Training camp - in Irupinet Hotel -:Come out



「暑い・・・」
「日差しがきつい・・・」
「メイク崩れちゃうわ・・・」

小旅行最終日。
もう最後の午前くらい、良い子にしてるから自由時間にしたらと言われた小口。
それから結局ひと夏のアバンチュールを見送る羽目になった小鳥遊と塩飽は、連れだってテニスコートに来ていた。

勿論、立海の練習が見たいからである。

「しっかしあれねー。こう言うとなんだけど、本当に特別な練習はしてないっぽいわね。」
「それで強いんだから大したもんだよなー。」
「いやあでも、見てたらかなり手抜いてないっていうか、手を抜く隙がない・・・おや。」

ラリー形式の練習に移るべく、丸井が近くにきた。
近くと言っても視認できる程度で会話は聞こえないが、こっちに気づくと笑って手を振ってくるので小口も笑って振り返した。

「人懐っこいわよねー、丸井君。」
「まあねw愛想いいタイプだよね、思春期男子にしては。」
「で?塩飽君はどうして挨拶してあげないの?」
「手振ってるじゃん。」
「何をそんなぶすくれた顔してんのかって聞いてるのよ。」
「あのアイドルオーラがむかつく。」
「またおっさんの嫉妬かw」
「まあねー、塩飽君には何年経っても出せそうにないオーラよねー、あれは。」
「うるさい!」

ちょっと離れた所で、「?」な顔をして振り向く丸井。
塩飽は嫉妬のあまり、ああやって振り向いてるだけでイケメンじゃねえか畜生、みたいな逆にファンみたいな事を考えてしまっている。

「実際どうなのかしらね。」
「「何が?」」
「丸井君は彼女とか彼女候補とか居るのかしらん、って話よ。」
「お前それ知ってどうするの?」
「いや、気になって。知り合いだからっていうのもあるけど、私的にはあの子は将来有望というか、いつかレギュラーになるんじゃないか?って気がするのよねーん。」

なんと、正解である。
こういう時妙に勘というか鼻が良いのが小鳥遊のジャーナリストとしての長所であり。
宝の持ち腐れでもあり。

「そうだとしても、彼女の有無と何か関係あるわけw野次馬でしかないじゃん。」
「まあでも、悔しいけど見るからにモテそうだよなー。彼女がっていうか、浮気するタイプじゃない?」
「あーね。不自由しないから、しれっと二股かけようと思ったら出来るタイプよね。」
「失礼な奴ら・・・そんな子じゃないでしょ、ブン太君って。」
「じゃあ小口君的にはどういう子なのよ?」
「えー・・・そりゃあ、明るくて。」
「「うん。」」
「テニス上手で、顔が良くて、女の子をちゃんと守れるタイプの子じゃないの?」
「うーわ、欠点探してえ〜。」
「スキャンダル見つけてえ〜。」
「お前らマジでさあ、中学1年生に向かってさあ。」
「中学1年生だろうと何年生だろうと、ゴシップの種なら私は探すわよ・・・時に2人とも。」
「「?」」
「この状況だし良い機会だから聞いちゃうけど、ぶっちゃけどうなの?」
「どうって?」
「紫希ちゃんと付き合ってるのかしら、実際。」

此奴本当に聞きおったぞ、と小口は思った。

「え、違うっぽくない?いや内心でお互い好きなのかどうかは知らないけど、少なくともまだ付き合ってるまでいってないんじゃないかなー。俺達が見てる限りそうっぽかったけど。な?」
「お前、ぺらぺら喋るなよ他人のプライベートなのに・・・」
「む!推測を喋っただけだろ、ケチな奴だなー!」
「そうやって人のことをあれこれ邪推するのがもうあれなんだよ。」
「ええいくそ、良い子ぶりおって!もういい、そっちの話聞かせて!」
「そっち?」
「小鳥遊、お前しか持ってない情報もあるわけでしょ?関東大会の時に会ったんだって行きの車で言ってたじゃん。」
「ああそうねー、でも私もそんな感じだと思うわ。というかぶっちゃけ丸井君に関しては、紫希ちゃんが特別好きなのかどうかってところから議論の余地ありね。」
「マジ?」
「え、でもあんないい雰囲気だったのに、」
「いや、ああいうタイプの子は誰とでもいい雰囲気になれるのよ。そんな気なくてもさらっと手とか繋いだり、可愛いとかって言えるタイプだわ。」
「「あー・・・」」

