Overnight party 1
「・・・春日。」
「はい?」
「これはなんだ?」
「ええと、チリコンカンです。」
「これは・・・・」
「それはひよこ豆です。」
「そうか・・・」
「・・・ああ、ええと、ちょっと辛い感じの惣菜なので、苦手でしたら・・・」
「いや、出されたものは頂く主義だ。だが、何分初めて見る料理が多くてな。」
「真田君のところは、和食が多い感じなんですか?」
「そうだな。俺の口にも合うが、祖父が和食党でな。それに合わせて和食になる事が多い。」
「ああ・・・・」
チリコンカンは分類としては洋食に入るが、洋食でもハンバーグやカレーレベルの知名度とは言い難い。
各々好みがあるだろうからと、メニュー決めの時なるべく色んなのを作ろうと頑張ったが、その弊害がこういう所で出てきてるわけだ。
「すみません、次から説明のカードを置くようにしますので・・・」
「いや!そこまでして貰わなくとも良い・・・というより、これは俺の不勉強が原因だ。次からはもっと異国の料理を調べておいて、」
「お前らは何飯食いながら難しい話してんだよ?」
言いながら近づいてくる丸井の皿は、もうてんこ盛りのパンパン。
見るからに何か落ちそうなのに、絶対落とさないその姿勢は、もしかしたらその手のバラエティに出られるかもしれないレベル。
「いや、しかしだな。お前は料理に造詣が深いから分かるかもしれんが、俺はーーー」
「こういうのは、料理名が何かとか入ってるのが何かとか、分からないなら分からないで良いんだよ。分からないけど、美味いのはわかる!それで正解なの。お前より食い意地張ってる俺が言うんだから、間違いねえよ。」
「む・・・そういうものなのか。」
凄い、真田が説得されている。確かに、食いしん坊歴はこっちのが長いんだぞと丸井に言われたら、大抵の者が納得せざるを得ない。
「しかし、やはり名前くらいは覚えるべきではないか?何がしかの理由で呼びたい時など、名前が分からなければーーー」
「そんなもん、取り敢えず春日スペシャルその1とかで良いだろい。」
「え!?」
「それも弊害があるだろう。そもそも、誰がどれを主に担当したかなど分からんではないか。」
「え、嘘。大体わかるぜい。」
「ええええ!?」
そんな馬鹿な、それこそ名前が書いてあるわけじゃないのに。
嘘だよそんなの・・・な目で丸井を見ていると、丸井も疑われているのを察した。
「本当だって。信じろい。」
「・・・ならば試に、そのお前が持っている皿の上で春日が担当したものを当てろと言われれば分かるのか?」
「どれっつうか、9割そうだと思うけど?」
「え、」
「逆に違うのを数えた方が早いだろい。このフルーツポンチゼリーが五十嵐で、生ハムサラダ巻きとマーボー春雨が黒崎ーーー妹の黒崎で、カニクリームコロッケが兄の黒崎。こっちのラタトゥイユとかぼちゃサラダだけ具体的に誰かは分かんねえけど、誰かの母ちゃんじゃねえ?後全部春日。」
「・・・どうだ?」
「・・・正解、です・・・・」
驚異的である。
ソムリエってレベルじゃねえぞ。
「何故わかるのだ・・・俺は区別がつかんぞ。」
「だって、前も作ってもらっただろい?あれで大体わかんじゃん?」
「分からないと思います、普通は・・・」
「そう?」
「・・・味の区別とかそういう話ではなく、単純に春日の作る品数が多いという話ではないのか?」
「そうでもねえよ。大体全体の4割位じゃん?」
「え、」
「今日結構母ちゃん達手伝ってくれたんだな。前よりはちょっと楽出来たんじゃねえ?お疲れ!」
それも合ってるけど、最早何故合ってるのかわからない。
律儀な真田は考え込んでしまっており、分からん・・・なんて言いながら思案気に箸を進めている。
だから考えて食うなって言ってるのに、と思いながら丸井は小さく息を吐いた。
その丸井の皿を見て、紫希は段々恥ずかしくて居心地が悪くなってくる。
本当かと思って皿を確かめると、本当に乗ってる9割は自分が担当した品なので、恥ずかしくてならない。何か凄く緊張する。普通の顔して食べてるけど、ちゃんと美味しいと思われてるだろうか。
「あ、あの・・・」
「ん?」
「な、何か直すところがあれば仰って下さいね、次から直しますので・・・」
「へ?何が?あ、飯の話?なんで?別にどこも直す所ないだろい、美味いんだし。」
「な、なら良いんですけれど・・・」
「ああでも。」
「?」
「直すところっていうんじゃねえけど、お前の飯って不思議な味するよな。」
「え!?ど、どの辺がですか、」
「何か腹の減る味する。」
「どういう事ですか・・・・」
「食い終わったらおかわり欲しくなる感じ?さっきも食ったけどもうちょっと食べたい、みたいな。」
「????」
「ま、要するに美味いんだって。大丈夫大丈夫♪」
「そう?ですか・・・?」
まあでも。
言ってる意味はあまりよくわからないけど、現実に目の前の皿には山のように自分作の料理が乗っかっていて、丸井は美味しそうに食べ進めてくれているから。
だから良いかなと思って、紫希はやっと微笑んだ。
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