考えてから、先程森で植物を観察したときのように、今度はスタンリーの顔面をじー、と見つめた。

「その、なんてことはないよ。ただ、大人になったスタンが格別に美味しそうに見えるから」

しかも、実際美味しいしね。
私の淀みない発言にスタンリーは隣で盛大に頭を抱えた。ついでにゼノの大笑いが聞こえる。そんなにおかしい発言だろうか、不貞腐れながらスープを口に含むと、スタンリーが私の肩に腕をまわしてきた。

「first name、お前間違っても俺以外にそんなセリフ言うんじゃないぜ」
「え?ごめんなさい、ゼノに一度言ったことがある」
「なんだって?」
「安心しろスタン、僕がステーキを食べた日に『ステーキの香りがする』と言われただけだ」
「ちょっと違う。『生々しい肉の香りが漂ってきて素敵だわ、私に貴方を食べさせて』って言った」
「それはお前やってんじゃん」



美味しいものに嘘はつかない
backnext
[ toplist ]