100話記念企画 No.044


「ようしっ!じゃあやろうっ!おーっ!」

(流石に夢が叶うだけあって、気合いが凄いな。)

宍戸と滝の協力もあり、材料が早くに揃った次の日の昼休み、可憐は忍足と2人で家庭科室に居た。
協力者は最終的に結構な人数になったのに、作るのは2人だけ。向日をはじめ大半は「作るのは良い、何も出来なさそうだし」と言って辞退した。
網代は来たがっていたが折悪く日直の仕事があったため、結局2人。

まあ2人でも出来るだろうけど。と、忍足は手を念入りに洗いながら思った。

「ええとっ!まず材料は、木苺と、砂糖とっ!」
「・・・可憐ちゃん。」
「それからレモン汁・・・要るかなあっ?それでなくても結構酸っぱいけど、でも書いてあるし・・・」
「可憐ちゃん。」
「後は・・・蜂蜜っ!?砂糖も入れるのに蜂蜜も入れるのっ!?で、でも書いてあるs「可憐ちゃん。」えっ!?はい、何っ!?」
「それ。」
「え?」
「塩やで。」
「え・・・ああっ!?あ、危なかったっ・・・!」

・・・2人で出来るはずだ。うん。多分。多分ね。

「あ、有難う忍足君っ!もうちょっとで取り返しがつかなくなるところだったよっ!」

(まあこういう時のために居るようなもんやし。)

さっき忍足はちらっと可憐とレシピに目を通したが、正直ちょっと料理慣れた人なら多分一人でも何とかなるだろうと思う。
強いて言うなら、ラズベリーを漉すのは純粋な手間的な意味で時間がかかるかもしれないが、別に難しいわけじゃない。作業としては単純。ミキサーもあるし。

それでも普通ならやらない何かをやらかすかもしれないから、忍足はこうして補助をかって出たのだ。
しかも、プレッシャーになるから口には出さないが、可憐の言う通り今回は本当に取り返しがつかない。他の材料は兎も角、この氷帝に生えている生木苺は何かでしくじっておじゃんになったら流石に二度は調達できまい。

「ええとじゃあ気を取り直してっ、レモン汁が大さじ1杯、2杯・・・よしっ。」
「可憐ちゃん、もう一回それをやらな。」
「えっ?」
「人数的にこのレシピの2倍やから、要る材料も2倍やで。」
「・・・ああっ!そっか、そうだよねっ!ええとじゃあ、全部でええと、」

大丈夫かなあ、と思いつつ、自分はあくまで見守り役なので手は出さない。
憧れありきで始めたんだから、最後まで憧れ優先でやらせてあげたい。
・・・昼休み終了のチャイムが鳴るまでは。

「俺、ミキサーにかけとこか。どっちにしろ漉さなあかんとは思うけど、手間が全然ちゃうと思うで。」
「あっ、そうだねっ!うん、お願いしますっ!ええとそれでっ、こっちは蜂蜜が、」

やってる作業そのものが単純なせいもあるが、忍足はどうしても視線がちらちら可憐に行くのを避けられない。
大丈夫かな。怪我しないかな。不可逆的な失敗もなるべく避けて欲しい。
特に今回は一瞬だけとはいえ火を使うので、凄い怖い。

「それで、えーと熱湯を・・・あれっ?・・・?どうしてだろっ、火が点かない、」
「可憐ちゃん、元栓開いてないわ。」
「ああっ!」

怖いからお湯を扱うとか、そういう危ないステップはやっぱり自分がやろう。忍足は心に決めた。



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