5万打記念企画 No.015

「あれっ!?」

次の日の移動教室の時だった。
ちょうど近くを通るから、ついでに塗ろうと思って今度こそピンクのチョークを持参してあのコンクリート塀に寄ったらだ。

「消えてるー!嘘ー!なんでー!?」

紀伊梨の書いたハートは消えていた。
というか。

「・・・これ、誰か消したの?」

よくよく見ると、昨日書いたあたりに白い跡が残っている。
誰かがザザッと雑に消した跡にも見える。

まあ、元々コンクリートにチョークで書いたものなんて、消そうと思えばすぐ消せるのだが。

「むー・・・よし!」

誰が消したか知らないが、そんな事でへこたれる紀伊梨ではない。
どうせ塗る予定だったのだ、と思い直し、ピンクのチョークでハートを書いて塗りつぶす。

「おけ!で?後は消えてないかなー?・・・うん!」

昨日一緒に書いた目は消えていなかった。
紀伊梨はその事に満足し、その場を後にした。




「・・・・・・・」
「・・・ええと・・・」
「うけるわ。」
「何が受けるのさー!もー!」

昼休み。

先日見せた舌の絵に、目とハートを追加したから見に行こうと紫希と千百合と棗を誘ったらだ。

午前の間に書いたはずのピンクのハートはやっぱり雑に消されており、ついでに片目は消されて上書きされていた。
左目が矢印のような瞑った目の表現に書き換えられている。

「折角書いたのにー!」
「昨日のハートも消されてたんでしょ?」
「消した方は、ハートがお嫌いなんでしょうか・・・?」
「そうなんじゃない。まあそれを考えると、やったの男子くさいな。」
「おうおう、わざわざたわしで擦っちゃってまあw」

棗がコンクリート塀をそっとなぞりながら言った。
確かに、白で書いたハートの枠線と違って、ピンクのハートはかなりがっちり、跡形もなく消されていた。

「ぬぬぬぬ・・・!よーし、それならもっかい書いてやるー!」
「また消されるんじゃない。」
「だから消されないよーにー!チョークだからいけないんだよね!油性ペンとか?」
「・・・・」
「・・・棗君、どうして笑ってるんですか?」
「いやw取りあえず、油性ペンなら今あるから、やるならどうぞw」
「よしゃー!」
「と、というか、落書きしていいんでしょうか・・・」
「良いんじゃない。完全に過去の遺物でしょ、焼却炉とか。」
「おーし!ってゆーか、コンクリートにペンで何か書くって何か面白いね!誰か他にやるー?」
「「「遠慮します。」」」
「えー?」

こうして紀伊梨は、今度は油性ペンでハートを書いた。
次の日にはご丁寧にシンナーでさっぱり消されていることも知らずに。



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