Solicitation:4th game 3

「さて、では本題です。暗号の謎解きといきましょう。」
「もーわかったのー?」
「五十嵐さん、こういう物は最初から全てが分かるものではないのです。これに従って順を追って行くのが肝要・・・もとい、大切なのですよ。」
「へー!」

「柳生って良い奴だよな。」
「ああ・・・なんか申し訳ないけどな。」
「国語の勉強をもう少しさせるべきかもしれないな。」
「それって定期テストとかと別で、って事?」
「完全に別枠でだ。そうでなくても彼奴は話の途中で、単語が分からないと言い出す時が見受けられるからな。」
「確かに、言っちゃなんだが話の腰は時々折るな。」
「ま、それはそれで五十嵐らしい気もするけど。」

「ねー!皆何の話してんのー?あんごーだよあんごー!ヒント目指して出発だよ!」

「「「お前の話だ。」」」



「で?最初はなんだっけか。」
「えーとねー、かずた?かずたのしるしの中?」
「あまた、だ。」
「へえ。これは俺も初めて知ったな。」
「本当!?やったー!桑ちゃんも仲間だね!」
「お前とジャッカルは流石に一緒に出来ねえだろい。」
「流石にってなんですか!?」
「まあそれはさておき、これは読んで字の如く数が多い、という意味です。」
「あ!ひょっとしてあれじゃなーい?」

紀伊梨はそれを聞くや、ソファにかかっているカバーを指差した。
桑原と千百合が調べた、あのトランプのマーク柄の刺繍カバーである。

「ほらほらー!沢山印がありますよっ!しるしってマークだよね?」
「おお、成程!これが・・・」

「いえ。それはダミーです。」

「「え?」」

これじゃん!と言わんばかりに飛びついた紀伊梨と丸井だったが、あっさり柳生にハズレ宣言をされてしまった。

「違うのか?」
「ダミー、という事は、そのカバーはそれが正解だと思わせる為の誘導。そういう事だな?」
「ええ。正解は別の所です。」
「えー!なんでなんで、印じゃないのー!?」
「五十嵐さんのその発想は正解です。この文脈・・・文章でしるし、と言われると「印」と書きたくなるでしょう。しかしそこが引っかけのポイントです。」
「ここのカードには、「しるし」と書かれている。成程、敢えて平仮名で書いてあるという事はつまり、「印」という意味ではないからである確率が高いな。」
「えー?でも他にそう読む漢字なんてあるー?」
「しるし・・・しるしか。しるし?」
「桑原君には、若干難しいかもしれませんね。」
「ねーやーぎゅ?紀伊梨ちゃんも難しいんですけど?」
「お前は生まれてから今迄日本にずっと居たのだから、難しいのがおかしい。」
「なんでさー!」
「しるしねえ・・・「標」とか?」
「丸井君は逆に難しく考え過ぎです。もっと単純ですよ。あるでしょう?「しるし」。」
「・・・あ!名詞じゃねえのか!「記し」?」
「御明察です。」
「よっしゃあ!」

数多の「記し」、となるともう該当箇所は1箇所しかない。丸井が紫希と調べた、あの本棚だ。

「???よく分かんない、しるし?しるし?これって日記の「記」の字じゃないの?」
「物を書きとめる事を「記す」と言う。聞いた事は無いか?」
「うーん、すっごーく昔に紫希ぴょんに教えて貰った事があるようなないような?」

(五十嵐は良く立海に入れたな、本当に・・・)

別にもう入ってしまったのだから良いのだが、此処まで勉強的に難があると友人故にひやひやしてしまう。

「まあ兎に角!本棚なんだよねっ!で?どこすか?結構大きいよ?」
「確かにでかいな・・・」
「ヒントの続きが?えーと、太陽に幾度も巡り会った、楓の色に?」
「柳生の言う通り、順に行こう。先ず、太陽に幾度も巡り会った。これは日に照らされる位置にある、という事だ。」
「その通りです。従って、今、日焼けしている部分・・・その辺りの段や、この辺りが怪しいという事になりますね。」
「ほうほう!そんで?楓の色・・・楓ってなんだっけ?」
「楓は木だ。木の一種だ。」
「でもこの棚が木で出来てるからな。木の色って言われても、ほぼ全部木の色だろい。」

まさかここにある、本棚のみならず木で出来ている小物類の中から楓で出来て居る物を探せとか言うのだろうか。
そんな馬鹿な。

「やーぎゅは分かってるの?」
「ええ、恐らくですが。五十嵐さん、楓とはどんな木かご存知ですか?」
「?知らなーい!」
「こういった葉をつけるのです。見覚えがあるのでは?」

