5万打記念企画 No.054
というわけでその日の放課後、丸井は紫希を教室に待たせて手を貸してもらおうとしていた。
「キャッチフレーズ・・・ですか?」
「そ。その方が載りやすいってさ。」
「ううん・・・・」
思い切りご褒美目当てだと最初から打ち明けてはいるけど、それでもそんな事でとか言わないでちゃんと考え出してくれる紫希の姿を見ていると、やっぱり頼んで正解だったなと思ったり。逆に、自分で言い出しといてあれだけどちょっと悪いなとかも思ったり。
「・・・スタンダードなのは、やっぱり・・・」
「やっぱり?」
「あくまで地域の話がしたいわけなので、○○の都、みたいなフレーズとか・・・」
「都・・・」
「例えばですけど、花の都パリ、とか。水の都大阪、とか。よく知られている分、頭には入って来やすいですよね。」
都。
そのフレーズは、丸井の頭にスッと入ってきて、すとんと着地した。
うん。
良いじゃん、それで。
「おし!じゃあそれでいくか。」
「ええっ!?ちょ、ちょっと待ってください、そんな急いで決めなくても、」
「良いの良いの。焦って決めたとかじゃなくて、なんとなくそれが良いなと思ったから決めたんだって。」
「そ、そう・・・?ですか・・・?」
「そ!で?問題は、何の都にするか、って話だよなー・・・海?」
「海・・・」
「海の都?・・・何か微妙におかしいな。」
「海って名詞であると同時に場所の名前でもあるので、おかしいと感じるんだと思います。花や水は物の単語ですけれど、海の都って言われると、結局海なのか町なのかどっちなの?みたいな気が・・・」
「そっか。じゃあ海以外で・・・っつうか、その理屈だと山とか川とかそういうのもなしだな。で?他に?んー・・・」
「・・・・夏、とか・・・いえ、駄目ですね。」
「え、なんで?良いじゃん、夏の都。」
「でもなんだか、夏以外はどうなんですか、って感じが・・・」
「そお?それもそうか。」
しかし、丸井は元々この湘南という町に対して、一番強いイメージはやっぱり海なのである。
そもそも学校の名前からして立海だし。
(それ以外?海でも夏でもない、物の単語・・・湘南・・・)
「・・・・し。」
「え?」
「お菓子?とか?」
「うくっ、」
「ん?お前、今笑うの我慢した?」
「・・・・・・」
「ううん、って言ってみろい、口で。首横に振るんじゃなくて。」
「・・・・げほ、」
「咳き込んでんじゃ、ぷっ!あはははは!あははは!」
「ご、ごめんなさ・・・ふふ、うふふふっ!あは、違うんです、ごめんなさい、ふふふ・・・」
だってさっきの、凄い名案を思いついたと言わんばかりの、丸井の楽しそうな顔と言ったら。
誰がどう見ても地域とか関係なく自分が好きなのが丸わかりで、らしくて微笑ましくておかしくて。
でも笑うと失礼だなと思って頑張って我慢したのに、突っ込んでくる丸井が笑いながら言い募ってくるから、耐えられなくて結局笑ってしまう。
丸井も丸井で、笑いたいのを我慢しようと頑張る紫希がおかしくてならない。
別に笑って良いのに。お前が好きなだけだろーって笑っても、バレたかって言ってこっちも笑うだけなのに、笑っちゃいけない笑っちゃいけないと生真面目に頑張るのがおかしくて笑ってしまう。
結局この日は、丸井が部活後なのもあって、2人して笑って話しただけで帰宅してしまった。
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