Solicitation:4th game 5
(あ、柳生)
千百合が当てどもなく探索していると、前方に柳生の姿が見えた。
「・・・・・」
「ふむ・・・おや、黒崎さん。どうかしましたか?私の顔に何か?」
「いや、何かすごく楽しそうと思って。」
まるで鼻歌でも歌いだしそうな勢いである。
別に顔が笑ってるとかテンション高いとかじゃなくて、空気感的に。
「そう見えますか。お恥ずかしい。」
「良い事でもあった?」
「良い事と言うよりも、こういうゲームが。」
「?」
「好みなんです。暗号だの、謎解きだのの類に目が無くて。」
「わあ。」
超納得、の意を込めて千百合は声を上げた。
凄く似合う。
「あんた、パズルとかも好きそう。」
「御明察です。知恵の輪なども良くやりますね。」
「良く出来るわね、兄貴と言いあんたと言い。」
「ああ、そうですね。黒崎君もパズルなどはお好きだと仰っていました。」
「・・・柳生ってさ。」
「はい?」
「何時の間に兄貴と会ってたの?」
これまでの会話の端々から、柳生はある程度棗の事を知っている事が伺える。
歓迎会の日に皆で集まったが、あれ以降もこの2人はちょくちょく会っているに違いなかった。
「多くは朝ですね。」
「朝ねえ。」
「ええ。私が良く1人生徒会室で放課後の準備をしているのを、黒崎君はご存じのようでした。彼は仁王君とは全く別ベクトルで、良く気の付く人です。」
「気が付くっていうのかしら、あれ。」
「まあ目ざといとも言いますね。」
はっきり言う。
こういうバサッとした物言いが不思議と嫌味にならないのも、柳生の魅力である。
「黒崎君と話しているとつくづく感じる事ですが、彼に対しては実に隠し事がし辛い。非常に察しの良い人です。」
「ああ、居るよねそういう奴。でもあんた、分かってて友達やってるんだ。嫌じゃない?」
「嫌?と言いますと?」
「何かほら、鬱陶しいと思う時無い?なんでもかんでも人の事知ったような顔してすかしちゃってさ、いちいち訳知り顔みたいな。」
上から目線とか偉そうとかいうのとは少し違う。
ただ、棗みたいな人種と話していると、俯瞰で物を見ていると言う手応えを感じる。
自分と同じ視線で物を見ないその感じが、頼りになる時もあるけど同じくらい嫌な時もある。
あの見透かされて居る感。
そう言うと、柳生はキョトンとした後。
「・・・プッ!ふ、ふふふふふ・・・!す、すみません失敬を。」
「・・・何笑ってんのよ。」
「いえ、申し訳ありません。しかし私にそう言う割に、ご自分はどうなのかと思いまして。」
「言っておくけど、私兄貴じゃなかったらあんなのと付き合わないわよ。」
千百合はそれははっきり言った。
「うざいったらありゃあしない。とっつき易そうなくせして隙は無いわ、人の事はすぐ掴む癖に自分の事は話さないわ、こっちが触れて欲しくない事に限って直ぐ言い当ててきやがって・・・なんなのよあんた!」
「フッ、フフフフ・・・・!」
堪えきれないと言った様子で笑う柳生。
何なんだよ。そんな変な事言ってないだろ。
「いや、失礼を・・・確かに、一般的にそう言う人は好感が持ち辛いでしょうね。特に女性の方や、ご家族の方は。しかし反面、楽な事もあるのでは?」
「楽?」
「言わなくても分かってくれる。察してくれる。それが有難いと思う時も、人間にはあると思いますよ。」
こう言っているが、千百合のような突っ張りがちな性格だとそれは尚更だろうと思う。
話がし易い雰囲気とか、真面目に相談に取合ってくれる性格とかも重要だが、同じ位いちいち言わなくてもサッと助けてくれるとか、なんでもないフリしてくれるとか、そういう事も大事な筈だ。
「まあ、それを差し引いても黒崎君は黒崎さんや他の皆さんに対して、少々一方的には見えます。」
「でしょ?」
「同じような性格でも、時折黒崎さんには隙を見せてくれたりご自分の事も打ち明けてくれたり、触れて欲しくない事はゆっくり見守って下さるような、そんな方も居ますしね。黒崎さんとしては、見習って欲しい所でしょうか。」
「誰よ、そのパーフェクト超人。」
そんな都合の良い奴居るかよ、と訝る千百合に、柳生は又少し笑って、ついと後方を指差した。
そっちには紫希と話している幸村が居て、千百合は傍らの植木鉢を投げつけないよう、必死で耐えたのだった。
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