5万打記念企画 No.035


「あれ?」

だから言われた日の昼休み、古典資料室に来た紫希は、丸井が指で鍵を弄びながら扉に凭れてるのを見て結構ビックリしたのだ。

「おう!お疲れ♪」
「お疲れ様です・・・」
「?何だよ、びっくりした顔して。」
「あ、いえ・・・丸井君が居ると思わなくて。」
「へ?」
「あの、上里先生が桑原君に頼んでるっておっしゃってたので、今回もそうなさってるだろうって思ってて・・・」
「・・・ああ!」
「す、すいません!失礼でしたよね、普通にサボるだろうみたいな考え方をしてしまって、」
「いや、普段なら押しつけてんのはそうだから、それは怒れねえけど。」
「あれ・・・?」
「ま、お前が一緒だって言われちゃあな。サボってられねえじゃん・・・と!」

自分が桑原に押し付けるのを見越して紫希をペアに当てた上里の采配は、実に優れていると丸井は鍵を開けながら思った。

もし自分がいつもみたいに桑原に押し付けたら、紫希は無理やり桑原を返して、あくまで言いつけられたのは自分だからと言って一人でやるに決まってるのだ。
もうわかってる。紫希が丸井をわかっているように、丸井も紫希を分かっている。

まあ、それはそれとして一緒なのが紫希だから普通に自分がやっても良いと思うシンプルな気持ちもあるけど。

「開いたぜ?」
「有難うございます。ええと、電気・・・けほ!」
「大丈夫?」
「はい、ごほん!埃が凄いです・・・」
「こりゃ窓が先だな。えーと?窓、窓・・・よい、しょ!」

丸井が窓を開けると、心なしか窓の外に埃がきらりと舞って消えた気がした。

「前の掃除いつだよ・・・」
「一応、使わなくても週一回は掃除が入るようになってるんですけれど・・・」
「え?そうなの?」
「はい。以前柳生君からそんな話を聞きました。でも・・・」
「週1で掃除入ってるようには見えねえよな。」

つまり、サボっているわけだ。
多分管轄は美化委員会。これを柳生に言うとおそらく生徒会伝いで指導が入るに違いない。

「で?緑のテープの棚が・・・どれ?」
「ええと、これが赤です。こっちが青。」
「んー、そっちは?」
「こっちは・・・黄色です。」
「おいおい、マジかよい?」
「それはどうですか?」
「これ、紫。」
「え、それじゃあ・・・」
「少なくともあっちの方だな。」

目につく棚に、上里から言われた緑のテープの棚はなかった。

ということは件の棚はもっと奥。
この、すぐに目につく手前の方の可動式の棚を動かして動かして、その向こうにあるわけだ。

「待てよ、まずどこにあるんだ?悪い、ちょっとあっち照らして?」
「はい。」
「サンキュ。えーと・・・」
「どうですか?」
「・・・一個向こうは白だな。」
「じゃあもっと奥ですね・・・」
「おう。もうちょい右にしてくんね?そうそう・・・黒だな。」
「じゃ、じゃあ一番奥の・・・」
「だな。って事は、あっち動かしてあっち動かして、そっちを左にして・・・」

思ったより時間がかかりそう。
と、この時点で2人とも思った。
資料を運ぶ運ばない以前に、そもそもその資料を手に取れるようにするまでに労力が要る。

「じゃあええと・・・まず、紫をあっちにするんですね?」
「そ!おし、じゃあブレーキ外してっと。」

キャスターのブレーキを外して、資料が上から下までぎっちり詰まった棚の両端を2人で掴む。

「重そうです・・・」
「動かしたら何冊か落ちそうだよな。ま、しょうがねえだろい。よし、いくぜ?せーの・・・!?」

動かした直後だった。

誰が置いたか棚の上にも資料があって、それが動かされたことによって落ちたのだ。
バサ!と音がして、その落ちた資料がキャスターの進路上に落ちてしまって。
棚を止めて退けないと、と頭では思っていても棚は思うように止まらなかった。


「危ねえ!」


(えーーーーー)




2/5


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]


番外編Topへ
TOPへ