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5限を過ぎると、皆そわそわしだした。
楽しみが待っているというのは、嬉しいものだ。

そして6限。

スピーカーが鳴る。


『ただいまより、講堂にて新入生歓迎会を執り行います。全校生徒は、講堂に集合して下さい。』


ワッと沸く教室。
勿論B組も例外ではない。

「よっしゃあーー!いっくぞーー!」

そう、本日は立海中等部、新入生歓迎会の日。
全学年、全クラスが一堂に会するこの企画の中、ビードロズは余興としてライブをさせてくれと入学式の日から頼み込んでいたのだ。

その所為で運営側の人間が足りずこんな大博打に出る事になってしまったが、どうせライブやるなら大勢の前で派手に行きたい。

「マジでやるんだー!」
「頑張れ紀伊梨ー!」
「おー!ビードロズの発進だあ!」

テンション高く跳ね回る紀伊梨。
喜ぶのは良いが。

「おい、あんまり回ると「あだ!」・・・言わんこっちゃないだろい。」

丸井は笑って紀伊梨に手を貸した。

「ほれ。」
「いたたたた・・・あんがとー!」
「こんなとこで怪我すんなよ?ライブ、成功させんだろい?」
「・・・うん!」






「さて、行きますか。」

クラスメイトがぞろぞろと立ち上がる中、千百合も席を立った。

「出陣だな。」
「・・・まあね、今回は似たようなもんかもね。紫希?行ける?」
「・・・・・・」
「紫希?」
「・・・え?はい、なんですか?」
「そろそろ行こうかと思って。大丈夫なの?」
「はい・・・」
「本当に?」
「はい・・・」

どうも心ここにあらずという感じがする。

「いかんぞ春日!そんな事では、負けてしまう!」
「何によ。」
「無論、己にだ!精神統一をしろ!心をコントロールせねば、上手く行くものも行かなくなるぞ!」
「あのねえ「いえ・・・その通りです。」は?」

千百合はとうとう紫希が毒されてしまったかと思ったが、紫希は真剣である。

「コツは自己暗示と言われました。私は出来る、私は出来る・・・」
「・・・これが精神統一?」
「・・・些か違う気もするが、これはこれで良いのではないか?」
「うーん。」

私は出来る、と呟き続ける紫希を連れて、千百合と真田はクラスを後にした。







「なんだか緊張してきた・・・」
「なんでお前がw」

ドキドキしている桑原とは逆に、棗は平気の平左な顔をしてケラケラ笑っている。

「いや、お前達の演奏の腕を疑ってるわけじゃないぞ?でも、どんなイレギュラーがあるかわからないと思うと・・・」
「あっはっはっはっは!イレギュラーなんてつきもんっしょw」
「でもなあ・・・」
「だーいじょーび。」

棗は不敵に笑った。

「俺たちはビードロズよ?音楽の女神様がついてるんだから、安心しときな。」






「改めて見ると、凄い人数だね。」
「そうだな。」

幸村と柳も、人の波の中を講堂へと向かう。

「大丈夫なのか?この人の入りで。」
「1番辛いのは春日だろうね。普段なら兎も角、今回は何かやる事があるみたいだし。あ、棗は平気だよ?」
「それは分かっている。・・・というより、彼奴を知る者なら誰でも分かる。」
「ふふふっ。」

寧ろ同クラスの桑原の方が気を揉んでいるのでは、と思う柳は、マスターと呼ばれるだけの先見の明がやはりある。

「千百合も自分をコントロール出来るタイプだし、緊張しててもそれが裏目に出る事はあんまりないね。少しピリッとしてるくらいが、千百合にとって良いパフォーマンスが出来るよ。」
「ほう。五十嵐は?」
「五十嵐は・・・」

笑顔が零れてしまう幸村。

「勝負が大きい程、演奏の質が上がっていくんだ。」

幸村は紀伊梨のそういう所が好きだ。





仁王は、廊下を周りと一緒に飄々と歩いていた。

全校生徒。
2000人あまり。

良いじゃないか。

(やっちゃるぜよ)

成し遂げてやる。
必ず。

皆の為にも、そして自分の為にもだ。

ポケットの中に右手を入れると、チャリ、と音がした。

第二保健室の鍵の音。
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