Training camp - in Hyoutei gakuen -:Type of assent 1



はああ。

誰とはなく、そんな溜息とも深呼吸ともつかないような吐息の音がそこかしこで聞こえる。

今は昼休憩。
可憐は同じグループのマネージャーと昼食を囲んでいた。

「何か学校なのに弁当じゃないってしんせーん!」
「あははっ!そうだね、いつもお弁当だもんねっ。」
「合宿じゃあ流石に手持ちの弁当はねー。おかげで普段より良いもの食べれるけど♪」
「あ、それ分かるー!」

ここは部室・・・ではなくて食堂。
氷帝は夏でも規模縮小はあるが食堂が開いている。

といっても普段は移動の時間が勿体ないし他所の部活とかち合うしで使っていないのだが、合宿の間は昼休みも全部グループ制。全員一斉に昼食ではなく、グループごとにちょっとづつ時間をずらして休みを取るのだ。

だから今は、この場には他部活を除くと同グループの部員とマネジしか居ない。

(しょうがないけど、ちょっと寂しいな・・・)

なんて思いながら、定食のキャセロールを突く。


「桐生!」


「んぐ・・・宍戸君っ?」

聞き慣れた声に振り向くと、今日同グループの宍戸が近づいてきた。
トレイの返却口から戻ってくるところを見ると、早々に食べ終えたらしい。

「なあにっ?」
「いや、特に何ってわけじゃねえけど。お前、体調は本当に大丈夫か?」
「えっ?」
「水道でぼーっとしてたじゃねえか!」
「あっ!ああああのっ!あれはもう本当に、全然大丈夫だからっ!」
「本当か?」
「本当だよっ!ほら、この通りピンピンしてま・・・あー!」

身振りで「元気です!」をアピールするためにちょっと両手を振ったら、左手がカトラリーにぶつかって落ちた。
同席のマネジに苦笑されながら慌てて拾うと、宍戸はちょっとほっとしたように笑った。

「大丈夫そうだな。」
「今、何を根拠にして大丈夫って言ったんですかっ!」
「え、でも私も正直わかるっていうか・・・」
「だよね。可憐の場合、ドジしてない方がちょっと怖いよね。熱とかあるかな?って感じ。」
「ひどい!」
「ははははっ!」

宍戸は今度こそ本当に安堵して笑った。

「でも、マジで良かったぜ。今日からの合宿も、俺はつい油断してたら目の前のメニューで頭いっぱいになっちまうし。そんなんで友達が倒れるまで気づかないとか、激ダサだからな。」
「有難うっ、気にかけてくれてっ。でも本当に大丈夫だからっ。」
「でも何かあったらすぐ言えよ?忍足は頼れねえし。」
「「え?」」
「あ!」

(あ・・・)

あ、まずい。
と語る宍戸の顔で、可憐は察する。

先日の沖縄旅行の日、宍戸は忍足の片思い事情を知ったのである。
なので、忍足にあんまり可憐を預けるとそれは忍足の邪魔になる。宍戸はそう思っているのだ。

正直、すぐ目の前のことに夢中になりやすい自分や向日と違って、忍足は目端が効く。医学にも多少明るいし、だから忍足がドジな可憐と行動をよく共にしてくれるというのは、双方の友人である宍戸から見てかなりの安心材料だったのだ。

ただ、事情を知ってしまうともう簡単には頼れない。ああ見えて忍足は優しくて面倒見も良いことを宍戸ももう知っているが、だからって他に好きな女子が居るのにそんな邪険に出来ない性格を利用するような真似は、それこそ激ダサどころの騒ぎではない。

だから宍戸は、実はあの日以来内心でこっそり決めていたのだ。
これからは忍足が何をしてくれる前に、自分や向日が率先して見といてやった方が良いと。(勿論芥川は最初からこういう面では当てにしていない)(出来ようもない)

「ほら、あの・・・今日はその、グループが違うからな!頼ろうにも頼れない奴が沢山居るし、」
「ああ、そうだねー。」
「なんだかんだ、不便も多いよね。可憐は居てくれるけど茉奈花は居ないし。」
「ねー。他所のグループってどんな調子なんだか。」

どうやら誤魔化せた。
その安堵感でほっと胸を撫で下ろす宍戸。

可憐は。

「・・・・そうだねっ。」

どうにか、それだけ返した。


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