- 仙女VS天女 -
03:私は元気です。  


きり丸が忍術学園に入学してから、この家は少し静かになった。
理想の母親像を壊さないように気を張っていたが、その必要もなくなった私は家の中で尼僧の格好を時々だがやめる事もある。
どうもあの格好は暑苦しくて仕方がない。この時代、女性は肌を露出させる事は疎まれているようだが、某スーツのようなレオタードのような格好をしていた頃の露出度なんて今の時代の人間が見たら卒倒するだろう。
少なくとも、半袖短パン位は許して欲しい。つまり通気性が欲しいのだ。
忍術学園は全寮制なので今では文通と言う形で連絡を取り合っている。学校で何を学んでいるか、友達が出来た、担任の先生がどうだと言った何気ない日常を紙面いっぱいに書きこんでいる様子から、本当に楽しんでいるのだと言う事が良く伝わってきた。
やはり、行かせて正解だったと思えたし、私もこの手紙のやり取りが楽しみになっていた。
しかし、暫くしてから手紙の届く間隔が広くなった事に違和感を感じた。最初は学校の授業が忙しかったり、友達と一緒にいるのが楽しくて疎かになっているのだろうと思ったがどうやら違うようだ。
以前からは文面からも滲みでてくるような雑ながらも楽しさが伝わってくるような力強い筆跡も、丁寧な少し力無い文字に変わっていた。
何かあったのか……と思い案じる言葉を送ったが、暫くして返ってきたのは紙面を握ったかのような皺の付いた手紙だった。

最近、先輩や友人が冷たい。勘違いかと思っていたが違う。あの女が来てからだ。

そんな言葉が綴られていた。
自分が言われて嫌な言葉、他人を傷付けるような事はしてはいけない(まあ私が言えた義理ではないが)と昔の言いつけをきちんと守る様なあのきり丸が僅かながらにも憎悪を交えたような言葉を記してきた事に驚いた。
これは何かあったのかもしれない。
それに【あの女】と言うワードが気になった。

「何かあるかもしれないのね」

予感、と言う程ではないが心に引っ掛かる文面に私は一度様子を見に行ってみようと思い立った。過保護?いやいや最近の子は自分達と違うと思った存在に対しては厳しいのよ?あ、此処全然最近じゃないや。まあ良いけど。一度くらいならパッと見てパッと帰ってくればいいだろう。
そう思いながら私は自宅でのだらけモード突入のラフなスタイルからきっちりと着こんだ尼僧スタイルで傾世元禳も忘れずに忍術学園のある場所へと向かう事にした。
勿論、学園長宛で先触れを出しておいた。大人としての礼儀に欠くような真似はしない。アポ大事。


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