100話記念企画 No.063


次の日。
この日はクラスで弁当を食べていた。

今日も今日とて、ミネラルを一粒。
ガリ。

「あ。そうです、そのミネラルサプリなんですけど。」
「ん?」
「昨日帰ってから、お母さんもサプリを飲んでいたので、思い出してちょっと聞いてみたんです。そのパープルパール社のサプリは、結構質が良くてお値段が高いそうですよ。」
「マジか。こんなに入ってんのに。」
「売れてるので、こういう所は羽振りが良いそうです。」

余談だが、このパープルパール社というのは跡部財閥の傘下の会社だったりする。
ある意味気前が良くて当たり前というか。

「必須ミネラルが取れるから良いね、ってお母さんが言ってました。」
「必須ミネラル?って何?」
「ええと、ミネラルというのはそもそも必須ミネラルと有害ミネラルがあるんだそうです。サプリに入ってるのは必須の方だとか。」
「必須ってそういう意味だったんだ。」

この袋に書いてある「必須」。あれはそういう煽り文句かと思ってたのだが、必須ミネラルという名前であるらしい。

「それから、それでなくても美容にミネラルは良いらしいです。」
「そうなの?」
「はい。例えばお母さんが贔屓にしてるコスメブランドの、新作のファンデーションがミネラルファンデーションっていう物で・・・確かミネラルが配合されていて、それが肌に良いからとか。飲む以外にも色々あるみたいです。」
「ミネラルすげえな。」

こうやってサプリにされてるくらいだし、悪いもんじゃないだろうとは思っていたが、まさかこんなに美容に良いものだったとは。
どっちかというと健康よりかと思っていた。

「逆に有害ミネラルって何だろ。」
「それはまあ・・・水銀だとか、カドミウムだとかだと思います。」
「そうなの?」
「そもそも、ミネラルっていうのは無機物の事ですから。カルシウムや鉄なんかもミネラルですよ。」
「へえ。」
「逆に、多量摂取すると有害とされているアルミなんかも全部ミネラルです。こっちを有害ミネラルって呼ぶんだと思います。」
「ふうん・・・」

(無機物、ね。)

そう言われると、ちょっと親近感が沸く気がする。
無愛想でぶっきらぼうと言われる自分に似てる。

「紫希も要る?」
「いえ、今日は・・・というか、千百合ちゃん。」
「ん?」
「幸村君にはあげないんですか?」
「・・・・・・」
「・・・嫌なんですか?」
「・・・いやまあ、嫌ってほどでもないんだけど。その・・・」
「?」
「・・・必要なくね。」
「ううん・・・確かに、必要かと言われれば必要なさそうな気はしますけど。」

そもそも幸村は健康優良児なのだ。
規則正しい生活、好き嫌いなく野菜と魚中心に食事して、早寝早起きして運動して。
保険の教科書に書いてある通りみたいな生活をしている。別に栄養の補助とか要らない。

美容の補助なんてもっと要らない。
あれ以上容姿に磨きをかけてどうするつもりなんだろう。
芸能人にでもなるつもりなのか。それでなくても芸能人顔負けの姿をしてるのに。

「・・・なんかこうさ。」
「はい。」
「あげたらあげただけ遠くなってく気がするんだよね。」
「遠く・・・?」
「レベル的に。」

自分と幸村の間に、所謂美的な意味でのレベル差があることを千百合はよくよく自覚している。
自分がべらぼうに低いというよりは幸村が圧倒的に高みに居すぎるわけで、普段はしょうがないなと思いつつさほど気にしていない千百合だが、こうして美容の話になると普段はちょっとしか気にしていないことが急にむくむく膨らんでくる。

こんな、20日分程度しかない一日一粒のミネラル錠で何が変わるわけでもない。
それはわかっている、完全に千百合の気分の問題だ。

でも、皆がミネラル良いよ良いよと教えてくれた分だけ。
そんな良いものを摂っている自分は、ちょっと昨日の自分より良くなれた気がするのだ。

「千百合ちゃん・・・」
「ケチかな。やっぱり、さして意味もないのにあげないっていうのは。」
「ふふっ。いいえ、立派な理由だと思いますよ。」

紫希は千百合のこういう所、とても可愛いと思う。


3/6


[*prev] [next#]

[page select]

[しおり一覧]


番外編Topへ
TOPへ