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そわそわし通しの1限が過ぎ、2限が過ぎ。
3限が過ぎ4限が過ぎると、昼休みになるが今日の昼休みは休みじゃない。

放課後の下準備に大忙しなのだ。

「それでは最終確認をさせて頂きます。」
「はいはーい☆」

会場である講堂にて、ニコニコ顔の良い子で柳生をあしらうのは棗。

他の面々がこの様子を見たら、なんと分厚い面の皮かと感心するだろう。

「先ず、移動はこのタイミングでお願いします。」
「うん。」
「ルートとしては、待機場所があちらなので・・・ん?」

今何か。
視界の端に。

(・・・銀色の何かがちらりと、)

「ねーちょっと聞いて良い?」

思考を遮る棗の声。
柳生はハッとした。

「すみません。なんでしょうか?」
「ここさーあ?こっちっつったけど、こっちは通れないの?」
「ああ、此処は、この図では何も置いていない事になっていますが、実際は・・・」





話し込む2人。
其処から少し離れた所にある荷物の陰で、件の銀髪・・・仁王はふうと息を吐いた。

(危なかったのう)

読んでいた通りだった。
柳生比呂士。彼はやはり鋭い。

しかしあの勘と観察眼は、如何にも魅力的だ。

(おっと、あんまり此処でじっとしてるわけにもいかんな。)

「きゃ!」
「とっ。」

箱を持った女子がぶつかってきた。

「やだ、ごめん!」
「すまん。」

言葉少なに立ち去る仁王。

「・・・なんなんだろ、あれ。」






「その後ですね、この、あ・・・」

柳生の手から、一枚の資料が落ちた。

生徒会のメンバーのタイムテーブルである。

「はい。」
「有難う御座います。」
「・・・超書き込みしてあんねw」
「ええ。これは全体の流れが書いてあるだけで、細かい動きは一人一人違いますから。」

タイムテーブルそのものは全員同じものを印刷して配られる。
しかしもっと具体的に、いつどこで何をするかという事まで書くスペースが無い為、個人の行動はそれぞれがメモ書きし、生徒会長が補足を書き足して完成となる。

「大変ですなあ、生徒会はw」
「ええ。まあ、自分からやっている事ですので。」
「・・・参考までに聞きたいんだけどー。」
「はい?」
「柳生君はなんで生徒会入ったの?」

柳生はキョトン・・・とした顔になった。

何故か。何故かと言われると。

「・・・そうですね、先ず第一に、何かしたいからという理由が上がります。」
「何か?」
「ええ。何か、勉強以外での活動ですね。」
「部活じゃ駄目なの?」
「そういうわけではありませんよ?ゴルフ部にも所属しています。」
「あ、そなのwそれは知らんかったw」

それと同時にめっちゃ似合うな、とも棗は思った。
サンバイザーを付けてクラブを振る柳生の姿は、容易に想像できる。

「ただ、ゴルフ部はそれ程がつがつと動く雰囲気の部ではないので。部活だけでは、矢張り生活に張りが出ませんね。」
「それで掛け持ちかw」
「ええ。こういう仕事は嫌いではありませんし、やりがいもあります。」
「ふうん・・・」

棗はその返事を味わうように、相槌を打った。

「質問は以上でしょうか?」
「おおw有難うね、面白い答えだったよw」
「面白いでしょうか?良くある流れだと思いますが。」
「それをお前みたいなのがなぞってるのが面白いんだってw」

先ず、如何にも頭でっかちのインテリタイプに見えるのに、勉強一辺倒は嫌だと感じている所からして面白い。
しかしそのくせ、じゃあどうするとなった時に部活にゴルフという種目を選んでみたり、生徒会という組織を選んでみたりする所に、如何にも柳生らしい感じが取れる。

「それは褒め言葉、として受け取っても?」
「全然おっけーよw貶してるつもりは一切ないからw」
「それではお褒めに預かり、と言っておきましょう。」

柳生は微笑みを浮かべて、又打ち合わせに戻るべく資料に目を落とした。






「・・・ほー。」

先程とは別の物陰で呟く仁王。
これは良い話を聞いた。棗に感謝せねばなるまい。

(・・・やはりええな、彼奴)

思いの外ハングリー精神があるタイプと見た。
更に好評価。脳内ポイント+1。

などと思って余所見をしていると。

「・・・きゃあ、む、ぐ・・・!?」
「おっと。ちいと静かにしてくれんかのう。」

なまじ隠れていた所為で、こんな所に人が居るなどと思って居なかった生徒会1年の女子生徒は、驚きのあまり上げた声を仁王の手で遮られた。

「すまんすまん、驚かせたの。探し物をしてたんじゃが、もう出ていくから。安心しんしゃい。」
「・・・・・・・」
「良し、良い子じゃ。」

口を塞がれながら、うん、うん、と頷くのを見て、仁王はそっと手を離した。

「すまんかったな。」
「・・・・・」
「すまん序でに頼みたいんじゃが、誰かに俺の事を聞かれたら、弁解しといて貰えんか。探し物があった、ちゅうてな。本当は部外者の立ち入り禁止になっちょるのは知っとるんじゃが。」

嘘じゃない。
探してた。とっても大事なもの。

もしかしたら、見つかったかもしれない。

「じゃあな。」
「・・・・・・」

そう言ってサッと出ていく仁王の後ろ姿を、生徒会1年―――林鈴奈はポーッと見送った。

「かっこいい・・・・」

確かにマスクは甘いかもしれないが、今あの男がしていた事のメインは探し物ではなく、生徒会活動の妨害である。
その事を林は知らない。


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