100話記念企画 No.011
こうして始まったO(忍足の)H(ひな祭りエピソードを)T(詳らかにしよう作戦)であったが。
「とは言いつつ、具体的にどうしようかしら、ね。」
朝練後の後片付け時間を見計らって、網代が一人ごちた。
「やっぱり、一番良い方法は向日君の口を割らせることなんだけれど。」
「そうなのっ?」
「可憐ちゃん、秘密っていうのはね?本人から遠くなればなるほど漏れやすくなるものなのよ。」
「そうなんだ・・・」
「ただ、もしこれで上手くいったら・・・」
「や、やっぱり友情は壊れちゃうよねっ!?」
それはちょっとリスキーというか、食い下がっているのは自分達なのに向日に飛び火するのはちょっと可哀想と思う。
まあ、向日がそもそもの発端といえばそれもそうなのだが。
「他に知ってる人も居ないかなあっ?」
「多分居ないと思うわ。侑士君の交友関係で、一番仲が良いのは向日君だけれど次点では多分私達だもの。その私達がダメってことは・・・」
「だ、ダメか・・・」
「一応あの後すぐ部長様にも聞いてみたんだけど、知らないって言われちゃったのよねー。」
「聞いたのっ?」
「ええ、侑士君の口止めが入る前にと思って、ね。結局口止め以前の問題だったわけだけど。」
「ま、茉奈花ちゃん行動が早い・・・!」
後手に回るのが嫌いな網代ならではのスピード感だが、どうやら今回は功を奏したとは言えない結果に終わってしまったらしい。
となると、人に聞く案は却下。
「じゃあやっぱり、どうにかして忍足君から聞くしかないかなあっ?」
「でしょうね。でも侑士君の性格からして、一筋縄ではいかないわ。うっかりつるっと口を滑らしてくれるタイプでもないし、ね。」
「そうだよね、私じゃあるまいし・・・」
「次の手は買収だけど。」
「えっ?」
「要は、何か差し出すから代わりに教えてくれ的な話、ね。」
「何か・・・・」
一瞬成程と思ったが、何かって何だろう。
思いつかない。
「甘いものなんかじゃダメだよねっ?」
「うーん、というより侑士君の場合物欲がそもそも乏しいわよね。アレが欲しいコレが欲しいっていうタイプじゃないと思うわ。」
「そ、それも確かにっ!」
「かといって色仕掛けが効くわけでもないし。」
「そりゃあそうだよ・・・」
「・・・ん?」
「えっ?」
「・・・いえ、使えるわ!この手で行きましょ!」
「えっ、色仕掛けでっ!?」
「ようわからへんからもう一回言うてくれへん?」
丁度良かった。
可憐もよくわからないからもう一度言って欲しいと思っていた所だったのだ。
「だ・か・ら。もし昨日の話を聞かせて貰えるなら、私か可憐ちゃん、どっちかを好きにしても良いのよ?」
「ええええっ!?」
「なんで?」
びっくりするくらいそれとこれと関係ないよね、と思う忍足の思考回路はとても妥当と言えよう。
「そもそも昨日の話て何?」
「やだとぼけちゃって、ひな祭りの時の話よ。」
「ああ・・・いやでも、それでなんでその提案なん?」
「私も聞きたいよっ!茉奈花ちゃん、どういう事っ!?」
「え?どういう事も何も、これなら侑士君快く教えてくれると思って♪」
「なんでそう思うねんな。」
「あらやだ、まさか嫌なんて言わないでしょ?こんな可愛い子を二人も捕まえて。」
(・・・成程、そういう作戦やねんな。)
ここで忍足が嫌だというと、私達に興味ないっていうの?ひどーい、と言われるわけだ。
これは買収ではない。色仕掛けでもない。その皮を被った脅迫である。
女の子に失礼な奴の烙印を押されたくなくば、けちけちしないで昔のことの一つや二つくらいとっとと教えろと言いたいのだ。
残念。
その手には乗らない。
「あかん。」
「えー!」
「何と言われようとあかんで。」
「そこまで隠されると余計に気になるわ。」
「早う忘れて。」
「お願い!」
「あかん。」
「そこをなんとか!」
「却下。」
「絶対誰にも言わないから!ほら、可憐ちゃんも!」
「えっ!?ええと、ええと・・・お、お願いっ!」
忍足ははあ・・・とため息を一つ吐いて言った。
「あかんで。」
はあああああ・・・と網代のとてもとても盛大な、忍足の3倍はあるため息が可憐の隣から聞こえた。
「どうしたものかしら、ね。」
部活中になっても網代はまだあの話をしている。
ダメだと言われると余計に気になるその性格は、若干天邪鬼の気がある網代らしいといえばらしいのだが。
「ねえ茉奈花ちゃんっ。何か、そもそも言い出しておいてなんだけど、深追いして大丈夫なのかなっ?」
「大丈夫って?」
「だってほら、あんなに必死に隠してるんだよっ?何か言うに言われぬ大事なっていうか重いエピソードが、」
「無いわ!」
実にバッサリと網代は切って捨てた。
「どっ、どうしてわかるのっ!?」
「考えてもみて、可憐ちゃん。そもそも私たちが今回の話に興味を持った切っ掛けは向日君が言いかけたからなのよ?もし深刻な話なら、ポロッと言いかけられたりしないわ。つまり逆に言うと、あの場でさらっと言ってしまっても良かったくらいの話なのよ。」
「な、成程・・・」
「もっと言うと。」
「言うとっ?」
「他人にとっては取るに足りない話。でも本人にとっては口止めしたい話。それってどういう話か、可憐ちゃん分かる?」
分かる。
それはよーく、よーーーーく分かる。
自分もそういう話、山ほど持ってるからだ。
「ちょっと恥ずかしい話・・・?」
「ザッツライト!その通りよ、私もそう睨んでいるの。忍足君の恥ずかしい話・・・これはもう聞くしかないじゃない?ね?」
「う、ううん・・・」
確かにそう言われると俄然興味が湧いてくるが、同時に思うこともある。
「でもそういう話ってガードが硬いよねっ?」
「そうなのよ、ね。まして侑士君はそれでなくてもお喋りとは言い難いわ、どうしたら聞き出せるかしら・・・・」
あれやこれやと悩みだす二人だが、結局相談しても効果的な策は思いつかず。
これは当分無理かなとお互い内心で思いつつ、その日は解散になった。
3/6
[*prev] [next#]
[page select]
[しおり一覧]
番外編Topへ
TOPへ