100話記念企画 No.089
今日は気が付くとどこかに立っていた。
どこだろう。
屋外なのはなんとなくわかるが、不思議な空間だった。
木が茂っていてそこから木漏れ日が漏れているのに、木が頭上に無い所は上空に星空が広がっているのだった。
視界が煩い。
沢山の着飾った人が右に左に体を揺らして、立ち止まってお喋りして、凄く落ち着かない・・・というか、一人でポツンと何もしないで立っている自分が凄く浮いて思える。
ちょっと移動しよう・・・としたら足元で何かが揺れた。
下を見下ろすと、アリスブルーの中世風のドレスを自分は着ているのだった。
これなら裾を踏みにくくて良いなと思いつつ、歩いていても特に当てなんてある筈もなく。
なんとなく人の間を縫って明るい方に行くと、なんとなく美味しそうな匂いがした。
そしてそっちへ向かって歩くのだが、これがなかなか難しい。
ぶつからないようにしようにも、ぶつからないようになんて配慮しているのは自分だけで、周りは可憐が傍を通ろうとしている事なんてまるで気にしてないかのように振る舞う。
見向きもしなければ話しかけてもこないし、視線を寄越す人すら誰も居ない。
見ようによっては気楽と言えなくもないかもしれないけど、ここまでくると。
でも兎に角目的の所へ・・・と焦れば焦るほど、気のせいだろうかなんだか前を遮ってくる人が増えてくる気がする。
というか、なんだか人数そのものが多くなってきてないか。
人口密度が上がってきてる気がする。
前が見えづらい。やめて。通して。せめてもう少しじっとしてて。色とりどりのドレスがほうぼうでふりふり揺られている中を通り抜けようとすると、目がちかちかして仕方がない。
助けて誰か。何か心なしか目まいがしてきた・・・と思ったら、とうとう誰かにドン、とぶつかられた。軽くではあったけどよろけて、ごめんなさい!と言ったがそう言ってる端から次の人にぶつかられる。ああもうめちゃくちゃ。
どこを目指してたのかもわからなくなってきた。
そうこうしている間にかなり強くドン!とぶつかられてつんのめった。
ああこれはダメだ、持ちこたえてたけれど今度こそ転ぶ、と思って手を前に出して転倒に備えようとして。
すると、その前に出した手を誰かにすっと取られた。
「大丈夫?」
ああ。
忍足君だ。
顔を上げる前にそう思って、上げるとやっぱりそうだった。
「良かった、探しとってん。」
そうなのか。
悪いことをしたと思うと同時に、心底ホッとした。
身の置き所が漸く見つかった感じ。
思わず握った手に力を込めると、忍足は優しく笑って行こか、と小さく返事した。
どこに?と聞くと、なんだか急にまばらになった人ごみの向こう、明るい方を忍足が指さしていた。
「お腹空いてるやろ?」
そうだった。
そこを目指していたんだった。
木漏れ日と夜空の下を、今度こそ目的地目指して可憐は歩こうとして足を上げた。
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