100話記念企画 No.069



そしてお茶会当日。

可憐は挨拶の事で頭がいっぱいだった。
跡部から最初に軽く何か喋れと言われたのだが、何喋ったら良いのやら。

「うーんと、うーんと・・・もう、挨拶するんならもっと早く言ってくれれば考えておいたのにっ!」
「まあ、落ち着きて。何もそんな大げさに考えへんでも、来てくれて有難うとかでええねんで。」
「うん・・・そうだよねっ、落ち着いて私っ!此処にはいつものメンバーしか居ない、大丈夫大丈夫・・・」

(分かる気もすんねんけど。)

落ち着きだしているところに水を差すといけないから言わないが、雰囲気に飲まれている可憐の気持ちも十分わかるというか、無理もない。

今日のこの会場は、学校の生徒会長室一室丸々を、もうお茶会に要らない家具全部全部移動させて丸っと空けて用意された特別スペースである。
跡部の計らいでテーブルや椅子も完全にそれ用のがセッティングされているし、食べ物類もよくわからないが有名なシェフの作ってくれた品らしいし、兎に角普段通りにしようとしても状況がそれを許してくれない的な事はある。

そうこうしている間に、最初のゲストがやってきた。

「可憐ちゃん、侑士君!来たわよ♪」
「あっ、茉奈花ちゃんだっ!いらっしゃいっ!」
「お邪魔します・・・わあ!凄いわ、本当に色々本格的、ね!」
「えへへ・・・あ、有難うっ?まあ有難うっていうか・・・」
「準備に関してはほぼ跡部の功績やさかいな。」
「あははっ!まあ、出資に関しては仕方がないわよ。」

なんて話している間に、どやどやと部屋の外から人の気配がする。

「おーす!侑士!桐生・・・うわ、すげえ!」
「よ。おお!おい、すげえぞジロー、ほら!起きろって、せめて最初くらいは!」
「zzzzz・・・・」

「あ、いらっしゃい!」
「宍戸、代わるわ。」
「ふふっ!相変わらず芥川君はおねむさん、ね。」

心の底から熟睡しきって、宍戸に背負われながらぐで・・・と眠りこける芥川。
忍足が運搬役を代わるが、当然その程度では起きるどころか身じろぎの切っ掛けにもならず。

「亮、お疲れ!」
「全くだぜ・・・。」
「でも芥川君はどうするつもりなの?無理矢理座らせるのかしら?」
「ああ、いや。ちゃんと寝る用のスペースあるさかい。」
「へえ!用意良いじゃん!」
「あっ、違うのこれはアドバイスでねっ、」

とか言ってると、噂をすれば影。

「やあ、来たよ。って、皆結構もう集まってるんだ、やるねー。」
「あっ、滝君だっ!いらっしゃいっ!」
「お邪魔するよ。あ、芥川君。やっぱり寝てるね?」
「あはは・・・そうなんだよねっ。」

「成程、滝君のアドバイスだったの、ね。」
「正直そこまでせえへんでもというか、こんな日くらいは起きてるんちゃうかと思うててんけど。」
「「甘い。」」
「やったみたいやなあ。」
「zzzzz・・・・」

芥川が自分用の特設仮眠スペースに運ばれて行くと、丁度その時今回の出資者・・・ある意味一番の功労者である王が姿を現した。

「よう。揃ってるようじゃねーの。」
「あっ、跡部君いらっしゃい!」
「こういう時はいらっしゃい、じゃない。ようこそ、だ。」
「あうっ!」
「悪かったな、遅くなった。仕事が立て込んでたんだ。」
「仕事?っつっても、生徒会室がこんななのに仕事も何も、」
「生徒会の仕事じゃねえよ。子会社の用事だ。」
「お、お忙しいところを有難う・・・」
「寧ろこっちに来ててええん?」

それ友達同士のお茶会とか呑気にやってる場合じゃない気がするのだが、まあ。
本人が大丈夫と言うのなら。

「で?」
「えっ?」
「これで全員だろ?挨拶はまだか、アーン?」
「そうそう、それだよっ!朝いきなりそんな事言われてもわかんないよっ!」
「まあまあ。可憐ちゃん、さっきも言うたけどそない難しく考えんで。」
「でも、」
「思うてる事でええねん。どちみち誰も仰々しい挨拶なんか今欲しゅうないやろから。」
「思ってる事・・・」

大体跡部はちょっと、言い方がよろしくないのだと忍足は思う。
ある意味では正しい日本語なのだが、挨拶だとかスピーチだとか開会の一言とかいうと、どうしても肩肘張って考えがちになる。

今から始めます、の掛け声。
そのくらいで良いのだ。

「えっとー・・・きょ、今日は皆、忙しいところを来てくれて有難うっ!頑張って準備したから、楽しんでいって下さいっ!」

はーい、と良いお返事がお茶会の場に響いた。


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