5万打記念企画 No.054
パンケーキを食べ終わったら、次は繁華街。
日曜日なので、流石に人が多い。
「久しぶりに来ました・・・」
「お、春日も?俺も最近、全然来てなかったんだよな。最後に来たのいつだっけ?」
「知らない間に、お店が入れ替わってたりしますよね。」
「そうそう、何か来るたびにどっかは変わってる気がする。」
ここに来た理由は特になく、逆に色々あるから何か良いものーーーテーマに繋がるようなものがあるんじゃないかなーという丸井のふわっとした考えで足を運んだ。
「どっか行きたい所ある?」
「いえ、私は特に・・・というより、メインの用事は丸井君のテーマ探しなので。私、ついていきますから。」
「そお?じゃあまあ、適当に歩くか。」
(適当・・・)
良いんだろうか、適当で。正直、これはもうただのお散歩と化してしまってる気もする。
いや、自分は良いんだけど、テーマが見つからなくて困るのは丸井の方だし。
何か自分だけでも何か探すとか、提案とかした方が良いんだろうか。
でも差し出がましいかな・・・とか考えてる間に、丸井は実に気楽にガンガン寄り道をし始める。
「あ!あそこのゲームショップなくなってんじゃん。」
「そこの角ですか?」
「そう。あったんだけど、まあもう古かったしな。次の店・・・あれなんて言うんだっけ?ああいう店・・・えー、」
「・・・サバイバル・・・違います、そうじゃなくて・・・ミリ、」
「あ!そうだそうだ、ミリタリーショップ!」
外装を見ると、結構真新しい。
重そうなモデルガンがポップの値札を付けられて、入口扉にかかっている。
普段だったら絶対行かないような店だけど。
「入る?」
「え!?」
「どう?」
「え・・・す、少し時間を下さい、心の準備が・・・」
「はははっ!何だよ、心の準備って?」
「だ、だって、気後れしてしまって・・・場違いじゃないか、とか・・・」
「そんな嫌?んじゃあ、他の所行く?」
「ち、違います!嫌なわけじゃないんです、興味はあるんですけど、雰囲気が怖そうで・・・」
ほう、興味はあるのか。
なら話は早い。
丸井は当たり前のように紫希の右手を捕まえて、引いた。
「ちょ、ちょっと、」
「モデルガンはあるけど、別に撃たれたりしねえよ。大丈夫、大丈夫。」
「そうじゃなくて、」
「もし撃たれそうになったら、庇ってやるって♪」
「そうでもなくて・・・!」
というか、もし本当にそうなったら自分が丸井を庇わないと。選手なんだから。
内心でそんな事を思いながら紫希が丸井に手を引かれて中に入ると、商品だらけで狭い店内が2人を迎えてくれる。
「わ・・・・」
「おー。」
なんとなく薄暗い。
飾りつけのネオンが光っている。
其処ら中に並ぶ、武器、武器、武器。
その奥のカウンターでは、ジャケットを着た店主が暗めの顔で何か雑誌を読んでいた。
「ん?いらっ、しゃ・・・」
う、と店主の男は喉の奥で声を出した。
「・・・いらっしゃい。」
「?何でしょうか・・・」
「さあ?まあ良いじゃん、こっちはこっちで見ようぜ?」
「はい。」
見るって言ったってミリタリーショップだぞ、と突っ込まれそうだが、なかなかどうして2人は割と普通に楽しみ始めた。
「お、ナイフ。へー・・・ナイフは本物なんだな。」
「結構、お値段がしますね・・・手が出ないです・・・」
「え、欲しい?」
「はい。父へのプレゼントに。アウトドアに便利なんだそうです。」
「へえ!そっか、何に使うのかと思ってたけど、アウトドアにも使えるんだな。」
「はい、よく使ってるのを見ますよ。」
「ふうん・・・自分で使った事とかあんの?」
「いえ、それは・・・私、力も弱いですし、無理に使うとスパッといきそうで怖くて・・・」
「・・・・・・」
「丸井君?」
「いや、今ちょっと想像して、ひゅってなった。」
「す、すいません・・・・」
