Training camp - in Hyoutei gakuen -:Type of assent 1

「ごめんっ!戻りましたっ!」

「あっ!桐生さん帰って来たんやね、お帰り!」
「可憐ちょっと!相談したいことがあるんだけど、」

やっぱりこういう忙しい時だと、ちょっと離れているとその間に状況が変わってしまっている。
申し訳ないなと思いつつ、考えてる暇があるなら今は行動しなければいけない。

「ふんふん・・・そっか、Cグループとかち合っちゃってるんですねっ。」
「まあ、本当はかち合う予定じゃなかったんだけど・・・」
「あっちがどうしてもロブ練延長したいんやって。理由が理由やけん、一概に無理って言っちゃってええもんなんかどうか。」
「そうですねっ。ちょっと調整してみますっ!」

確かグループCは網代がいた筈だ。話もし易い。

可憐はメニュー表を纏めたクリップボードを片手に、グループCの練習場まで向かった。




パコン、パコン、とテニスボールの音が響く中を可憐は走る。

(ええと、茉奈花ちゃん、茉奈花ちゃんはっ。)

ちょっと立ち止まって目線を走らせ、網代の姿を探す。

ええとどこかな。
どこかには居る筈なのだが。逆に此処に居なければ手洗いとか、さっきの自分のようにちょっと外している可能性も。

(・・・あっ!居たっ!)

「茉奈花ちゃ・・・」

視線の先。
数m離れた所に居る網代は、可憐に気づく事なくスコア表か何かを見ていた。

そしてそこに近づいていく誰か。


忍足。


「・・・・・・」

よくある風景である。

活動してるマネジ。
そこに用事があって部員が近づいていき、ちょっと話し込む。

どこにでも転がってるようなその絵が、なんだか不思議と可憐の言葉をせき止めてしまう。

ここからじゃ聞こえないけど、多分普通に普通の部活の会話してるだけなのに。
多少距離が近いのなんて当たり前だ、両想いでなくても少なくとも友達なんだもん。

一緒にノートを覗き込んで、指差して顔を見合わせて話し合って。
ああ、何か軽口でも言ったのかな。2人とも小さく笑って、網代が忍足の腕を軽く叩いている。

楽しそう。

「・・・可憐ちゃん?」
「え?あら、可憐ちゃん!どうしたの?」

「え?あ・・・」

用事が済み、戻りかけた忍足が上げた視線に捕まって、可憐は存在に気づかれた。
そして話しかけられ、可憐はそこでやっと、自分が立ち尽くして無言でただただ見てしまっていた事に気づいたのだった。

自分が悪いのだが、居心地が悪い。

いつからそこに居たのとか、何をじっと見てたのとか、用事があって来たんだろうになんで話しかけてこないんだとか。
そう聞かれてもおかしくないけど、そう聞かれても答えられない。

自分でもどうしてだかわからないから。

「やだ、声かけてくれれば良かったのに!」
「ご・・・ごめんねっ!何か、今ちょっと忙しそうかなって・・・」
「いや、殆ど普通に喋っとっただけやで。堪忍な、終わったらさっさと戻ったら良かったわ。」
「ううんっ!そういう事を言いたかったんじゃなくて、」
「そうよ、もう!侑士君が早く行ってくれれば良かったのに!」
「堪忍。」
「ち、違うの本当にっ!違うの・・・」

これは自分が悪いのだ。どう悪いのか説明出来ないけど、普通に「用事があるから忍足君の後で話良いかな?と言えば良かった、ただそれだけ。
それが出来なかったのは可憐の都合未満の一方的な事情。誰も悪いわけじゃない。

でもどう言えば良いかわからない内に、忍足はもう一度軽く謝ってサッと戻ってしまった。

(あ・・・)

「それで?可憐ちゃん、用事って何かしら?」
「あ、うん・・・あの、Cグループのロブ練が・・・」
「ロブ練?」
「延長して欲しいって交渉されちゃってっ!次はうちのEグループがロブ練だから、ちょっと食い込んじゃうっていうか、でも折角合宿なんだし、選手には納得いくまでやって欲しいしっ。」
「そうねえ、それも一理あるけどじゃあEグループのロブ練はどうするかっていう話になるわね・・・例えば、ここのメニューをこっちに入れ替えるのはどうかしら?」
「でも、うちは直前までここでフォアハンドの練習をしてるから・・・・」
「ああそうね、大分動線が重なるわ。じゃあ、うーーーーん・・・・」

(忍足君・・・)

後で謝りに行かないと。
そんなつもりじゃなかったって。
いや、寧ろ自分は微笑ましく見守らないといけない立場なのに、あんな遠ざけるような感じになってしまった。誤解を解かないと。

そうだ、今度あんな場面があったなら、自分は寧ろもっと、けしかけないといけないのだ。
こっちは用事だから割って入るのは仕方ないとしても、盛り上がってる所ごめんね〜とか言って。
今度からはそうしないと。

そうしないと。

「可憐ちゃん?」
「・・・・・」
「可憐ちゃん!」
「えっ!?ああ、はいっ!」



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