100話記念企画 No.076



「zzzzz・・・・・」

(芥川君は今日も寝てるなあ・・・・)

すやすやと健やかな寝息を立てる芥川。
可憐は定位置のベンチに寄る度に、まあ無駄と分かりつつ一応声をかける。

「芥川くーん。」
「zzzzz・・・・」
「芥川君ってばっ!おーいっ!」
「ん〜・・・・zzzz・・・・」
「今日もダメかあ・・・って、あっ!」

ころん、と抱えていたテニスボールがベンチの下に入った。
まずい、と思って思わず身を近付けると、足先がベンチの足を強かに蹴る。

「いたっ!」
「んにゅ・・・今日もう練習終わり?ふあ〜あ・・・あれ?桐生ちゃん、どっか痛いの?」
「いたた・・・ごめんね、ちょっと躓いて・・・」

爪先が痛くてちょっとしゃがむと、視線の先にテニスボール。
丁度いいや、このまま取ろう。

「ボール入っちゃったの〜?俺、籠持ってよっか?」
「あっ!お願いっ!」

よしよし、これで両手が使える。
四つん這いはちょっと汚れるが、まあジャージだし。

「大丈夫〜?」
「大丈夫・・・後、ちょっと、くっ・・・!」

微妙に取れそうで取れない。
指先がもう触れているのに。

「俺が取ろっか〜?」
「ううんっ!いけるいける・・・えいっ!」

手にボールの感触がしたのと、ぐい、と後頭部が引っ張られる感覚がしたのは同時であった。

「いた!痛い痛い痛い!」
「桐生ちゃん!?どうしたの、どこかぶつけたの!?」
「違うのっ!髪がどこかに引っかかってっ!」

しまった、と思った。
棒か何かでつつけば良かったのだ。

引っかかって崩れたら、と言われていたのにベンチの下になんて潜り込むからどこかを引っ掛けてしまうのだ。

「ちょっと待って!んーと、んーと、ここが引っかかってるから、んーと、」
「痛!」
「もうちょっと待って!んーと、A〜?これどうなってんのかわかんないC!」

芥川だって、さっと取れるものなら取ってやりたい。
けど、さほど詳しくもないのにそんな事出来ない。

ここかな、それともこっちかな、と色んなところを解きながら、やっと可憐がベンチの下から解放されたのは5分後。
部活終了目前の事であった。


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