そう言って、柳生が柳のノートの片隅にさらさらっと書いたそれは。

「あー!」
「おお!知ってるぜ!」
「ああ!これはあれだろ、カナダの国k「「メイプルシロップ!」」
「・・・・・・」
「まあ、どちらも正解と言えば正解だ。」

此処まで来るといっそ歪みなくて清々しい。

「先ず、桑原の言う通りこれはカナダの国旗に描かれている葉だ。」
「国旗?ああ、そういえばそうだっけ。」
「えー?メイプルじゃないのー?」
「楓を英語でメイプル、と言います。同じものです。」
「へえ。ん?じゃ、メイプルシロップってつまり?」
「樹液の事だが、それは今はおいておこう。この場合着目すべきは色。つまり桑原が最初言った通り、カナダ国旗を連想させる色となると、ベースは白だが使用されているのはあと一色。」
「即ち、赤です。そしてそれに愛しい時、という単語を重ねると・・・」

全員の視線が次第に一カ所に集まる。
本棚のかなり上の段。
其処の真ん中にある、赤く塗られた木枠の写真立てである。

「おお!あれの、えーとどこ?」
「背を向けて・・・つまり、あれの後ろに何かがあるのだろうな。」
「ええ。しかし手が届きませんね。」
「なーに、棚に上って取って来るって。ジャッカルが。」
「俺かよ!ったく・・・」
「いえ、それは止めましょう。」

上ろうとした桑原を柳生は制した。

「およ?駄目なの?」
「この本棚は古い。まして棚板1枚1枚の強度となると、かなり危うい。中学生とはいえ、人1人乗った時に果たして問題ないかと言われると、言い切れない。」
「壊れちゃうかもって事?」
「その確率は46.788%だ。」
「おー!桑ちゃんの旦那、危ないなら止めときましょーぜ!」

46%と言うと、半分とはいかなくても半分近く。
2回に1回は上ったら壊れるなんて、それはちょっと危なっかし過ぎる。

「でも、じゃあどうするんだ?」
「そうですねえ・・・ここはやはり、GMの意向を尊重せざるを得ないでしょうね。」
「?」
「つまり、テニスです。」

本棚の上にある写真立て。
その後ろ目がけてボールを通過させろと。

無茶を。

と。
普通は言うのだろう。

「で、どなたか出来そうな方は?」

「えー、皆出来るよー!だって皆、立海テニス部だもんっ!ね!」

屈託なく笑う紀伊梨に、テニス部の3人は苦笑しか出来ない。

「お前偶にキツイとこ突いてくるな。」
「え!?何が!?」
「お?なんだよジャッカル、自信ない感じ?」
「そういう意味じゃねえよ。」
「ええ。非常に良いハードルの上げ具合ですよ五十嵐さん。」
「おお、褒められた!って、あれ?私ハードルなんて上げた?」
「いいや、そんな事はない。これくらい、上げるどころかハードルの内にも入らないだろう。」

そう言って柳は構える。

「丸井、桑原。此処は譲って貰えるか。」
「ああ、勿論。」
「ま、しょうがねえだろい。」
「助かる。」

別に、である。
別に失敗したからといって、ペナルティがあるとかそんな事はない。

そんな事は無いけど、この流れで出来ないなんて、そんなの立海テニス部の名折れではないか。

勧誘する側としてそんな失態を犯すわけにはいかない。
絶対成功させてやる。見てろ。

「柳君も存外負けず嫌いですね?」
「うにゅ?負けず嫌いなのはやーぎゅもじゃない?」
「これは手厳しい。」
「良いんじゃねえ?」
「ああ。負けず嫌いな位じゃないと。」

そうじゃないと、立海テニス部でレギュラーなんて狙えない。

「・・・ハッ!」

ボールは吸い込まれるように写真立ての方へ。
そしてその裏へ。

ボン!と何かを弾き飛ばして、通過して落ちて来た。

「おおー!やったー!」
「お見事です。流石柳君。」
「いや、何。大した事じゃない。」
「で?それはお次のヒントなのか?」
「ブロックだよー!」
「ブロックねえ。なんか書いたりとかしてねえの?」
「えーとね、えー・・・あ!」

紀伊梨がくるくると回して現れた1面。
其処には紙が貼ってある。

「「「「「IRR?」」」」」


3/8


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]

1年1学期編Topへ
1年夏休み編Topへ


-