Training camp - in Irupinet Hotel -:Come out



「えーとお、紙コップとプラスプーンと、」

棗はコンビニまで走って、物資を調達していた。
さっさとしないとアイス班を待たせてしまう事になり、ひいてはフロートが食べられなくなる。いや、買い直しに行けば良いんだけどさ。

「あ、クラッカーあるwチェリーの代わりにこれ乗せてやろうか・・・ん?」

棗はグラサンの下で目を見開いた。
仁王だ。

(嘘だろ、テニス部って今公園で活動中だからここは絶対安全圏なんじゃ・・・っていうか、此奴はあれか、サボりかw)

確かによく考えてみれば、元々サボりの常習犯な上、暑さに弱いのに公園で練習とかしんどいのだろう。

まあもう話通ってるから良いような気もするが、誰かが連れ戻しにこないとも限らない。此処は知らないフリが賢明。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

仁王は棗を見ると、一瞬顔を上げたがまた元に戻った。
話しかけてくる気はないらしい。

助かる。
というか、幸村から懲りたようだと聞いていたけど、本当に懲りてるようだ。

「・・・・・」

ならこっちも、と思い無視してレジに行こうかと踵を返した瞬間。
ボス、とポケットを軽く叩かれた。

「・・・!」
「お客様?」
「!すんません、これとこれw」
「はい、198円が一点、」

手早く紙コップとプラスプーンと添える用のクラッカーを買って、やや小走りにコンビニを出る。早くしないと。
アイス溶けるし、テニス部周りに居たくないし。

「彼奴ポケットに何しやがったんだw」

ただの挨拶なわけはない、仁王に限って。
走りながらポケットに手を突っ込むと、細い棒状の物が手に当たる。
後丸い感触。これは。

「・・・ぶわっはっはっはっはw反省してやんのアイツw」

4本のチュッパチャップスがポケットに入れられていた。
アイスに刺して飾って、写真送ってやろうと思ったら何だか猶更おかしくて、棗は笑みを深くした。





「おおすごいすごい、形になってるよw」
「どうやって刺すんですか・・・?」
「持つ方刺したらべたつくから、飴が下じゃない?」
「こーして、こーして、あんまり埋めちゃうとキャンディ部分見えなくなっちゃうから・・・よし!」
「お前こういう事は真面目ねwよし、かんせーい!」
「「「「「イェーイ!」」」」」

紙コップに冷たいソーダを入れる。
その上にスプーンでさっと丸めたバニラアイスを乗せて、アイスにクラッカーとチュッパチャップスを飾り付ければ、即席のソーダフロートの完成である。

「いただきまーす!・・・っ、おいしー!冷たーい!あまーい!」
「良いね本格的ー!良いの、俺もおこぼれに預かっちゃって。」
「財布持ってるのそっちだし、良いんじゃないですか。」
「良いですよ、勿論です。あ!でも、小口さんの分のチュッパチャップス、」
「いや良いよ良いよそんなの!俺はおまけなんだから、皆で楽しんでよ!」
「小鳥遊さんは前取材ご一緒した時に、弁当のおかずねだってきましたけどw」
「ごめんマジで本当ごめん。二度とそんな恥ずかしい事しないように、よーーーく言い聞かせておくから。」

夏の晴れた日、木陰の下で風に吹かれつつ、ソーダフロートを突く一同。

スプーンを咥えつつ、唯一の大人である小口は、なんだかんだいい休日だったなあなんて思う。

「・・・成り行きで付き添いになった俺が聞くのもなんなんだけどさあ。」
「およ?」
「もうこれ食べたら帰るけど、皆合宿どうだった?有意義だった?やりたい事出来た・・・って、外出制限があったから、それはあれだっただろうけどーーー」

「うん!すーーーーっごく、楽しかったよ!」

ハッとするほど幸せそうな紀伊梨の笑顔に、小口は思わず言葉が詰まった。

「色々ありましたけど、本当に楽しかったですよね。最終的に、何事も起こらず過ごせましたし。」
「ちょっとバタバタはしたけど、それはそっちの責任じゃないしね。普通にいい感じで終わったから、それで良いんじゃない。」
「結果的にうちの親父より色々楽だったかも知らんねw」
「それな。マジでそれな。」
「まあまあ・・・」

「・・・・そっか。」

最初は軽い気持ちで引き受けてしまった引率だったけど、一日も一緒にいればわかった。
4人のバンドに対する真剣な気持。それと同じくらい大きな、テニス部を思う気持。

中学生の遊びの延長のような合宿に付き合うみたいな、言うなれば侮った気持ちで連れてきてしまったことを、小口は段々反省するようになってきていた。
最初からもっとちゃんと子供達と向き合っていれば、もっとしてやれた事があったかもしれない。もっとしっかりした人が自分の代理として引率してくれていたら、もっと得るものが増えていたかもしれない。

そう思っていたのが、ちょっとだけ楽になった気がする。

「・・・よし!帰りは折角だから、海沿いを通ろうか。そんな遠回りでもないし、ついでにねw」
「「「「やったー!」」」」


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