100話記念企画 No.069


「ほらよ。」

バムン!と音を立てて机に置かれる冊子。

人数が揃った?はい。そうか、じゃあ次はこれだな、と言って跡部が取り出したのはとても分厚いカタログであった。
表紙右隅に、緊急用と小さく書かれている。

「何やこれ。」
「カタログだ。そこから招待状の装丁を選べ。」
「こっ・・・この中からっ!?」
「しょうがねえだろ。本来アフタヌーン・ティーの招待状配布は1か月前だから、時間がない分確かにバリエーションは少ねえがそれで我慢しろ。」
「・・・これは、何がしかのトラブルで忽ち必要になってもうた時用のカタログ、ちゅうわけやな?」
「そうだ。」

緊急用とは思えない分厚さである。
流石というか、なんというか。

「どうしてもその程度じゃ嫌だというなら・・・」
「「いえ、これで十二分です。」」
「?そうなのか?」




「まさか、招待状を出さなくちゃいけないなんて・・・」
「まあ、ちゃんとしたやり方でて要求したのはこっちやしなあ。」

招待状という発想もそうだが、もうゲスト決まったのに招待状出すというのも可憐の発想の外であった。
それ招待状要らなくないかとも思うが、跡部からするとこれもまた「欠かせない礼儀」の内の一つらしい。

「それにしてもこの物量はなかなか骨やな。」
「跡部君、あんな事言ってたけど十分多いよねっ!?選びきれないようっ!」

招待状じゃなくても何でもそうだが、人間選択肢があまりに多すぎると却って混乱してきて選べない。
見ているうちに見すぎてわけが分からなくなって、結局後から振り返ると「何であれを選んだんだろう、あの時の私・・・」みたいな心境になるなんてよくあること。

「・・・可憐ちゃん。」
「どうしよう、どれから見たらっ・・・忍足君っ?」
「そこまで決めんでも、なあなあでええかなと思うててんけど。」
「?」
「こうなると決めな、どないしようもあらへんから、コンセプトを決めよか。」
「・・・コンセプト。」
「まあ、イメージというか。お茶会言うても、色んなお茶会があるさかい、可憐ちゃんの希望の雰囲気で。」
「えっ!?」

忍足も、此処までちゃんと進めることになろうとは思いもしなかった。
もっと行き当たりばったりで良いと思っていたが、どうやらそうもいかない。

「多分、これから先招待状だけやなくて、もっと色々選ばなあかん場面が出てくると思うねん。」
「うん・・・」
「そういう時にいちいち悩まへんためにも、イメージの固定は要ると思うわ。そしたら、それを元に絞っていけば良いわけやから大分早なるで。」
「そっか、確かにそうだねっ!でも、ごめんなんだけど私もいきなり言われてもっていうか、もっと簡単に決めちゃえば良いと思ってたから・・・」
「まあ、それは俺もそうやわ。でもよう考えたら、跡部に頼んだ時点でこういう事態は覚悟せなあかんかったな。」

跡部は何くれとなく人に手を貸してくれる太っ腹だが、基本的に手は貸しても提案はしてこない。
ああしてくれと頼んだら良いよと言うだけで、ああしたらこうしたらと口出しはしてこないのだ。だからこんな風に、実現はしてやるから考えておけと言われるのはよくよく考えたら想定しておくべき事だったなあ・・・と遅ればせながら忍足は思う。

「忍足君はどんなのが良いっ?」
「俺は、元々可憐ちゃんに使ってもらおう思うてただけやから。可憐ちゃんが決めてくれてええで。」
「そ、それは却って困るよっ!何かないかな、何かっ!」
「言うて、俺も直ぐにはいうか特には・・・ああ、あんまり女の子らしい趣味が行き過ぎると多少辛いかも知らへんな。どこもかしこもピンクとかパステルカラーのフリルやとかレースやとかリボンやとか。なんていうんやろ、ファンシーていうんやろか。」
「あっ、なんとなくわかるよっ!多分夢可愛い系ってやつだよねっ!じゃあそれは省くとして、うーん・・・」
「まあ、跡部も2、3日は選ぶのに使うたらええて言うてたから。明日とか明後日まででええと思うで。」
「うん・・・」



「それで悩んでるの?」
「うん・・・・」

その日、帰宅してから可憐はリビングで、スマホ片手に画像検索に勤しんでいた。
イメージイメージ、と思いつつ、土台あまり知らないものにイメージとか言われても。

「うーん決まらないよう・・・美梨、どうしたら良いと思うっ?」
「えー?美梨はおねーちゃんの好きなようにしたら良いって思うけどな。」
「ううん、そう言われると却って迷っちゃう・・・」
「うーん、それなら忍足さんみたく消去法はどうかなっ?これが良い、じゃなくてこーいうのはおねーちゃん的になしで、っていうのを考えてみて絞っていくとか。」
「あっ!それは良いね、それからやってみるよっ!ううん、じゃああんまり奇をてらったのとか変わったのはなしで、可愛すぎはあれだけどちょっとは可愛い感じでも・・・美梨っ?どうしたのっ?」
「・・・ううん、何でもー?」
「?」

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