100話記念企画 No.068
練習は思いのほかさくさく進んだ。
土台才能に恵まれた紀伊梨と、大概のことはしれっとそつなく熟せる柳生の2人。
テストという響きに最初こそ身構えたが、やってみるとマスターはあっという間だった。
「さ〜ら〜ば〜♪と〜も〜よ〜♪」
ジャーンジャーン
「旅だ〜ちの〜♪と〜き〜い〜い〜♪」
ジャーンジャーン
「変わーらなーいー♪」
ジャーンジャーン
「そのー想いをー♪今ー♪」
ジャーンジャーンジャーン・・・・
「ふー!良いじゃん良いじゃーん!ねーねー!紀伊梨ちゃん達めっちゃパーペキだよね!ぜーったい、今度のテスト100点満点だよー!」
「ええ!この出来なら、少なくとも私達に不合格はあり得ません。」
「やったー!」
ふー!と叫んでやっぱり喜びながらくるくる回る紀伊梨だが、柳生は止めない。柳生もまた、友人と万全の準備態勢が整ったのが嬉しいのだ。
しかし。
「!・・・・」
ぴた。と紀伊梨は動きを止めた。
ふと思いついた事があったのだ。
「五十嵐さん?どうかなさいましたか?」
「ねーねー、やーぎゅ!」
「はい?」
「テストっていつだっけー?」
「いつと申されましても、クラスごとに違うので。しかし、10日以上は確実にあると思いますが。」
「ふーん・・・」
「それが何か?」
「うーうん!折角だし、菖蒲っちの事びっくりさせよーと思って!」
「?といいますと?」
「ふふーん!コードだけじゃなくてさー、こうやってー。」
紀伊梨はすっかり慣れた手つきでギターを構えた。
「さ〜く〜ら〜♪さ〜く〜ら〜♪」
ジャ、ジャ、ジャーン♪ジャ、ジャ、ジャーン♪
「い〜ま〜さ〜き〜ほ〜こ〜る〜♪」
ジャ、ジャ、ジャ、ジャーン♪ジャ、ジャ、ジャーン♪
「ほう!」
つまり、コードの部分はそのままに主旋律も弾いちゃおうという事である。
「せ〜つ〜な〜に〜・・・あわっ!あー!もーちょっとだったのにー!」
「いえ、お見事ですよ。いつの間にそちらの練習を?」
「え?ずーっと聞いてたらなんとなく出来るくにゃい?」
「・・・・・・」
成程、これが天才か。
「そんな事よりさー!どおどお?これで菖蒲っちをびっくりさせられるよね!」
「ええ、そうですね。驚かれることは間違いないと思います。」
「だよねだよね!そーだよね!」
テストの練習としては完全に蛇足。
そこまでしろなんて誰も言ってないし、まあしたいなら好きにすれば良いが、最高点以上は多分貰えるまい。ここから先の努力はもうほぼ趣味みたいなもの。
しかし。
「それでは私も、引き続きご一緒しましょう。」
「お?」
「差し支えなければ音を教えて頂きたいのですが、どうですか?」
「・・・!うん、良いよ!やろやろ、一緒にやろー!」
柳生は結構火の付きやすい紳士だった。
友達が自分の目の前でレベルアップを図ろうとしているのを意味ないからと言って見送る趣味は持ち合わせていなかったのだ。
「あのねあのね!さーくーら、のとこはこーやってー、」
「すみません、少々ゆっくりとお願いします。・・・というよりも書いて頂けませんか?」
「お?」
「流石に一度見ただけでは覚えられませんが、都度都度・・・もとい、いちいち聞くわけにもいきませんので。楽譜に書いて頂けると。」
「そお?じゃーそーするね!えーと・・・」
「・・・?」
「・・・えー、こうだから・・・ここがこう!ここが・・・えーと、こうやってるからこれが・・・」
「本当に直感で弾いておいでなんですね。」
譜面台に乗った楽譜が2セット。
この日から片方は綺麗なまま。もう片方は丸文字で、コードが記された。
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