Overnight party 1



今日の夕食は、ちゃんと前回の反省を活かし、母親3人ががっつり料理に手を貸した。
なので量も品数も前回より(前回も十分ではあったけど)大分ボリュームアップしており、それに伴って今日はもう完全に立食制。
テーブルの周りに椅子を置かない。椅子は全部テーブルと逆側に寄せて、サイドテーブルを引っ張り出して、皆わちゃわちゃ動きながら食事する。
勿論これは、皆行儀が良いからこういう事をしてもめちゃめちゃになったりしないだろう、という家主の皐月の、一同への信頼である。その信頼が一番薄いのが我が子というのが、悲しいと言えば悲しいが。

「カレー食べよー!カレー♪カレー♪」
「ほう。そんなものまで用意があるのか。」
「あ、やなぎーも食べる?入れたげよっか!」
「いや、気持ちは有難いが自分でやる。」
「そお?」
「というより、これは用意するもんなんか。」
「えー?バイキングって言ったらカレーだよー!」
「それは飲食店での話じゃろ。」

個人のホームパーティーでカレーを寸胴鍋いっぱいに用意するって、それはするものなんだろうか。
まあ仁王も我ながら、ホームパーティーとこの場で一番縁遠い自分が心配することじゃないかもしれない、とは思うけど。

「余るんじゃないんか。」
「良いよ、余っても!っていうか、明日のお昼だよ!」
「ああ、成程な。明日の昼食が、もう此処にあるわけか。流石、効率が良いな。」
「こーりつ・・・?よくわかんないけど、おかーさんのアイディアですよ!V!あ、でもでもー。今日カレー食べた子は、明日もカレーになっちゃってごめんねっておかーさんが言ってたっけかなー。」
「いや、そんな贅沢は言わない。昼まで用意して貰って、有難いとしか言いようもない。」
「そお?あ、でもでも!紫希ぴょんが何か絶対アレンジしてくれるし、サラダとかも作ってくれるから飽きないよ!お腹も一杯になるかんね!安心してね!」
「自分でやらんのか。」
「お手伝いはしますー!っていうか、今日も頑張ったんだよ!紀伊梨ちゃん沢山やったよ!ほら、今2人が食べてるパスタとか!紀伊梨ちゃんが!和えました!」
「ほぼ仕上げじゃろ。」
「他にもやったもん!」

もー!と言って皿に付け合わせのらっきょうを沿える紀伊梨に、柳は小さく声を出して笑った。

「そうだな。」
「およ?」
「よく頑張ってくれた。パスタも美味い。有難う、礼を言おう。」
「おー!やったやったー!えへん!どういたしまして!」
「本当に言うんか。」
「やった事に対して成果が無いというのは、辛いものだ。」

紀伊梨は有難う、美味しい、のために頑張ったのだ。
やってる事のレベル差はあっても頑張ったのは頑張ったんだから、何も言わないのは失礼だと柳は思う。

し、それは正論だとは流石に仁王も思わないでもない。

「・・・・・・」
「にゃに?」

ポン。

と紀伊梨の右肩に手を置く仁王。

「じゃあの。」
「え、ちょっと待って!?何今の!?お礼!?有難う!?ねー、ちゃんと言ってよーーー」
「五十嵐。」
「何!」
「ポケットを見てみろ。」
「ポケ・・・ポケ?」
「右か左か内ポケットか・・・一番確率が高いのはフードの中だが。」
「フード?」

言いながら、着ていたイカゲーム柄のパーカーのフードを被ると、パラパラパラ、と何かが落ちてきた。
足下に広がる沢山のキャンディに、紀伊梨が機嫌を直すのはもう間もなくの事。



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