5周年記念企画:First date


「やったー!紀伊梨ちゃんの勝ちー!」
「マジかよ・・・!」
「切原君強いねー!」
「勝った相手から言われても嬉しくねえっつうの!はー・・・ああくそ!アイスだアイス!」
「やったー!切原君何好きー?」
「俺っすか?んー、あ!プリン味とか!」
「あー、美味しいよねー!紀伊梨ちゃんねー、チョコミントも好きー!」
「あ、俺も結構ー−−「嫌い!」へ?」
「嫌い!・・・ってことにして!」
「・・・嫌い。」



「秋って良いよねー!アイス外で食べてても、すぐ溶けな、うおうわうっ!?」
「ああああ!ちょっと大丈夫っすか!・・・え、足痛んいんすかあ?」
「うぐ・・・お、折れた・・・」
「え!?今ので折れるんすか!?嘘でしょ救急車ー−−」
「違う違う!ヒールが折れちってさー・・・」
「あ、靴か・・・びっくりさせないでくださいよもお!んでも、もう歩けないでしょ?靴買わねえと。」
「うにゅ・・・もう今日はスニーカーにしよっかなー。」
「・・・スニーカー?」
「え?・・・って、あ!そーだ、だめだよ切原君!紀伊梨ちゃんのことなんか、怪我しても知りませんみたいな感じにして!」
「今は無理っすよ!諦めろ!」



「これとか、これとか・・・あ!金あるんだったら、これとかもおすすめっすよ!えーと、サイズが・・・」
「切原君すごーい!スニーカー博士だー!」
「スニーカー博士・・・何かださくないっすかあ?まあいっか。ほい、どうぞ。」
「ありがとー!んしょ、んしょ・・・おおおお!すごいすごい、足がかるーい!」
「へへ!それにします?」
「うん!えーと・・・あ、このくらいで買えるんだー!すごいね、安いね!」
「いや、安くねえよ・・・」



「河川敷行こう!」
「は?」
「靴軽いんだもーん!走りたーい!切原君、かけっこで競争しよーよ!」
「いい!?いや・・・俺現役のテニスプレイヤーっすよ?勝負になんないでしょ?」
「えー、やってみないとわかんないよー!なるよー!」
「マジかよ・・・・」



「負けたー!んもー!」
「はあ・・・はあ・・・勝った・・・っつうか、速すぎでしょ!なんでそんな速いんすか!」
(もうちょいで追いつかれるとこだった・・・)
「むー・・・公園行こ!」
「・・・今度は何すか?」
「ジャングルジム鬼ごっこしよー!それだったら紀伊梨ちゃん勝てる!です!・・・あ、でも切原君には断ってもらわないと駄目だからー・・・一回嫌って言って!」
「・・・・嫌。」



「はあ、はあ、えいー−−あーん!もー!届かないー!」
「こっちもー−−はあ、そんな簡単に負けらんねえっすよ!」
「むー!じゃああっちから!」
「甘いっすよ!こっちに逃げ道、が・・・・」
「うー−よしゃ!たっち!」
「・・・・・・」
「次切原君鬼ね!」
「・・・・え!?あー、くそ!」



ジャングルジム鬼ごっこまで終わった時、時刻は19時を回っていた。
空はもう暗く、体力は半分以下。

最後の最後で下着が見えそうになったのに気を取られて負けたなんて、まさか紀伊梨には口が裂けても言えないと思う。

「はー−!楽しかったー!」
「はあ・・・ねえ!あんた本当にアイドルなんすか!?足の速さとか体力とか!」
「紀伊梨ちゃん!運動は得意です!」
「マジかよ・・・!」
「マジです!あ、紀伊梨ちゃん喉乾いたから、ちょっとジュース買ってくるね!待っててねー!」

自販機に向かう紀伊梨の足取りは軽かった。

楽しい。
こんなに楽しいデートは久しぶりだ。

というか、デートなんてろくすっぽしてないから初めてかもしれない。

「えーと、紀伊梨ちゃんアクエリとー、切原君もアクエリで良いかなー?」

るんるん気分で選ぶ紀伊梨だったが、時計を見てふと思い出した。


そうだった。
楽しいのは自分だけだ。


「あ・・・・・!」

紀伊梨は楽しくてすっかり忘れていたが、デートを始めて少し経ったら遊園地に誘おうと思っていたのだ。ちゃんと自前でチケットも用意した。

でも曲の中でイメージした男の子は、いきなり遊園地に誘っても首を縦に振ってくれないからまだ持ったまま。

誘ってもうんと言ってくれないのは、彼が曲の中の女の子をー−−今紀伊梨が演じている女の子を好きではないから。


転じて、切原は自分に興味がない。
そういう相手を選んだのだから、当然と言えば当然。紀伊梨自身は楽しい時間と思っていても、切原は違う。


(・・・・そーだった・・・)

付き合ってくれてるのは、切原が優しいからだ。
進んでそうしたいわけじゃない。

「・・・・・・・」

紀伊梨は急速に気分が落ち込んでいった。

そういうコンセプトなのだ。
実に狙い通りに行ってる。

でも、こんなに悲しくなってくるなんて思いもよらなかった。

何気なく決めたテーマだったけど、自分ばっかりその気な状態ってこんなにも苦しいのか。

「・・・・・うん。」

紀伊梨は小さくつぶやいた。



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