05
Nと知り合ってから三年の月日が流れた。
私は既に十八を迎えており、手持ちのロコンもキュウコンに進化していた。
色違いと言う事もあり、本来なら金色の毛並みもまるで月の様な銀色をし、落ちつきのない好奇心旺盛な性格は少しだけ落ちつきを見せるようになった。とはいってもまだまだ甘えたで何かあればクルクルと鳴いて擦り寄ってくるのだから可愛いものだ。ついでに言うとライモンシティの近くにはさして迷う要素などないというのに【迷いの森】と呼ばれる場所があった。そこにはキャンピングカーで生活している女性がいたのだが、なんとそれがゾロアークと呼ばれるポケモンで、辺り一帯に幻術を掛けていたと言うのだから驚きだ。そんなゾロアークもスイクンとキュウコンがいつの間にやらヘッドハンティングしてきて仲間として迎え入れ、私の手持ちはスイクン、キュウコン、ゾロアークの三匹となっていた。一匹一匹の大きさもあり結構な大所帯だ。
私はゾロアークのいた森を拠点に、ライモンシティやブラックシティ、ホワイトフォレストを行き来する日々を送っていた。
イッシュ地方というのは地方全体に張り巡らされた鉄道網が便利な為利用する人間はかなり多い。
表にある看板に「ノッテタタカウ バトルサブウェイ」という宣伝文句もあるようにバトル専用車両なるものも存在し、車両という限られた空間でのバトルを楽しむ人々もいるらしい。
ただし、その為には手持ちは最低三匹は必要で、伝説に含まれるスイクンは除外されてしまう為私はそれに該当しない。まあ、ミュージカルはそれなりに楽しめたが。
ライモンシティで買い物をし、いつもの場所で三匹の毛づくろいをする。私はふわふわでもこもこのさらさらな毛並みが大好きなのでたっぷりとした毛皮を有しているこの三匹のふわふわの為なら粉骨砕身する。個人的に三匹に囲まれてそれぞれの毛並みを堪能するのが大好きなのだ。
キュウコンは炎タイプ故ぬくぬくとした体温にもこもことしながらも艶やかな毛並みだし、スイクンは身体は心なしかしっとりとしているが鬣はふわふわで、ゾロアークはも全体的に毛足が長い為ツヤツヤさらさらとしている。
皆違って、皆良い。

「んん〜、この毛並み……最高!」

寒い時期は特に一緒にぎゅっと固まっているととても暖かくて野宿をしてもそこまで辛くは無い。

『毎日エニシが手入れをしてくれているおかげで、私の鬣もいつも風通しが良い』

「コンッコンッ!」

「クォォ!」

同意するように他の二匹も頷いたり身振り手振りで伝えてくれる。手入れをしている側としてもとても嬉しい答えだ。
私の(ある意味自分の為の)努力舐めんなよ!

「よーし今日も頑張って稼ぐぞー!」

ぶっちゃけ、トレーナーカードどころか戸籍の存在すら危うい私が生活をする為の資金確保はバトルとなあなあな面接で終わるような日雇いのバイトくらいだ。
就職活動すらできない私はこの先の事を考えるとお先真っ暗でしかないのだが、今は少しでも将来の為に小銭を貯めつつあった。
大抵、エリートトレーナーやベテラントレーナー相手なら賞金額もそこそこ良い。勿論ジム戦もなのだが、ゲームと違いジムに挑戦するには参加料が必要だったとか知らなかった。そりゃそうだ。イッシュ地方は兼業しているジムリーダーが多いから忘れがちだがジムリーダーとてポケモン協会から承認された公務員のようなものだから給料を捻出するには収入源が必要だ。その最たるものがジム挑戦権とも言って良い参加料で、レベルが高くなるにつれてその参加料も上がってくる。八番目のジムなんて一回の場とある費用が二万越えとか目玉が飛び出すかと思ったわ!!
まあ、私はポケモンリーグに挑戦する気もないし今の人生を生きるだけで精いっぱいだから別に良いけどね。
パチリと目の合ったキュウコンがクルクルと鳴いて擦り寄ってくるとそれに釣られてゾロアークも自分もと言う様に寄ってくる。うん、可愛い。
彼らにだって木の実だけでなくそれなりに腹の膨れそうなポケモンフーズくらい買ってやりたい。私週に一回ポケモンセンターに泊まれれば良いし、二日に一回くらいで公衆浴場に行ければ良い。女失格だなんて言うな。これでも頑張ってるんだから。
古着屋で三百九十円で買ったTシャツに千円のジーパンだったり、フリーマーケットで売りだされている三枚五百円のインナーだったりと、とにかく自分にかける金額は出来るだけ抑えに抑えた生活は結構身に堪えるのだ。

「良し、行こう」

三匹にボールに入ってもらい、私はバトルの相手を求めて歩きだした。
A→Z