そう言われたらそうかもしれない、と塩飽も小口も納得した。
確かに。ありそう、そのパターン。

「え、でもさ。他の子には、」
「紀伊梨ちゃんは友達枠なのよ!妹みたいな感じだわあれ、手がかかるなーみたいな。千百合ちゃんはそもそも幸村君の彼女だしーーー」
「そう!そうだそれ、そうだった!」
「ちょっと、いきなり大きい声出さないでよー!」
「大声も出すわ!彼女持ちだぞ、彼女持ち!ほら見ろ!」

塩飽が指を指した先には、丁度先輩相手に試合形式練習で勝利を収めた幸村。

「見たか、あのテニススキル!そしてあのマスク!加えて彼女持ち!天は同じ奴に二物も三物も与えすぎなんだよ、ちっくしょー!」
「おまけに家は裕福で、成績優秀品行方正。私面と向かって話したことあるけど、あの子本当に突く隙がないのよねー。大人と話してるみたいな感覚だわ。」
「逆にお前、呆れられたりしたんじゃないのw本当に良い年した大人なんですか、みたいな。」
「・・・・・」
「え!嘘、マジか!」
「私、多分二度とあの子に逆らえない・・・」
「お前、大人の恥さらしじゃん・・・」

きゃあ恥ずかしい〜で済まない成り行きだった事を、小鳥遊は黙っておいた。
言えない、ガチで叱られて泣きそうになったなんて。

「幸村君って千百合ちゃんと付き合ってるんだっけ?」
「そうよー。ちゃんともう付き合ってるわよ、カップルよ〜。爆発すれば良いわよね〜。」
「なー。それなー。」
「僻みがひでえなあw」
「うるさい!じゃないよ、俺はそんな話をしたいんじゃないの!付き合ってるのが千百合ちゃんっていうのが意外って話をしたかったんだよ!」
「わかるわー。私も最初、穏やか属性繋がりで紫希ちゃんがタイプかと思ったもの。もしくは紀伊梨ちゃんで、手がかかるけど可愛いみたいな。」
「え、そう?俺は逆に千百合ちゃん一択かと思ったけど。」
「「なんで?」」
「いや何かさー、話聞いてたら結構あれでいて、はっきりした性格っぽいからさあ。嫌いなもの嫌いってバッサリ言える千百合ちゃんが好きなのかなーって。」
「あーね。」
「確かになー。優しいだけじゃない男感あるよな!うん!」

優しいだけの男だったら、あの気迫は出せないだろうと小鳥遊は思う。言わないけど。口で説明しろって言われても、多分面と向かって叱られた事のある人間にしかわからないだろうから。

「それにしても、今日はなんだか幸村君、すっきりしたような顔をしているわー。」
「え?そうなの?」
「ほら、思わない?こう、ずーっとやろうやろうと思って出来てなかった部屋の掃除がやっと出来た日みたいな・・・」
「幸村君は部屋の掃除サボったりしないんじゃないw」




「・・・何だあの大人達は。」
「先ほど確認してきた。あちらの引率の大人3人だ。」
「引率・・・ああ。」

妨害してくる誰かなら排除しようかと思っていた真田だが、柳の言葉で引っ込んだ。

「しかし、何故見に来るのだ?」
「聞いたところによると、3人ともテニスに親しみがあるらしい。特に見てどうというわけではないが、見てみたいという興味があるんだろう。」
「そういうものか?」
「そういうものだ。俺も他所の練習は、見られるものなら見ておきたいと思っているからな。」
「そうか。お前がそういうのなら。」

小鳥遊が混じっている事は言わない方が良いんだろうな。
と柳は思ったので、黙っておいた。

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