5周年記念企画:あの空に
千百合が幸村のことで知っていることは、もうひとつある。
彼は本来、テニス部であることだ。
(テニス部・・・)
テニス部と聞いて、千百合は最初、内心でマジかと呟いていた。
だって、この学校のテニス部と言ったら。
「千百合っちー、食べにゃいのー?」
「千百合ちゃん?」
「・・・・ねえ。」
「はい?」
「どったのー?」
「男子テニス部って、何?」
幸村と分かれて、目的のカフェでお茶をしていた途中、千百合がおもむろに言った。
「ほ?」
「な、何というと・・・」
「こう、評判的な。」
「えー、男子テニス部ってあれっしょー?すーっごい強くって、すーっごいモテてて、女の子のファンがいーっぱい!」
「だよね。」
異論はない。
千百合もそう思う。
そう、立海の男子テニス部とはそういう存在なのだ。
とにかく女子のファンが凄い。
イケメンが多い。
そして、成績が良い。
普通に部活としてすごい強い。押しも押されぬ強豪校、らしい。(千百合は良く知らないけど)
「え、千百合っちもしかしてテニス部入るの?入るの?」
「やだ、めんどくさい。」
「えー、じゃあなんで聞いたの?」
「別に聞くくらいしても良いじゃん。」
「あ、でも・・・」
「ん?」
「男子テニス部って、マネージャーさんが少なくて、いつもお困りらしいって聞いたことがあります。なので入ったら、喜ばれるかもしれません。」
「「え?」」
千百合と紀伊梨の声が揃った。
「なんでー?超人気部活なんじゃないのー?」
「仕事がきついので、本当にやる気な人以外、残らないらしいです。入っても、すぐに辞めていく人が多いとか・・・」
「あー。確かにそうかも。結果出してる部活っぽいしね。」
「練習がハードだって、よく聞きますよね。」
確かによく考えれば、結果出しているということは、その裏にえげつない量の練習があるわけで。
ミーハー気分で入っても、間もなくついていけなくなるわけだ。
なるほど。言われてみたら頷ける話。
「ふーん。じゃー、千百合っちは嫌いそーですなあ!」
「あはは・・・確かに、よっぽどやる気じゃないと、続かない感じはしますね・・・千百合ちゃん?」
「・・・・・」
幸村は、そんなハードな練習してるのか。できるのか。あの線の細さで。
どうも想像がつかない。
(というより、あいつテニス部行かないで、なんで絵描いてるんだろ。別に美術部に転部した風でもないし。兼部?テニス部ってそんなことできるの?)
「ねー!」
「・・・・・・」
「ねえ千百合っちー!」
「!ごめん何?」
「千百合っちテニス部入らにゃいのー?」
「・・・やる気ない。」
「えー、でも興味あるんじゃないのー?」
「・・・・・」
そう言われると。
「・・・・そういう興味じゃない。」
「うふふ。でも、どうして急にテニス部のお話を?誰か、お友達ができたりしたんですか?」
「お友達・・・」
そう言われると語弊があると言わざるを得ない。
「・・・知り合い、かな。」
「えー、そこまで行ったらお友達っしょ?」
「そうはならねえだろ。」
「まあまあ・・・それで、千百合ちゃんは、そのお知り合い?の人がテニス部だから、もっと知りたくなったっていう感じなんですか?」
「・・・・・・」
紫希の質問は、千百合の内心に問いかけるものだった。
もっと知りたい。のか。
「・・・・わからないから。」
「「わからない?」」
「何考えてるんだか。」
どうしてテニス部なのに絵描いてるのか。
あんなかよわそうなナリででテニスできるのか。
どうして自分を選んであんなに絵を見せたがるのか。
有名人だからある程度のことは知ってるつもりだったけど、違った。
会えば会うほどわからない。
何考えているんだか。
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