5万打記念企画 No.025
その日の夜。
宿題を熟して、そろそろ寝るかと思い片づけをしていた時だった。
何の気なしに開けた引き出しの中に入っていたレターセットに目が留まった。
普段滅多にレターセットを使う用事などないのだが。
「・・・・ちょっと、書いて見よっかなっ?」
今日手紙の話をしたからだろうか。
可憐はなんだか手紙を書きたくなった。
しかし、書くとなると宛先が必要。
(取り敢えず内容はファンレターにするとして、誰に書こうかなっ?やっぱり同じマネージャーだし、茉奈花ちゃんっ?跡部君は山ほど貰ってるだろうから、あれ以上増やしてもなあ・・・)
「・・・・・忍足君にしようかなっ?」
可憐が忍足を選んだ理由は、半分は色んな事が丁度良さそうだったからだ。
マネージャー陣に対してはそもそも普段からメモや小さい手紙のやり取りはしているし、その中でお疲れさまとか助かったよとかそういう事を伝え合っているから、それでもう十分な気がするし。
それから忍足の貰う手紙はいつも、多過ぎという程ではないけど少なすぎるわけでもない。
だから、送ったとしても殊更注目されてじろじろ読み返される事もないだろう、と思った。
それから、後半分は純粋に応援を伝えたかったから。
そもそも、可憐は忍足を応援したくてマネージャーになったみたいなところがあるのだし。
(で、忍足君に出すとして・・・うん、匿名で行こうっ!忍足君も最近そういう手紙増えてるって言ってたしっ!)
そもそも手紙を書いてみたいなというのがありきなので部員である忍足に書くけれど、それはそれとして部員から部員に改めて手紙っていうのもなんだか恥ずかしいから、しれっと箱に入れて他のファンレターに混ぜてしまおうと可憐は考えたのだった。
別に殊更自分が書いたと知られなくて良い。書きたい気分だったからというのが理由なんだし。
「で、えーっとっ。肝心の中身は・・・」
兎に角まず、こんにちはの挨拶。
いつも練習見てます、のくだりを書くところで可憐はおかしくて笑った。見ていて当たり前だ、部員なんだから。
いつも頑張っているのを知っています。
そんな姿に、私も元気づけられています。
夏が始まりますが、これからも頑張って下さい。
大体そんなような事を書いて、便箋を畳む。勿論マネージャーだと気取られないように、書き方や内容には気を付けた。
封筒に入れる。シールを貼る。
宛名を書く。忍足侑士君へ。
そして自分の名前を書く。
「・・・って、ああっ!違う違う、書かなくて良いんだったっ!」
可憐は慌てて封筒から便箋を出した。
危ない危ない。ついいつものくせで名前を書くところだった。
改めてまっさらな封筒を出して、宛名を書く。
それでおしまい。それ以上は書かない。
筆跡とかは特に変えていないけれど、そもそも自分の字はそんなに特徴のある字ではない。字が似てるなと思われることはあるかもしれないが、間違いないと特定される事はないだろう。
後は封にシールを貼って。
「・・・うん、よしっ!明日出そうっ。」
不思議だ。
こうしてメッセージがしたためられた手紙を見ていると、届くと良いなあとか思ってしまう。余程のことがない限り届くと、可憐は分かっている筈なのに。
(今日手紙の配分をしたから、明日出してこれが届くのは1週間後かあっ。)
届くのが楽しみだ。
可憐は封筒を見ながらそう思った。
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