Solicitation:4th game 8

『Bチーム、の打球ではありません。解答は、』

「外はどうなってるんでしょう・・・」
「な。幾らなんでも外し過ぎじゃねえ?」

紫希と丸井は相変わらずパズルを解き続けていた。
だが不思議な事に、さっきから両チームの誤爆のアナウンスしか聞こえてこない。
此処まで来ると何か狙いがあるのかなとは思うが、何分あまりこの植物の囲いの外を見られないので、何が起こっているのかはさっぱりなのだ。

「でも、此処まで外されると何か休憩したくなってくるよな。正解しても外されるばっかりだし。」
「う、ううん・・・でもやっぱり、勝つには解くしかない以上、私達は解かなくてはいけないのでは・・・」
「まあな・・・って、うわ。配置面倒くせえ!」
「ふふ・・・」


「丸井君?聞こえますか?」


「あ、今度は・・・」
「柳生だな。おう!聞こえてるぜ!」


「そうですか。実は作戦として、お願いしたい事があるのですが。」


「俺に?」

お願いとか言うが、この状況でお願いされても自分の出来る事なんてごくごく限られている。
一体何をしろと。


「ええ、現在ターンはBチームです。後もう1、2回はターン回しが続くでしょう。」


「おう。」


「次にAチームのターンが回ってきて、それが返り又Bチームのターン。其処で我々は勝負を仕掛けますので・・・」


「ので?」


「春日さんのパズル解答を止めて下さい。」


「・・・え。」

パズル解答を止める。
つまりどうにかして、紫希のタブレットを触る手をストップさせるという事だ。

「え、え、ええええ!?」
「おい!そんな事言ってもどうやって、」


「方法は丸井君に全面的にお任せします。好きな方法で構いませんので。」


「は・・・」

それって。
それってさあ。
好きな方法で良いとか言うと、聞こえは良いけどさ。


「では、お願いします。」


「あっ、おい!ちょっ・・・あーあ、行っちまった。」

要は丸投げである。
何でも良いから、何とかしろと言ってるわけだ。

そんな無茶苦茶な、と言いたいけれど、どうやらラストスパートが近いのだろう。

「・・・・・・!」

サッ!とタブレットを後ろに隠す紫希。

「ぷっ!心配すんなよ、壊したりしねえって。」
「ほ・・・本当ですか?」
「まあ確かに話が早いのはそれだけど、実際やるわけにいかねえだろい。ルール違反だろうしな。」

ルールのギリギリを責めるというのはずっとやってきた事だが、流石にこれはギリギリどころか確実にアウトであろう事は想像がつく。
だが、出来ればそうしたいと言うのもまあ本音ではあった。
何せ、デバイスに手を出せないなら紫希の方をどうにかするしかないのだからして。

「ってわけだから。頼むからちょっとそれどっか置いといてくれってのは?」
「だ、駄目です・・・!」
「だよなあ。」

敵の言う事を大人しく聞いてくれるわけもなし。

(でも、だからってどうしろってんだよ)

そもしも、紫希のような大人しいタイプに言う事を聞かせるには、高圧的に出るのが一番早いのだ。
ガーッと怒鳴って威圧して、震え上がらせて怯えさせる事。

無理。そういうのとても苦手。

(何かで気を逸らすとか、集中力を削るとか?延々話しかけ続けるとか・・・駄目だな、春日の方も俺が何かしてくるって分かってるしな)

『Bチーム、不正解、です。解答権は、』

「やべ!」

ターンが回った。
次に再度Bチームにターンが回った時が肝。

ぐずぐずしていられない、とちょっと焦った所で、丸井ははたと気づいた。

次に。
Bチームのターンが回ってきた時に勝負を仕掛ける。

なら、逆に言うとその後の事は別に考えなくても良いじゃん。

「よし。春日?」
「わ、私、なんて言われてもパズルは解きますから、ねーーーー」

丸井は、例えばタブレットを取り上げるなどの荒い手段は使うまい。
どっちかというと、言葉で翻弄にかかってくるだろう。

だからどんな事を言われても、聞かざるの姿勢で無視しなければ!と紫希は心の準備をしていた。

のに。

「・・・・あの。」
「ん?」
「あの、え?あの、あの・・・」

紫希のタブレットを持っている両手。


は、今丸井の両手にぎゅっと包まれている。


「あの、これは・・・」
「動かせねえだろい?」

確かに動かせない。動かせないけれど。

「ち、力づくですか・・・!?」
「んな事言ったって他に考えつかねえんだよ。お前、口で丸め込めるタイプでもねえじゃん?止めようとしてんのはバレてるし。」
「う・・・」
「なら後はもう、これが早いし確実だし。」

(そうかも、です、けど、)

でもそれって要は、時間が来るまでこうして大人しく手を握られていろという事。

(丸井君、恥ずかしくないんでしょうか・・・)

例え他意が無くたって、紫希は男子に手を握られるのは恥ずかしい。
気心知り尽くしている棗や幸村が相手であっても、同じ状況になったらなんとなく落ち着かないし緊張する。況や最近友達になったばかりの丸井をや。

動揺する紫希だが、当の本人の丸井はケロッとした顔をしている。それが又余計にそわそわする。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・くっ、」
「・・・・・・」
「く、くっ・・・あの、離し」
「ダーメ。」

力には力。
頑張って無理矢理手を動かそうとするも、あっさり抑え込まれる。
土台の力が違うから当たり前なのだが。

(パズルは触らないから離して、って言っても信じないですよね普通・・・うう、本当にこの状態のまま待つしかないんですか・・・!)

色んな意味で助けて、と内心で叫ぶ紫希。

紫希がちょっと優しい性格過ぎたのがこの場合敗因かもしれない。
少し悪知恵の働く性格だったら、SOSを大声で叫んで丸井を跳ね除ける事も出来ただろう。

それを思いつかない紫希と、任務の遂行以上の事は特に何も考えてない丸井は、暫くはこのままで居るしかないのだった。


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