5万打記念企画 No.095

次の日。
昼休みに図書室に行った紫希は、目を真ん丸に見開いた。

「・・・丸井、君?」
「ん?おう!」

笑ってひらひら手を振る丸井は、図書室に来る事はまあままあるのだが、それは基本的に図書室にというより図書室に居る人に用がある。
図書室そのものに用があって本を読んでる事は珍しいのだが、今日は違った。

席について読んでいる。
本を。

「・・・司祭さん、ですか?」
「そうそう。昨日1巻読んで、面白かったから今続き。」
「・・・!本当ですか?」
「ふはっ!何か嬉しそうだな、お前。」
「はい!とっても嬉しいです!」

そりゃあ勿論、自分の好きなものを一緒に誰かに好きになってもらえたら、こんなに嬉しい事はない。
その笑顔の明るさで、転じて紫希がどれだけ好きなのかわかる気がする。

「・・・そんなに好き?」
「はい。」
「どの辺が?」
「えっ、」
「いや俺も面白いって思うけどさ。お前的にポイントってどこかなって。」
「ええっと・・・そうですね、色々ありますけど・・・

・・・やっぱり、主人公の赤の司祭さんが好きだから、かな。って思います。」

丸井はちょっと目を見開いた。

マジか。
いや、そりゃあシリーズが好きなんだから、最低限主人公が嫌いじゃないのが前提だけど。

「・・・此奴結構わがまましてねえ?」
「そうですね、でもそこが好きなんです。明るくて、自分に正直で・・・でも、別に優しくないわけじゃないんですよね。困ってる人を放っておけなかったり、偶に突き放したりもしますけど、それが却ってその人の為になったりして、」
「・・・・・・」

つい・・・と隣の椅子を静かに引いてやる丸井。
しかし紫希は座らない。
というか話すのに夢中で、全然気づいていない。

「それから私、特に1巻の最後で犯人の懺悔を許す場面が凄く好きで、司祭としての立場と気持ちの上でそうしたいっていう・・・丸井君?」
「・・・くくっ、あはははは!」
「え?え?」
「座らねえの?」
「え?あ、ああ!ご、ごめんなさい気づかなくて、」
「ははははは!」
「すいません・・・・!」

赤くなりながら小さく座る紫希に、丸井は笑いが止まらない。
こんなに周りが見えてない紫希も珍しい。

「そんなにこれ好き?」
「はい、ごめんなさい・・・」
「いや怒ってねえけどさ。相当気に入ってんだなーと思っただけ。」
「気に入って・・・ううん・・・・憧れなんです。」
「え、誰に?此奴?」
「はい。なんていうか、何度も言ってしまうんですけれど、司祭さんの、自分の気持ちと司祭であろうとする部分のバランスが凄く好きで・・・」
「此奴そんなに司祭であろうとしてるっけ?」
「ううん、1巻だけだとあんまりわからないですけれど、そう思います。私そういう、強い所と慈悲を感じる所と両方あるのがなんていうか・・・理想で。こんな女性になりたいな、って昔から思ってたんです。」
「・・・・ふうん。」

そうかなあ。
いや丸井だって嫌いじゃないけど、そこまで良いもんだろうか。

「五十嵐が言ってたけど、何か映画も見たんだって?」
「はい。一度映画化したので、その時に。懐かしいですけど、私一時期本当にはまってて、皆を巻き込んでしまって・・・」
「ふうん・・・あ!」
「え?」
「なあ、今日の放課後・・・いや、今日はちょっと厳しいな。一旦家寄って・・・明日のが良いか!明日、放課後空いてる?」
「え、え、は、はい・・・」
「オッケー、じゃあ良い所連れてってやるよい。」
「・・・良い所?」
「そ。良い所。」

でも多分ばれたら怒られるから、内緒な。
と言われたので、皆も誘って良いのかなとか考えていた紫希はすぐその考えを打ち消した。


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