Large bet 1

「・・・・・」

柳生はステージの袖で思案していた。

何かおかしい。違和感を感じる。

(具体的にどう・・・と言いづらいのが悩ましい所ですね。)

紳士、柳生。
そう綽名される彼だが、別に思考が固いわけでは無い故に、自分の直感にはそれなりに信頼を置いていた。

(落ち着くのです、柳生比呂士。違和感を感じるという事は、小さいだけで違和感の種になる物が必ず有る筈。それを見つけなければ。)

大人用の間違い探しに似ている。
ザッとマクロに探して見つからなければ、ミクロに。
フレームを切り取り、微に入り細を穿ち探索しなければ。

この胸のざわめきの元を。

「・・・ん?」

柳生は2階作業用通路の、上手側に目をやった。

あのライト。
あれは確か、出さない筈ではなかっただろうか。
生徒会メンバーである2年の女子生徒が、せっせと熱心に配線しているが。

「・・・ふむ。」

この紳士は、実は思い立ったら行動は素早い。
しかし頭が良い故に失敗しない辺りは、棗と少し似ている。

舞台袖の奥に引っ込み、階段を上がり、通路を抜けてさっき見た位置に向かう。

(・・・おや?)

通路前の附室まで来た時だった。
まだライトの所まで辿りついていないが、さっき配線していた2年生が居た。
配線が終わったのだろうか。しかしそれはそれとして、様子がおかしい。

(あの目の動き・・・何かを気にしているような・・・)

何かか。
それとも誰か、なのかもしれないが。

「・・・瀬戸先輩。」
「あ。柳生君・・・」

どうかしたの。
そう言って力なく笑う瀬戸は、やはり元気がないように思う。

(・・・これは。)

「いえ。ただ、顔色が悪いようにお見受けしたものですから。」
「・・・そんな事ないよ?」

どう考えてもそんな事ある風である。

しかし、柳生は敢えて引いてみる事にした。

「・・・そうでしたか。では。」
「あ・・・・!」

呼びとめる瀬戸の声。
柳生は立ち止った。

「・・・なんですか?」
「あ・・・ううん!なんでもないの!それじゃ・・・」

パタパタと駆けて行く瀬戸。
その背を柳生は一先ず見送った。

「・・・これは調査が必要ですね。」

柳生の呟きを聞いた者は居なかった。


5/6


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]

1年1学期編Topへ
1年夏休み編Topへ


-