100話記念企画 No.026

(もし呼び出せたら、か・・・・)

次の日の水曜日、紫希は先生から頼まれた資料を持って教室へ向かっていた。

昨日幸村から言われたことは尾を引いているが、どうにもこうにも結論が出ないというか。
呼び出せたとしたらーーーいやもう敢えて言うが、呼び出せてしまったらどうしたら良いんだろう。
いや、そもそもやってるのが召喚術なんだから、成功に対して困るというのも変な話だが。

昨日、帰ってからそもそも召喚しようとしているキューピッドとは何者かを調べてみたが、まあざっくりいうと恋愛成就の手助けをしてくれる的な存在。

(つまり召喚に成功したら、私には片思いの相手が居ませんから、キューピッドさんは用もないのに呼び出しされて良い迷惑的な事になるわけなんですよね。うーん・・・)

誰か、必要としてる人に権利の譲渡とか出来ないかなとか思いつつ、元はといえば児童書なんだからそんな細かいことまで書いてる筈もなく。

(どうしましょう、もういっそ止めてしまうという・・・ううん、でもやっぱり勿体ないみたいな感覚がどうしても、あの最初のステップが難しすぎて、)

「よ!」

ぽん、と後ろから肩を叩かれた。
振り向くと見慣れた友達の顔。

「・・・丸井君。何か御用ですか?」
「ん?え?別に、用ってわけじゃ・・・どうした?」
「申し訳ないんですけど。」
「おう。」
「私にでこぴんをして貰えませんか?」
「へ?」

丸井は面食らった。
そりゃそうであろう、廊下で友達見つけたから声をかけたら、いきなりでこぴんを要求されてるのだから。

「ダメですか?」
「いや良いけど。おし、じゃあ・・・ていっ。」
「っ!有難うございます・・・」
「何?何かのゲーム?罰ゲーム的な?」
「いえ、そうじゃないんです。実は今ちょっと、召喚術を試してて。」
「・・・へ?」
「昔買った児童書に書いてあったんです。小さい頃一通り試したんですけど、どうしても出来なかったものがあって。でも、先日偶々虹の真下で黒猫ちゃんを3回撫でる、のステップをクリア出来たので、どうせならやってみようかと。」
「最初のハードル難し過ぎねえ?」
「私もそう思います。」

今ちょっと聞いただけで、そりゃあ諦めますわと丸井でも思う。
試させる気ないだろ、何考えてんだその児童書。

「それで、次のステップが『水曜日、一番最初に後ろから話しかけてきた人にデコピンをして貰う』だったんです。」
「へえ。まあ別に良いけど何つうかこう・・・嘘くさくねえ?」
「ふふっ。ええ、私もそんなに信じてるわけじゃないんです。偶々出来ちゃったから、進めてみようかなと思っただけで。でも・・・」
「?」
「・・・昨日、幸村君に言われたんです。もし本当に呼べてしまったら、その後の事はちゃんと考えておかないといけない、って。そりゃあそうですよね。呼んでおいて用事はありませんなんて、呼ばれた方が迷惑ですから。」

丸井の言うことも紫希は正しいと思う。
嘘くさい。
とても嘘くさい。
いかにも児童書というか、それっぽいことを並べてるだけなんだろうなというのは紫希でもわかる。

でも、ちょっとはこういうの信じる気持ちがあるから続けてるのも本当なのだ。

「そういえばさ。」
「はい。」
「召喚術って言ってっけど、何呼ぶの?あれか!願いを叶えてくれる妖精さん的な感じ?」
「あ、そーーーー」


キーン・・・
コーン・・・


「うわ、やべ!鳴った!」
「あ!ご、ごめんなさい丸井君、又後で!」
「おう!」



召喚術ステップ4。
完遂。



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