「服も売ってるんですね・・・」
「サバゲーとか、こういうの着てやるんだろうな。」
「・・・・・」
「ん?何?」
「丸井君って、こういう柄のは着たりするんですか?」
「ああ、迷彩柄?あー、んー・・・1着、くらいはどっかにあった気がする?シャツのこう、ラインの部分が迷彩の奴。俺、そんなに似合わねえからなー。」
「そうですか?そんな事ないと思いますけど・・・」
「いや、マジだって。ジャッカルのが似合うぜ、こういうの。」
「ああ、それはわかる気がします。」
「レーションって、やっぱまずいのか?」
「あんまり美味しくない、って聞きますよね。栄養はありますけど、味は二の次三の次、みたいな・・・」
「やっぱ美味くねえのか。すげえカロメにそっくりなのにな。」
「カロリーメイトお好きなんですか?」
「おう、好き!お前は?」
「私も嫌いじゃないですけれど・・・どっちかというと、Soyjoyの方が好きです。」
「美味いよな、Soyjoy!ただ少ねえんだよなあ、値段の割に。」
「確かに、割高ではあるかもしれないです・・・・」
「お、ライフル!すげえ、ゲームで見たのとそのまんまだろい。」
「ああ、ウィンチェスター・・・」
「え、知ってる?」
「名前だけ知ってるんです。その・・・ウィンチェスター、っていう言葉の響きが好きで・・・」
「へえ。ウィンチェスター、ウィンチェスター・・・確かに何か、言いたくなる感じすんな。」
「・・・・・」
店主は、雑誌に隠れて2人を見やった。
楽しんでる。
ふっつーに楽しんでる。
「・・・そこの坊主に嬢ちゃん。」
「!はい・・・」
「何?」
見るからにビビっている紫希。
あの様子だけで、今から聞きたいことの答えはわかったようなものだが。
「お前ら、ミリタリーが好きなのか?」
「え、い、いえ・・・」
「好きっていうか、見てるだけですけど。そういう客はお断りって感じ?」
「そうじゃねえよ。ただ、詳しくない割にちゃんと見てるなと思っただけだ。楽しいか?」
楽しいか。
そう聞かれて紫希が丸井の方を伺うと、視線に気づいた丸井は紫希の方を向いて、口元を綻ばせた。
「楽しいけど?」
丸井が言うと、店主は読んでいた雑誌をカウンターに置いた。
「そうかい、じゃあ決まりだ。」
「決まり?」
「何が?」
「商売の話だよ。地域にPRするにはどうしたもんかと思ってたが、ミリタリーショップなんざ興味のない奴はマジで歯牙にもかけやしねえからな。だが、お前らが来てくれて解決出来たよ。」
「「解決?」」
「ミリタリーショップデートも楽しいですよ、ってな。この路線で行こうと思う。」
デートの響きに、驚きの表情だった紫希の顔がじわじわ赤くなる。
いや確かに、見た目「だけ」ならそう見えなくもないかもしれないけど。
「あ、の、デートじゃ、ないです・・・」
「お?なんだ、付き合ってないのか?なら坊主にアドバイスは要らねえか。」
「アドバイスって?」
「俺が言うのもなんだが、こんな所彼女引っ張ってくる所じゃねえぞ、って言いたかったんだよ。見るにしたって、もっとそれらしい店がその辺に山ほどあるだろうが。」
店に入ってきたとき、この店主は本当に驚いたのだ。
中学生が2人入ってきて、おまけに何か用事でもなく当たり前みたいにウィンドウショッピング始めてるし。何か上手くいってるし。
「逆に、こういう店の方が珍しくて話のタネになるんじゃねえの?」
「話のタネに「なる」んじゃない、お前らが「出来る」だけなんだよ。誰でもやれると思うな。」
「はは!ミリショデートって宣伝しようってのに、それ言っちゃうのかよ。」
「しょうがねえだろ、宣伝の触れ込みがないんだ。誌面があっても、コンセプトがなきゃあな。」
ピシ、と店主の指先が雑誌を軽く弾いた。
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