5万打記念企画 No.025



「はい、忍足君っ!今週の分っ!」
「ああ、おおきに。」

可憐は輪ゴムで束ねられた手紙を忍足に渡した。

因みに今可憐は今週分と言ったが、ファンレターは毎日届けられるわけではない。
そんな毎日毎日仕分けして配ってみたいな事をこまめに出来るほど、氷帝テニス部のマネージャーは暇ではない。残念ながら。

「気のせいかも知れへんけど、何や増えてへん?」
「あっ、うんっ!茉奈花ちゃんも増えてるって言ってたよっ。都大会からじゃないかって。」
「ああ。まあ確かに、露出してええ成績残してたら普通は増えていくもんやな。」

とはいってもちょっと急に増えすぎでは・・・と、およそ20はあろうかという手紙を見て忍足は思う。
まあこれは跡部のせいが大きいのだが。
あの目立つ王様を内包している我が部は、引きずられる形で一緒に目立ってしまっている気がする。

「・・・ねえ忍足君っ?」
「うん?」
「私あんまり気にした事なかったんだけど、ファンレターってどういう事が書いてあるのっ?」
「どういう?」
「あ、細かく教えてくれなくて良いよっ!ただ、いつも仕分けして配ってる割に、中身はよく知らないなあと思って・・・・マネージャーに手紙って普通は来ないしっ。」
「そうなん?でも何通か茉奈花ちゃんが持ってるのん見たことあるで。」
「うーん、マネージャンさんへ、みたいな感じで全員当てっていうのが偶に来るかなっ?でも個人でっていうと殆ど見ないよっ。ちらほら来るのは、茉奈花ちゃんとか落合先輩とかだけで。」
「へえ・・・」

まあ、網代に手紙が来るのは可憐も周りもまあそうだろうなと思える。
現在学園でも活躍目覚ましいテニス部の、そのマネージャーのリーダーという事で、網代は結構注目を浴びているのだ。

「手紙なあ。まあ、基本的にはほんまにファンからの手紙やで。応援してますとか、頑張って下さいとかそういう。」
「そうなのっ?」
「違うと思うてたん?」
「実は私、大半はラブレターだと思っててっ。」
「ああまあ、偶に混じるわ。でも割合としてはそんなに多ないで。」
「そうなんだ・・・」
「まあ今のシステム上ラブレターを出すのんはリスキーやからな。間違うて他の人当ての手紙に混じってもうたり、本人以外の誰かに読まれたりするかもしれへんていう心理が働くんやと思うで。」
「そっか、確かに一旦は本人じゃない人の手に渡っちゃうもんねっ!」

それはもし自分だったらと置き換えて想像しても怖い。

「やから、そういう手紙はやっぱり直接の方が多いわ。」
「直接っ!?ああそっか、確かに絶対箱に入れなくちゃいけないなんて決まりはないもんねっ。でも、そっかあ・・・」

直接本人にラブレターを渡すって、結構な度胸が要ると思うのだが。
直接の方が多い、という言い回しからして、一度や二度じゃないのだろう。皆凄い勇気だなあ、と可憐はちょっと恋する女の子のエネルギーに感心する。

「後はそうやな、内容の話とは若干ズレんねんけど、最近偶に混じってきてるんは男子からの手紙とか。」
「男子からっ!?」
「刺激を受けたとか頑張れとか。まあ書いてあることは普通やねんけど。」
「へえ・・・男子ってお手紙とか書かないと思ってたよっ。」
「まあ女子に比べて苦手な奴が多いんは事実やわ。ただ0なわけやあらへんし、そもそもうちの学校生徒数が多いさかい。」
「そうなんだっ。でも確かに、茉奈花ちゃんにも男子と女子両方から手紙が来てるし、異性だけが送るわけでもないんだね!」
「せやな。後は・・・これも最近になって増えてきてんけど、名前のない手紙。」
「名前っ?がないっ?」
「自分の名前書いてへんねん。忍足君へとは書かれてるさかい、俺あてなんは確かに俺当てやねんけど、誰が差出人なんか俺にはわからへん。」
「へええ・・・そんなのがあるんだねっ。恥ずかしいのかなあっ?」
「まあ、そうやろな。元々手紙とか、口で上手い事言えへんから書くみたいな人もようさん居るやろし。」
「口で上手く・・・そっか。そうだよねっ。」

忍足に渡した手紙の束の、一番上に置いてある猫が書いてある封筒。
その光景が、可憐の目に不思議に焼き付いた。


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