100話記念企画 No.086
その次の日。
忍足は図書室前の中庭で、木洩れ日に照らされながら本を読んでいた。
と。ふと急に陰った。
「茉奈花ちゃん。」
「こんにちは、忍足君♪」
「どないしたん?」
忍足が栞をして本を閉じると、網代はにっこり笑って忍足の手を引き上げた。
「はい。」
「・・・立つん?」
「そう。で、はい!」
「ああ・・・」
「あら、お嫌?」
「いや。喜んで。」
「そう、良かった♪」
「ああでも待ってんか。何かかけへん?」
「確かに!じゃあねー、」
中庭で徐に立って何事か始める2人に、周りで各々寛いでいる者達も「何?」「何か始めるの?」みたいな目で遠巻きにちらちらと目線を上げる。
「よし、ほんならいこか。」
「オッケー!いくわよ、せーの!」
その少し後、日直の仕事を榎本と終えて中庭に面した廊下を歩いていた可憐は、窓から見下ろした庭に人だかりが出来ているのが見えた。
「あれ何だろうっ?」
「お〜?誰か告白でもしてる感じ〜?」
「えええっ!?さ、流石にそれはっ!こんな大勢の目の前で公開告白なんて、誰もやらないよっ!」
「そおかなあ〜?うちの生徒会長様とか、やりそうな感じするけどなあ〜?」
「跡部君はまあ・・・うん、まあ・・・」
確かにやりそうな感じはするけど。というか、あの王様は人に告白する時人並みの緊張とかあるんだろうか。なさそう。
「でも、結局一体何があるのかなっ?」
「ちょおっと待ってよ〜。えーと・・・」
「何してるのっ?」
「こういう時は〜、スマホのズーム機能をね〜?」
「あ、成程っ。」
カメラ自慢の機種であることを活かして、指二本でズームしていく榎本。
そこまでして必死に見るようなものがあるのか?
それは見ないとわからない。
「えーとお〜?」
「見えるっ?」
「・・・お。ははあ〜。はい。」
「何何っ?・・・あ!」
スマホのカメラには、小さくではあるが見慣れたシルエットが写っていた。
「忍足君と茉奈花ちゃんっ!」
「な〜んでこんな昼間っから中庭で踊ってるのかな〜?」
「あっ、それはその、昨日ワルツの話をっ!」
「ワルツ?あ、成程ね〜。早くも練習してるって事か〜。」
流石優秀ですね〜。と隣でいつもの調子で呟く榎本とは逆に、可憐はスマホ越しに2人を見ながら何とも言えない劣等感を覚えていた。
(凄いなあ、2人とも・・・)
生来ドジな可憐は、こんな事は昔からよくあった。
自分がやりたくて、でも出来ない事をカンや要領が良い人がスッスッとこなしていくのを目の前で見る。
いつもの事。
いつもの事だけど。
「さっ!行こっか〜。」
「あ、うん・・・」
「どうかした〜?」
「ううんっ!何でもっ!」
遠くの方で、「金と銀」が聞こえた気がした。
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