Meeting 1
紀伊梨は珍しく考え込んでいた。
考えようと努めたのではなくて、思考が自然とそちらへ流れたのだ。
「ちょっと紀伊梨。どうしたのよ。」
「・・・あのねー。こないだの事なんだけどー。」
「「「「?」」」」
「私、告白されちゃってー。あれ?告白じゃないのかなあれは?」
「えええええっ!?」
「い、いつですか!?」
「マジかよw」
「いやまあ、いつかそんな事にあるでしょ此奴は。顔は良いし。顔は。」
「もー!顔は顔はって言わないでよー!」
「まあまあ、紀伊梨ちゃんは、中身も可愛いですよ?素敵です。」
「あーん、紫希ぴょーん!」
「待てw後にしろ、話の続きw」
「は!そーだ、それでね?うーんなんていうのかな、クラスの子が「五十嵐さんが好きなんだー」って言ってたのを偶々紀伊梨ちゃんが聞いちゃったんだけどー。」
「ああ、そういう事。」
「確かに、告白かって言われると微妙いなw」
(紀伊梨ちゃん、やっぱり凄い・・・!)
自慢じゃないが、可憐は今まで生きてきてそんな状況になれた試しがない。
し、これから先なる事あるかと言われると、それも自信が無い。
いや、世の中の女子でこんな風になれる人が何人いるかは分からないけれど。
「それでねー、紀伊梨ちゃんその時社会準備室に居てー。その外でその子とゆっきーがお話してたんですよ。」
「幸村君、ですか?」
「うん。何か、幼馴染でしょ、きょーりょくしてよー、とか言って。」
「ああ、そっちかw」
「え?あれ、幸村君って確か、千百合ちゃんの・・・」
「ええ。そうなんですけれど、幸村君と紀伊梨ちゃんは幼稚園からの幼馴染なので。友達としてのお付き合いが、私たちよりちょっと長いんです。」
「あっ、そういう事だねっ!」
「・・・・・・・」
そうだね。
そりゃそうだよね。当然の思考回路だよ。
でもその当然の思考回路が、足の裏に米粒貼り付けたまま歩いてるみたいな感覚を千百合に植えつけたりもする。
「でもゆっきーがごめん出来ないって言ってね?そしたらその子、じゃあ良いやってなっちゃってー。」
「諦め早えw」
「ゆ、幸村君の協力ありきで話をなさってたんですか・・・?」
「うーん、ちゃんと言うとー!ゆっきー、お手伝い出来ない、っていうのと、多分紀伊梨ちゃんは断るだろうし、みたいな事もセットで言っちゃったんだよねー!多分、それでだめだーってなっちゃったんだと思うんだけどー。」
「あ、脈無し宣言もされちゃったんだ・・・」
「・・・ま、ある意味では親切でしょ。実際脈は無いわけじゃん。」
こうして、感情を然程交えず「こんな事があったんだー!」という態度がとれているのが、脈の無い何よりの証拠である。
流石と言うか、付き合いが長いだけ紀伊梨の事は良く分かっていると言えよう。
「そいでさ、そいでさ!さっきの千百合っちの話からいくと、その子は紀伊梨ちゃんの事好きじゃなかった、って事になるよね?好きなら引っ込まないって事は、そうなんっしょ?」
「そりゃそうじゃないの。」
「だからそれは極端だろってばw」
「ううん・・・ただ、それはそれとして、その諦めた人と言うのは、ちょっと・・・」
「好き・・・ってほどでもなかった、のかな?って感じだよねっ!棗君が言ったみたいに、諦め早すぎって言うか。」
幾らなんでも、好きならもうちょっと食い下がれよと皆思うが、あの時幸村も同じことを思っていた。
だから今回のこれに限ってはまあ、お察しだったのだろう。
「ただやっぱり、棗君が言ったみたく、諦めないといけない時もあるよねっ?」
「となると、諦める理由の話になるでしょうか?周りの状況ではなくて、ただ自分の心情に寄って諦める場合は、そんなに強く好きだと思っているわけではない、という事で・・・」
「まあなー、状況が許すかっていうのはでかいよなやっぱり。」
「可憐たんの友達はー?」
「えっ?」
「その辺どうなの?心情的にと、状況的に。」
状況的に、許すか。
心情的に、引っ込むか。
そりゃあ。
「・・・状況的には、オッケーかなっ。皆も、2人が良く一緒に居るのは知ってるし。心情的にも、うん・・・そんな簡単に誰かの事「好き」って言うタイプじゃないから。それなりに、覚悟あって言ってくれたんだと思うっ。」
「申し分ありませんね。」
うん。
そうだね。
申し分ないね。
いや、うん。良い事だよ。
良い事なんだよ。
(・・・なんなんだろう、私さっきから・・・)
いけない。
何かどうも、ボーっとしてる。
こんなんじゃ駄目だ、折角皆自分の為にこうして相談に乗ってくれてるのに。
「んー!じゃあやっぱり、紀伊梨ちゃんの事はそんなに好きくなかったのかー。」
「でも、程度に差があるだけで紀伊梨ちゃんの事嫌いなわけではありませんでしたよ・・・ただ、少し勢いが足りなかったというか、」
「えー、勢いどころか何もかも足りてなくない?根性が無い、根性が。」
「そーいえばゆっきーも似たような事言ってたなー!」
「似たような事っ?」
「うん!根性とは言ってなかったけどー、ゆっきーに向かって怯まないで、五十嵐は俺のだ!って言えるくらいの人じゃないと嫌かなー、みたいなこと言ってた!」
「高いわハードルの要求がw」
「あ、でもちょっと分かるよっ!やっぱり大事な友達だから、お付き合いする人はちゃんとした人が良いなって思うよねっ!」
(そーね、そーよね。)
その気持ちは千百合でも分かる。
千百合だって同じ事思うもん。
例えばもし、紀伊梨がその引っ込んだ奴の事を好きとか言い出したりしたら、紀伊梨が好きならしょうがないけどという気持ちはありつつ、そんな根性なし止めてくれと思う気持ちもある。
多分紫希も可憐も、皆そう思うだろう。大事な友達だから当たり前の話だ。
そう。
だからちょっと気になるのは、気にする方がおかしいのだ。
幸村に他意なんてない。
知ってる。
知ってるさ。
「っていうか、お前も別にそんな好きくはなかったんでしょwなら良いじゃんw」
「うーん、そーなんだけどー。でもなんかこう、我儘だけど一回くらいはさあ!男の子からマジもマジマジ、超マジな告白ってやつをされてみたいよねー!」
「あ、分かる分かるっ!憧れだよね、女の子としてっ!」
ああ、良いなー・・・な顔になる女性陣。
その中で、一応「言う側」になる棗は若干の苦笑。
「俺だって一応女の子からマジ告白されてみたい願望あるんですけどー。」
「え?でも振っちゃったんっしょー?」
「いや、言っちゃなんだけどあれは別にそんな本気っぽくはなかったというかさ。」
「っていうか甘えんなよ。言えよ、普段人に偉そうな事言っておいて。」
「まあまあ・・・男子でも、勇気は要りますよ。」
「そうだよねっ。告白って怖いもんねっ。」
告白と言うのは、老若男女問わない一大事。
時代を越えて皆悩んでいるだけの事はあるのだ。
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