100話記念企画 No.044
更に次の日。
もうそろそろ、今日か明日で採取は終わりだなと思いながら、今日も可憐は新しい場所に木苺を取りに行った。
が。
(あれっ?何だろうあの人だかりっ?)
目的の植込みの前に先客が居る。
女子が数人集まって、若干植木から距離を取りつつ足元を見てきゃあ!可愛いー!とか小声で囁き合っている。
(もしかして、猫とか居るのかなっ?)
その可能性は高い。
ちょっと自分も見たいなと思い、集まっている女子数人の更に後方に回るようにしてそっと植木を覗き込んだ。
「・・・えっ、ええっ!?芥川君っ!?」
思わず大声になる可憐。
芥川は、植込みの根元の方で丸くなって昼寝をしていた。
それに何か両手に抱えている。
(ビニール?それに木苺?)
「・・・・ん?」
きゃあ、起きた、と色めき立つ女子。それらを全く気にすることなく芥川は体を起こした。
「あ!桐生ちゃんだ〜。ねーねー桐生ちゃん、見てこれ!俺手伝いにk「あーっ!あーっ!あーっ!あーっ!」
まずいまずいまずいまずい。
今の第三者が居る場面でその発言はまずい。
「ちょ、ちょっと芥川君っ!あっち行こう、あっちにっ!」
「A?なんで?」
「なんでも良いからっ!」
引きずるようにして芥川を連れて、可憐はその場を後にした。
「じゃあ全部聞いてたのっ!?」
「うん。」
なんと、芥川はあの跡部に見咎められた日に全てを聞いていたらしい。
その日もああして植込みの影で静かに眠りこけていたから、気がつかなかったのだ。
「俺、最初夢かと思ったんだけどさ〜。岳人に木苺のジュース作る夢見たって言ったら、お前もかって言われちゃって〜。」
「ああ・・・」
つまり向日は、芥川も協力者だとその発言で早とちりしてしまい話を振ってしまったのだ。
ただこれは向日を責められない。勘違いしても仕方あるまい。
「でっ、でも内緒の話だからっ!言っちゃ駄目だからねっ!」
「そうなの?」
「そうなのっ!」
「そっか、わかった!誰にも言わないでおくね!」
「よろしくお願いしますっ!」
「それからさ〜、それはそれとして1個食べてみてE?」
「う、ううん・・・良いけど、あんまり甘いわけじゃないからっ。」
誰にも言わないと言いつつ、芥川と居るとどうも気が抜けがちというか警戒心が緩んでいくというか。
まあもう採取完了はすぐそこという今の状況も相まって、可憐はいつになくのんびりした気持ちで木苺を摘む。
そして、そんな2人を木の陰から見つめる人間がまた2人。
「・・・どうする。」
「いやあ、出て行きづらいねー。あそこまであからさまに秘密のお話だと、まさか聞こえちゃったなんて言えないし。」
宍戸と滝は、言うなれば親切心から通りがかっただけなのである。
たまたま近くで居合わせたから軽く談笑していたら、滝のクラスメイトからあっちにテニス部転がって寝てるぞと言われ。
もうそれだけで誰がどんな状況になってるのかわかったようなものだが、いつもの事だから放っといてくれて良いよという気持ちも若干抱えつつ、それでも根が真面目で面倒見の良い2人はなんだかんだ教えられた現場まで芥川の回収に来てしまったのだ。
ところが行ってみたら本人はもう起きて可憐と話してるし。
起きたみたいだしじゃあもう良いかと思って立ち去ろうとしたら、でかい声で秘密のお話を始めてしまってなんだかんだ聞いてしまった。
どうしよう。
「まあ知らないふりしかないんじゃない?とは言っても、彼にバレてるとなると広がっちゃうのは時間の問題のような気もするけど。」
「だよな・・・口止めしておくべきか、ああでも俺が知ってるってバレるのも何つうか、」
「残念やけど、バレてることがバレてるで。」
2人が後ろを振り向くと、苦笑気味の忍足が佇んでいた。
「・・・お前も知ってんのかよ。」
「いうか、発案者やからな。」
「は!?」
「ああ、忍足君の思い付きだったんだ、やるねー。確かに、学校のものを取っていくなんて桐生さんの発想じゃないなとは思ったんだけど。」
景吾君が言い出しっぺかと思ったよ、と笑う滝と違って、宍戸は若干気まずくなってしまう。
忍足も可憐サイドということは、忍足から見ても立ち聞きしたと思われてるんだろうな・・・とか考えてしまうのだどうしても。
(生真面目なやっちゃなあ。)
「さて。聞かれてもうたもんは、もうどないしようもあらへんわけやけど。」
「・・・悪い。」
「見逃してくれないかな?わざとじゃないんだし。」
「まあ2人とも口は固そうやし、誰かにぺらぺら話すとは思うてへんわ。どうせもうそろそろ辞め時やしな。」
「そうか、なら・・・「それはそれとして手伝わへん?」へ?」
「木苺摘みをって事かい?」
「せや。ほんまは明日集め終えて明後日取り掛かろかと思うててんけど、手伝うてくれるんやったら一日前倒し出来るわ。まあ可憐ちゃんにええかどうか聞いてからやけど。」
「因みに忍足君。」
「?」
「勝手に聞いちゃってこういうのもなんだけど、多少は報酬が出たりしないかな?」
「・・・木苺のジュースでええんやったら。」
だから、可憐に聞いてみないと。
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