Encounter 1
さて、昼休み。

件の昼休みだが。

「そんなアホな・・・・」

力の抜ける紀伊梨を、数学教師は呆れた目で見ていた。

「あのな?先生だって、お前が憎くてこんな事を言ってるんじゃないんだぞ?ただな、人によっちゃあ10分あれば満点取れる宿題で、一晩やったのに0点取られた先生の身にもなってくれ。」

可哀想だが仕方がない。
1年生のこんな最初で躓いていては、今後の勉強なんてとても出来ないと教師に判断された紀伊梨は、敢え無く昼休み中の追加課題を命じられたのだった。

「ま、待って先生!今日は止めておくんなまし!許してくんろ!明日なら良いから!」
「はあ?」
「お願いだよう!明日ならお昼全部使って良いから!」
「なんか良く分からんが駄目だ。」
「そんな殺生なあああ!」
「5分あれば十分出来る課題だぞ!お前自分が出来ないって言ってる、問題の難易度を見てから文句を言え!」

はうっ、はうっ、と変な鳴き声を上げる紀伊梨に、何人かのクラスメイトが手伝ってやらないとな、と親切な事を思った。

が。

「・・・言っておくが、クラスの奴らに手伝って貰うんじゃないぞ。」
「えええええ!?」
「当たり前だろ!自力でやれ自力で!教科書を見ても構わんから!」

「あーあ・・・」

怒鳴られる紀伊梨を見て、丸井は溜息を吐いた。
見てやろうかと思っていたが、あれは駄目だ。

それに。

「あうう・・・」
「なあ、五十嵐。」
「うえ?ブンブン?」
「どうなんだ?ライブ。」

紀伊梨はギターボーカルだと聞いている。
演奏するにあたってその役が抜けるとなると何も出来ないだろう、と思っての問いだったが。

「ライブかー・・・ライブはねー・・・」

一方の紀伊梨は暫し逡巡した。


実は、今日の演奏は紀伊梨が居なくても成り立つ。


だから見せる分には何も問題は無いのだ。
ただ、紀伊梨がいなければ、自分だってバンドの事は覚えられるのだという証明の方が出来ないだけで。

そして何より、紫希は今日丸井が来ると思ってレモンパイを持って来ている。
それなのに、それを自分が行けないからと言って丸井も寄越さないなんて、そんな事は出来ない。

「・・・ライブは!やる!」
「はあ?出来んのかよ?」
「出来るよっ!やるもん!先に行ってて!見てなよー、すーぐ追いついてやるんだかんね!」
「はあ・・・」

どうもイマイチ色々信用ならないのだが、本人が行けと言うのならしょうがない。
丸井は購買で買っておいたおにぎりを持って、第3音楽室へと向かうのだった。



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