Solicitation:4th game 9
この洋館には、地下は一室しかない。
地下故に窓が無く、昼尚暗いこのワインセラーは、外の暑さが嘘のようにひんやりと静まり返っている。

「此処か、件の地下の酒蔵は。」
「ああ、この洋館に地下は此処だけの筈じゃ。100%とは言わんが、多分此処が正解ーーー」
「いや、多分じゃなく此処が正解だよ。ほら。」

幸村が指差した方。
入り口には、人数分の懐中電灯と張り紙がある。

「こんなもんまであんのね。」
「でも、ライトがあるという事はやっぱり暗いんですよね。紀伊梨ちゃん、大丈夫でしょうか・・・」
「ラッキーじゃ。暗いのに弱い奴が居るなら、その分こっちが有利じゃからな。」
「あんたは本当に、相手の弱点突くのに抵抗無いわね。」
「プリッ。」

各々がカチカチと点灯させ接触を試す傍、幸村と仁王は張り紙にも目を通し始めている。

「ふふふっ。」
「・・・・・・」
「幸村、どうした?」
「いや、この貼ってある注意書きの紙がね。面白くて。」



内部の迷路を抜け、次のヒントを手にせよ。
ただし、以下の不正が認められた場合は失格とする

・壁に手をついて歩かない事
・壁を壊さない事
・壁に登ったり、乗り越えたりしない事
・暗闇に乗じて他のプレイヤーを襲わない事



「言われちゃったね、仁王。」
「先手を打たれたか、流石じゃの。」
「今回も携帯使っちゃ駄目なの?怠くない?」
「使用を許可するとは書いていない。書いていない以上、不可という事だろう。」
「はぐれたら、合流は難しいですね。なるべく固まって行動しませんと・・・」

第4ゲームは、ゲーム開始の時点で携帯を取り上げられている。
基本チームはバラけないで行動するし、もしバラバラになっても携帯を戻しては貰えない。

それはこのワインセラーと言う真っ暗空間でも然り。
故に逸れたら合流は難しいというか、ほぼ無理と思っても良い。
なんせ暗く不慣れな所で、しかも携帯の使用不可となると、助けを呼ぶ事すらもままならない。
どうやって呼べば良いのかも分からないし、呼ばれた方も迷路故に現場迄どうやって行けば良いのか分からない。

其処だ。

「・・・待て。」

仁王はニッと笑う。







「嫌だよ!嫌だよ!暗いのとか絶対やだよー!」
「分かったから、もう少し落ち着け。」

右手にライト、左手で柳にしっかとしがみつく紀伊梨は、張り紙を見ただけでもう半べそ状態である。

現在、Bチームはワインセラー前。
もう既にAチームは中に入っており、ライトももう5本しか無い。

「で?どうすんだ、柳生?」
「そうですね、先ずバラけるとすると・・・」
「待て、バラけるのか?逸れるとまずいんじゃないのか?」
「其処が狙い目です桑原君。このゲームは確かに逸れると合流は簡単に出来ませんが、バラける理由がちゃんとあるのです。デメリットとメリットのバランスの考察が必要な程度には。」
「バラけるメリットなんか、」
「「あるのか?」と丸井、お前は言うが、迷路の中にある宝を目指す。この迷路というのが肝だ。一本道で無く、何処にあるか分からない以上、各々が別々に行動した方が、ゴールの在り処が早く突き止められる確率100%。」

暗闇であっても、敢えてローラー作戦にうって出る。その価値はある、という事だ。

「無論、離れる事にはデメリットもある。だからこそ熟考が必要だが・・・」
「止めようよー!皆一緒に居ようよー!」

今の紀伊梨は、まるでホラー映画の役者に突っ込む観客さながらである。
馬鹿!どうして其処で別れるのよ!危ないに決まってるじゃない!固まって行動なさいよ!

「俺が居てやる。離れる事になったとしてもそれで我慢しろ。」
「ううう・・・絶対だよ!絶対だよ!絶対、絶対、絶対だかんね!約束だよ!破ったら絶交だよ!」
「いえ。残念ながら五十嵐さんには働いて頂きます。」
「なんでー!?」

これには柳も少々不意をつかれた。

「柳生。働いて貰うとお前は言うが、どうするつもりだ?これ程怯えていては、五十嵐に出来る事などーーー」
「それが、あるんです。お任せください。」

柳生も又、笑った。



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