それから数日経った日だった。
「・・・あー。」
「あ?」
「どうかしたんですか?」
「あ、いや。ううん、何でもない。」
当時クラスには、マドンナ的存在の子が居て。
紀伊梨も当時から美少女だったのだが、性格的にどうしても「マドンナ」とは言えない紀伊梨に対して、彼女はちゃんとマドンナ足りうる振舞が出来ていた。
まあ・・・性格というか、ものの考え方の部分で千百合は彼女が嫌いだったけど。
まあそれは今は良い。
つまり何が言いたいかというと、彼女の髪はブロンドではないが、綺麗な亜麻色のミディアムロングだった。
幸村の紺色がかった黒髪と並ぶと、それは綺麗で。
ああ成程ね。あれが対比ね。と思った。
それに引き換え。
「・・・・・・」
この、自分の髪。
面白味もなければ別に取り立てて艶やかだったりもしない髪。
ありがちな髪色。邪魔にならない適当な長さ。入念に手入れされているとはお世辞にも言えない。
「どったのー?枝毛でもありやすかっ!」
「さあ。」
「さあって何さー!見てたじゃーん!」
「枝毛探ししてたわけじゃねえんだよ。」
「まあまあまあ・・・でも、珍しいですね。千百合ちゃんが髪を気にしてるの・・・」
そう。それはその通りだった。
今だって千百合は髪になんてさして構わないけれど、当時はもっと構わなかった。
別に構う理由もない。
ない筈なのだ。それなのに。
「・・・・・・はあ。」
「千百合っちしんどいのー?」
「ああ、まあ・・・何か最近、意味もなくしんどい感じはする。」
「大丈夫ですか・・・?」
「大丈夫っていうか・・・別に、何も普段と変わったことしてないんだけど。」
この頃の千百合は、本当にこう思っていた。
特に理由もなくしんどい。
なんだか小さいことが気にかかる。
自分のスタンスを自分で崩すみたいな事をしてしまう。
でも、千百合はこの頃年相応以上に大人びてはいたけど、それでもやっぱりまだ子供だった。
だから気づかないで居られた。
自分が幸村をなんとなく目で追うことが増えている事に。