100話記念企画 No.011


これは解決が難しいと思っていた問題が、ある日突然ふとしたことでするりと解決してしまった事はないだろうか。
最初にひな祭りの話をした時から1週間、可憐はまさにそういう現象に巡り合った。

その日、可憐は昼休みに西の庭を通った。
先生に提出物を届けて、そこから教室に戻ろうとした矢先の事だったのだが。

「・・・あれっ?」

忍足が、数m先を歩いてすれ違って行った。
可憐には気が付いていないようだった。
それはいい。それよりも可憐の興味を引いたのは、忍足の向かう方向である。

(あっちに何かあったっけっ?行き止まりだったような・・・・)

行き止まりどころか、ベンチもないただの空き地だった
ような気がする。
そんな所行って何をするのだろう。

自主練とかかな、と思いながら可憐はちょっと後ろをついて行った。



(なんでこないな事になったんやろ。)

なんでと言われると、間が悪かったとしか言いようがない。

偶々だ。
偶々裏庭で本でも読もうと思ったから向かったら、泣いてる女生徒とそれを見ておろおろしている男子生徒を見つけ。
うーわ痴話喧嘩だ近寄らないでおこう、とか思った矢先に男子生徒から見つかったばかりか忍足助けてくれと懇願され。なんでだよと思ってよくよく見てみたら、どちらもうちの部の部員だったりして。

身内の修羅場とかそれでなくても勘弁して欲しいのに、自分達じゃ解決出来ないから助けてお願いと双方に泣きつかれて、こんなに面倒な気分なのは久しぶりというコンディションで忍足は西の庭のドン突きに辿り着いた。

(ええと・・・ああ、あったわ。ほんまにあったわ。)

忍足も可憐と同じく、此処には何も無いと思っていた。

が、先輩達曰くここにはあるものがある。
普段意識の外だから知らない人が多いだけの話。

それは、地下倉庫。

「鍵は・・・これやな。」

ガチ、と古い音が鳴って扉を開けると、入口の先にはもういきなり下に続く階段がある。

「ほんで、電気はつかへんと。難儀やなあ。」

壁面のスイッチを押しても、カチ、と音も鳴るし手応えもあるのに何一つ視界が良くならない。

(ええと、スマホ。スマホのライトを・・・)

扉を開けているから、入り口付近は少々明るい。
それに壁に手をついていれば寄りかかることは出来るので、忍足は多少危ないとわかりつつも、片手でスマホを操作しながら地下へ下りる。

電源入れて、ライトアイコンをタップ。
明るさは、最大にしようかと思ったけど長丁場になると事なので、取りあえず下に降りきるまでは弱中強の中くらいで。

「よし、これでーーーー」


「きゃああっ!」


ライトを付けるのとほぼ同時。
聞きなれた声に後ろを振り返ると、やっぱり見慣れたシルエットが飛び込んできた。

「可憐ちゃん、」
「お、忍足君っ!?ああ良かった、忍足君だ良かったようっ!」
「可憐ちゃん、なんでこないなとこに居るん?」
「ご、ごめんねっ!私忍足君の事見かけて、どこ行くんだろうってついてきちゃってっ!でも此処暗いし、追いつかないとって思って急いで階段を降りようとして、」
「ああ、大体わかったわ。」

この暗闇の中であっという間に忍足の背を見失った可憐は、何の気なしに「取りあえず電気をつけて下に降りて話はそれからだ」とか思ってしまったのである。
その結果点くと思い込んでいた電気は点かず、え、と思ったが時すでに遅し。お決まりのように足を踏み外した可憐はあわや頭から転ぶところだったのだ。

「取りあえず立って貰うて・・・立てるやろか?」
「うん、大丈夫っ。此処どこ?っていうか何っ?」
「此処は地下倉庫やねんけど、今電気つかへんねん。」
「えっ!?そうなのっ!?」
「せやから、スマホのライト頼みやな。まあこれもいつまでももつわけやあらへんけど。」

そう言って忍足がライトを奥へと向けると、埃っぽい布のカバーを被ったあれこれが乱雑に鎮座しているのが照らされた。

「忍足君はどうしてこんな所に居るのっ?」
「まあ話せば長いんやけど、さしあたっての目的は落とし物探しやな。」
「この中からっ!?」
「この中から。」

そんな、散らかっていて電気も点かない地下倉庫での落とし物探しなんて、探し場所としては最悪も最悪ではなかろうか。

可憐がそう思っているのが顔に出ていたのだろう、忍足も分かるよという風に息を吐いた。

「まあどうしてもいうわけやないいうか、この状況で絶対見つけえ言うのは無茶やて誰でも分かるさかいに。見つからへんかったら見つからへんかったで、もう別にええねんけど。」
「でっ、でも忍足君は探すんだよねっ?」
「一応は。」

一応ね、一応。
引き受けてしまったから、と面倒ながらにある程度ちゃんとやろうとする忍足は、なんだかんだ優しいのである。

「・・・それなら、私も一緒に探すよっ!」
「え。」
「だって大変でしょっ?こんな所一人でなんてっ!」

確かに大変。
ただ、可憐に手伝って貰ったから捗るかと言われると、正直それも微妙。

いやしかし。
だがしかし。
でも。
いや。

「・・・汚れる思うし、時間もかかるで?」
「うんっ!」
「・・・それでええんやったら、ほなお願いするわ。」

こうして地下の捜索が思いがけず始まった。


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