Camp school:Cowardly spirit 2


「がるるるるる・・・」
「そんな警戒せんでもw」
「噛みついてきそうじゃの。」
「五十嵐。シャツが伸びる。掴んでいて良いから引っ張るのは止めろ。」

図らずも今回皆の期待を背負う事になったCグループは、山に程近いエリアの町を練り歩いていた。
とはいっても紀伊梨はさっきから探索そっちのけで、棗と仁王に気を取られっぱなしだが。

「柳も苦労すんねw」
「させてるのは誰だ?」
「プリッ。」
「なっちんもニオニオも、怖い事言うのは禁止だかんね!するのも禁止!見せるのも禁止!」
「他になんぞあるか?」
「触らせんのどうかなw」
「いやーーー!」
「五十嵐、緩めてくれ。痛む。お前達もその辺にしておけ、移動もままならなくなるぞ。」
「ピヨ。」
「めんごめんごw」
「うー・・・」

めんごめんごとか言ってるが、ここで信用してはいけない事は流石の紀伊梨でもわかる。
というか、ただでさえ今居る場所は怖いのだ。
黒々とそびえたつ山が近いし、町中ではあるが中心部ではない為閉まってる店の方が多い。
外灯は点いているが出歩いている人は少ない。どっちも嫌だけど、どちらかというと暗い事より無人の方が堪える紀伊梨にはあまり有難くない状況。

「まあ俺達はそんなガツガツうろつかなくても良い様な気もするけどw」
「まあ、引き寄せスキルの持ち主様が居るからのう。」
「うーん、精霊さんが来てくれるのは良いけどー・・・はっ!良い事考えたー!


逆にだよ!逆に、精霊さんと友達になって味方になって貰えば良いんだよ!そんで、怖いのから守って貰うの!」


それは。
その発言は。

「ね!良い考えーーむっ!」

ぱしん。と軽い音がして、柳の左手が紀伊梨の口を塞ぐ。

「なんじゃ、どうした。」
「あまりみだりにそういう事を言わない方が良い。」
「え、何何w何かまずい事言った?」
「信じる信じないを棚上げにして、今回は「精霊が居る」という体で俺達は活動しているわけだ。それならあまり、精霊に対してああして欲しい、こうして欲しい等と言うものじゃない。」
「ほーひへ?」
「お前は幽霊じゃないなら怖い者じゃないと無条件に思っているかもしれないが、本来精霊だの妖精だのはそれなりに怖い者だ。何かを要求すると叶える見返りに何かを取られたり、といった伝説は山ほどある。お前にとっては何でも無いお喋りのつもりでも、向こうにそう取って貰えるとは限らないからな。」
「ああ成程ねw確かに日本の精霊とか神様とかはそういう所あるなw」
「沈黙は金じゃな。」
「????」
「まあ兎に角、今あまり余計な事を話さない方が良いという事だ。」
「ん!」

なんだかよく分からないが、いつもの調子で喋るなという事はわかった。
紀伊梨としてはちょっと努力が必要な要求ではあるが、そうした方が良いのならそうしよう。

「出来るのお前w」
「もう基本的に喋らんくらいのスタンスで居った方がええ気もするぜよ。」
「えー!全然喋らないのは無理!紀伊梨ちゃんには出来ません!」
「まあそこまでは出来ると思っていないが、発言には気をつけろ。」
「ほいほいふー!」
「お前らも徒に煽るような真似は止めてやれ。」
「ケロ。」
「いやあ、あいすいませんw」

柳の釘刺しにやっと安心した紀伊梨は、漸く柳のシャツから手を離した。



にゃあ・・・・



サッと振り返った。


「にゃんにゃん!」


「「「え?」」」

間違いない。
あの黒猫である。

「待ってー!」

「おい!」

待つのはお前だろ、という棗の声が後方に聞こえる。
でも紀伊梨は待ってられない。
何度も姿を見かけて声を聞いて、でも結局いつも逃げてしまうあの猫。
きっと友達になりたいのだ、と紀伊梨は思った。これは是非捕まえなければ。

夜とはいえ街灯がある事が、紀伊梨を勇気づけてしまった。怖いのを束の間見ないフリをして、紀伊梨は走る。
何、捕まえさえすればこっちのもの。捕まえた後怖くなっても携帯があれば迎えに来て貰えるし、何より猫が居るから1人ではない。大丈夫。

大丈夫。
その思いはただでさえ猫に気を取られて狭くなる紀伊梨の視野を、更に狭くする。

気がつかない。
周りから人影がどんどん消えている事に。

「おーい!にゃんにゃん、待って待ってー!待っ・・・おおお?」

黒猫は狭い道に入ったかと思うと、程なく曲がって建物に入ってしまった。

そして紀伊梨が追いかけてその角を曲がる。

「おお・・・・・」

そこは公園だった。

そこそこ大きい。
誰も遊ばない遊具を、街灯が煌々と照らしている。

そしてベンチに、着流しを着た青年が一人。

彼は顔を上げて、紀伊梨ににっこりと微笑んだ。


「・・・こんばんは。」


何処かで猫の鳴き声が遠くに聞こえた。


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