Overnight party 1
「ええと、お茶が・・・これか。」
「桑原君、私にも頂けますか。」
「ああ、良いぜ。」
「有難うございます。」
「私も頂戴。」
「おう・・・なあ、黒崎。」
「何。」
「さっきから偶に見えるけど・・・食べてなさすぎじゃないか?大丈夫か?」
別に殊更見よう見ようと頑張ってるわけではないのだが、それでも他人の皿が視界に入る事はまあままある事である。
その中でも千百合の皿は何かやたらに綺麗で、綺麗ということは使われてないという事で、それは引いてはさほど食べてないということになる。
「確かに。お互いお疲れでしょうに、あまり食べる気にならないので?」
「いや何か、それなりにお腹は空いてるんだけど。」
「けど?」
「何かこう・・・大量に作ってたら気分的に満足しちゃったっていうか、ああもう何か、食べるのは良いやみたいな。」
「そういうもんなのか・・・?」
「わからない感覚ですねえ。」
そもそも、桑原も柳生もそこまで大量の料理はした事ないのである。桑原だって店の手伝いはするけど、調理はさせて貰えないし。
「どうしたんだい、皆固まって。」
「ああ、幸村君。」
「いや、黒崎がな。あんまり食べてないみたいだから。」
「食欲失せた。」
「ああ・・・そうだね、千百合はそうだね。お疲れ様。俺達の為に有難う。」
「ん。」
「いつもこうなのですか?」
「うちの母さんもそうだけれど、こう・・・何と言うか、香りで胸やけするみたいな感じらしいんだ。料理って、作っている間中ずっと食べ物の香りを嗅いでる事になるからね。」
「そういうものですか。」
「でも、流石にもう少し食べないと。冷蔵庫に入れておいたらどうかな?もうしばらくすれば、食べる気分になると思うし。」
「あー、そうしよ。風呂上がりにでも食べる。」
「そこまで時間置くのか・・・」
「タイムラグが凄いですね。丸井君や五十嵐さんに取られないようにせねばなりませんが。」
「ふふ、大丈夫。言っておくから。」
じゃあ安心だな。と桑原も柳生も思った。
この神の子から言い含められてそれを無視する度胸は、あの2人にはあるまい・・・というか、誰であってもあるまい。
「じゃあ私、もう今の時間は安心してお茶でちびちびやっとこ。」
「ちびちびやる・・・」
「またお酒のような発言を。」
「あはは!付き合うよ、俺にもお茶をくれるかな。」
「え、いや良いよ。食べなよ。」
「だって、つまんないだろう?一人だと。」
こういう時に早く元のコンディションに戻るには、状況を変えるのが一番楽なのである。
お茶だけ持ってる状態になれば、千百合は多分30分程、庭にでも離席するだろう。その間、一人にするなんて出来ない。したくない。
「行こうか。」
「・・・・ん。」
「あ・・・そうだ。皆!」
幸村の声に、全員が談笑を辞めて振り向いた。
「今から、少しの間千百合と此処を離れるけれど、庭に行こうと思うから。何かあったら、そこに呼びに来て。間違っても二階には行かない方が良い。どうしても用事があるなら、千百合か春日か五十嵐か、もしくは俺に一声かけてからだよ。」
「ほう?それは何故ですか?」
「多分、二階でおばさん達3人が俺達の話でお茶会していると思うから。」
「「「「「「「「・・・・・」」」」」」」」
「何をどう話されて居るのか、聞きたいなら黙って上がれば良いけれど。嫌だろう?」
それは嫌である。
確かに親からすれば子供の異性を交えた友人関係の話なんて、お茶会の肴としては面白すぎて話題も尽きないであろうが、肴にされる方は堪ったもんじゃない。嫌だ、絶対嫌。知らぬが仏。
じゃあ行こうか、うん、と言って出ていく千百合や幸村は、もう気にしてない・・・というか慣れてしまったので左程気負いもないが、他のテニス部勢はとてもそんな気楽には思えない。
「え、逆に俺行って来ようかw敵城視察してこようかw」
「せんで良い。」
仁王さえも止める側に回る恐怖がそこにはある。
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