100話記念企画 No.053
次の日。
可憐がいつものように昼休みに行くと、もう既に来ていた忍足がジュースサーバーでコーヒーを入れていた。
「お疲れさん。可憐ちゃんもいらへん?」
「あっ、欲しいっ!今日は私もコーヒーにしよっかなっ!」
で、砂糖の代わりにあの氷砂糖を入れよう。
昨日はレモン味を入れたから、今日は別のにしたい。
楽しみですと顔に書いてある可憐に忍足は微笑んで、可憐の分のコーヒーを入れる。
「今日はそれにするん?」
「うーん・・・」
「コーヒーやさかい、昨日みたいにフルーツ系のフレーバーは辞めといた方がええかもしれへんな。」
「そうだねっ!何か変な味になっちゃいそうっ!」
とは言いつつ。
フレーバーは沢山あるが大半がフルーツ系統なので、それを抜きにするとなると結構難しい。中には可憐が縁がない・・・というか、何と書いてあってどんな味なのかわからないラベルのも混じっているし。
「・・・あっ!これっ!これにするっ!未開封だけどっ。」
「全然ええで、開けたって。何の味にしたん?」
可憐の持っている瓶のラベルには、COCOAの表記。
ココア。
うん。そうね、チョコレートモカ的な奴あるもんね。
(今日も甘そうやな。)
「ココア味なんてあるんだねっ。」
「せやな。俺も一個一個見てるわけやあらへんかったから、初めて知ったわ。」
それこそ、それ何味?みたいな種類のは沢山ある。
チャイ味とかはまあまだ分かるとしても、ベルガモット味とか言われるともうお手上げ。
あの王様にはわかるんだろうか。
忍足がなんとなくベルガモット味を手に取って眺めている間に、可憐はもう自分の分にココア味の氷砂糖を入れていた。
「忍足君も入れるっ?」
「いや、俺はええわ。今日はブラックで。」
「そうっ?じゃあこれはしまっちゃうねっ。頂きますっ!」
こく、と一口。
「どない?」
「美味しいよっ!あのねっ、あのう・・・あれっ!パ/ピ/コっぽい味っ!」
「ああやっぱり、味の系統としてはそっちになるやろな。」
まあ美味しく飲んでもらってるようで何よりだ。
それが一番だし。
「そういえば、可憐ちゃんてチョコレート好きなん?」
「えっ?どうしてっ?今ココア味の入れたからっ?」
「いや、前も勉強中にココアとか飲むて言うてたと思うて。」
「あ、うんっ!好きだよっ!でも、特別って感じじゃないかなっ。」
「そうなん?」
「あのー・・・ほら私、紅茶とかコーヒーは砂糖入れないと飲めないからっ。その点ココアは最初から甘いから、安心っていうか、手間がかからないからっていうかっ。」
「ああ、成程な。」
要は、調整が要らないという事だ。
甘くしたり、どれくらいとか考えたりしなくてよろしい。そのまま飲めば良い。
勉強とかの片手間に飲むには、そういう所がココアは魅力。
「忍足君って、ココアとか飲まないのっ?」
「せやなあ、うちやと誰も飲まへんさかい。置いてあったら、気が向いたら偶には飲むかもしれへんけど。」
言われてみたら、もう年単位で飲んでないような気がする。
「・・・やっぱり俺も飲もかな。」
「あっ、そうするっ?」
「こんな機会でもあらへんと、ココア味なんて飲まへんから。」
まだ紙コップの中に残っているコーヒー。
そこに更にコーヒーを足してコーヒーを多めにしておき、氷砂糖の小さい奴を一つだけ。
もう、シロップも一緒に入れるとかそういう事はしない。
「・・・・」
「どうっ?」
「・・・甘いわ。」
これでも尚自分には甘い。
まあ元々甘いのそんな言うほど好きってわけじゃないから、人より甘いのに弱い自覚はあるけど。
「そっか・・・」
「いや。別に、偶にはええて。こういうのも。」
そう、偶には良い。
こういう事も、日々には必要だと思うから。
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