100話記念企画 No.024


「でさ、その日は次の日理科で特別授業あっから準備させられんだよ。」
「ふむ。と言う事はこの日は1年生の抜けがこれで4、5・・・」

「あー!ブンブンと真田っちはっけーん!」

廊下で3人が発見したのは、結構珍しい取り合わせ。
目的地は違う場所だが、これはこれで良い。ラッキーだ。

「なんだ、騒々しい。」
「ねーねー、2人ともさー!大人になったら車買わにゃい?」
「「は?」」
「そんで紀伊梨ちゃん達の事乗せて!」
「今のでわかるか。」

「?」な顔の真田と丸井。
そりゃそうだろう。

「あの、大人になったら車を買うかっていう話で・・・それで、どなたか大きい車を買うのなら、皆で遊びにいけるのではっていう・・・」
「ああ、まあ車はどっかで買うんじゃねえかなって思ってるけど。」
「必要か?」
「え、要るじゃん?」

丸井はごくごくナチュラルに、大きくなったら家庭を持って、それに伴ってファミリーカー要るよねという思考を持っている。
将来設計とかそういうきっちりした目標というよりは、自分の家がそうだから自分もああなるんだろうなーくらいの気持ち。

「ただまあ、車買うにしてもそんなでかいのは買わないし。」
「えー!」
「いや、そりゃそうよ。」
「ついでに言うと、買ったとしても五十嵐は乗せねえ。」
「なんで!?」
「邪魔だから。」
「邪魔!?」
「い、言い過ぎでは・・・」
「だってお前、どこに乗る気なんだよ?」
「えー、どこでも良いよー!助手席とか!」
「却下!絶対却下。」
「なんで!」
「お前なあ、助手席ってどんなに忙しいか知らねえの?」
「俺も知らん。忙しいのか?」
「すげー忙しい、長距離の時とか特に。ナビしたりとか運転手に飲み物あげたりとか、行った先の調べものに、駐車の時の料金出すのとか色々。」
「あ、無理紀伊梨には。」
「えー!」
「せめて後ろにしろい。出来れば真後ろじゃなくて、もう一列後ろ。」
「遠いー!」
「まあまあ、周りに誰か居れば楽しいですから・・・」
「後俺、黒崎も助手席に乗せたくねえ。」
「ああまあ、私何もしないと思うし。」
「じゃなくて、殺されそう。」

のっぴきならない事態になったら乗せるけど、そうじゃないなら千百合を進んで助手席に座らせたいテニス部員など居るまい。死んじゃう。

「やっぱ俺春日が良いな。」
「え、」
「後ジャッカルとか、柳生とか幸村君とか。」
「ああ、煩くなさそうな奴。」
「どういう意味だ!」
「ねーねー、ブンブンの欲しい車ってどんなのー?」
「どんなっていうとなー。まあ普通に・・・あ!ハスラーとか?」
「うーわ。」
「何だよ?」
「あざとい。丸井がハスラー乗りとかマジであざとい。」
「ハスラーとはどういう車だ?」
「えーとにー。ハスラーハスラー・・・あ!これ!これがハスラーだって!」
「なんだか、凄く丸井君らしいですね。乗ってそうというか・・・」
「それがあざといんだって。」
「あざとかねえよ。」

ファミリーカーで、且つ「アクティブに行こうよ!」系の売り文句が好きな丸井の選ぶハスラーは、結構女子人気が高い。
いい感じに可愛く、かつラパンのように可愛さに振り切れてもおらず、車らしい武骨さをちょっと残しているハスラーは丸井に似合いそうが故に千百合は可愛げがないと感じる。この男は、本当に自分をよくよくわかっている。

「真田君は、お車とか乗らなさそうな感じですか?」
「そうだな。無論今はまだ乗れんが、年相応になっても車に必要性を感じるかどうか・・・」
「じゃあさじゃあさ、もし買うならで良いからー!」
「そうは言うが、そもそも俺はさしてその関係の事は明るくないのだ。」
「何にせよあんた、色は黒だわ。」
「ああ、赤とかピンクとか絶対乗らなさそうだろい。」
「えー、なんでー?ピンク可愛いよー?」
「俺は乗らん!ああいう色の車は、女子供が乗るものだ!」

実際、真田が大人になってピンクの車とか乗り回していたら、紀伊梨以外の全員が心配するだろう。どうしたの罰ゲームなの?嫁さんの趣味なの?とか言って。

「真田君って、変わった車は買わなさそうですよね。」
「ああ、分かる。トリッキーな奴より、ふっつーに車屋で勧められたの普通に買いそう。」
「む・・・まあ確かに、こだわりは左程ない分、買うとなるとそういう成り行きもあるやもしれんな。」
「ふつーに勧められる車?ってどんな?」
「ま、色々じゃない。メーカーにもよるし。」
「あ!ライズは?」

ライズ。
日本の自動車業界トップをひた走るトヨタの、その又トップ争いをする人気車種である。

「似合うー。」
「な?」
「ライズってどんなのー?」
「ええと、ライズ・・・あ。これで・・・け、結構大きいですね。ごつごつしてるというか・・・」
「おー!何かかっこいー!真田っちっぽいよー!」
「確かに、なかなか武骨な雰囲気のデザインだな。悪くない。」
「だろい?機能面も結構ぴったりだぜ?」
「ぴったりなんですか?」
「多少の悪路でも走れます、って言ってたから。」
「ああ、気合と自力で悪路走破して行こうってとこが持ち主にそっくり。」
「何が言いたい!」
「「何も。」」
「ねーねー!」
「はい?」
「これおっきくない?皆乗れない?」
「「「皆は無理。」」」
「あり?」
「あはは・・・」


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