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あれから十五年……え、飛ばし過ぎ?気にすんな。
野生の狼少女ならぬポケモン少女として過ごしてきた怒涛の十五年を語らせるつもりか。
スイクンに育てられて育った私は、生前の記憶を持っていたおかげかテレビに出てくるような野生少女ではなくちゃんとした人間的倫理も持ち備えている一般人になった。それでもサバイバル生活という生活水準最低ラインで生活していたからか自分で言うのも何だがかなりがめつくなった。
そして、十五年も一緒にいたおかげで何故かテレパシーが使えるようになっていた。映画設定か。おかげで以心伝心の仲となったスイクンは私の手持ちポケモンとなっていた。伝説相手にただのモンスターボールでは気が引けた為、かなりショボいアルバイトをして頑張って購入したハイパーボールでゲットという形で人里でも一緒にいる事が出来る。私にとってスイクンはただのポケモンやパートナーではなく、家族や己の半身のような大切な存在となっていた。
この土地ではスイクンは伝承に残る程の存在だ。

「どうせなら、スイクンを知らない遠い、遠い場所に行ってみない?」

そう言えば、スイクンはクォンと同意を示す声を返してくれた。
スイクンと最近捕まえたロコン(しかも色違いだった)を連れて私はバトルの賞金で貯めたお金で船のチケットを購入した。

「ぶっちゃけ、最近のタイトルはやったことなかったからどんなポケモンがいるのかも解らないんだよねえ……」

えい、とダーツのようにして選んだ地方は私がゲームをしていた頃には聞いた事のない地方だった。まあ、ぶっちゃければ地方なんてカントー、ジョウト、ホウエンしか知らない。
イッシュって何処よ。
初めての手持ちが伝説ってあたりで既にチートのような気もするが、私の知っているポケモンとはだいぶ違うと痛感させられたのは野生のポケモンに襲われた時だ。
野生のサイホーンに襲われた時だ。私が怪我をする前に助けてくれたスイクンは壮快と現れると私とサイホーンの間に入ってにらみ合いをしていた。
相性は良いはずなのに、私を護る事に一心して攻撃を仕掛けないスイクンに私は耐えられず声を上げた。
突進してくるサイホーンの攻撃を受け止めるのは危険だ。

「スイクン!突進を右に避けてバブル光線!」

するとスイクンは私の言葉を聞き入れて指示通り右に避けると突進空振りしたせいで勢いを殺せずに直進したサイホーンに容赦なくバブル光線を放った。
もともとの攻撃力が高いのと、相性による効果は抜群で、サイホーンは目を回して倒れていた。
バトルはゲームのように長考出来るようなターン制ではなく、瞬時に指示を出さなければ危険なものだった。そのうえ、覚えられる技は四つだけでなく、修行(レベルアップ)によりコツを掴んだ事で覚えていくような形で忘れる必要がない。

「もっと、上手に指示が出せるように頑張るから、私に力を貸してくれる……?」

そう問いかけるとスイクンは当然だと言わんばかりに頭を擦り寄せた。
二メートルはあるスイクンをそのまま連れて歩けばとても目立つ為申し訳ないがボールの中に入ってもらう事で船に目立つ事なく乗る事が出来た。

「イッシュ地方ねえ……どんな所かしら」

とりあえず、目立たず騒がずのんびりと過ごせればいいや。
それが大前提で放浪しようと思いながら船室からキャモメが飛ぶ海を眺めていた。
A→Z